フィルムカメラでつづる二十四節気の花暦 ~冬至~

 昨日(12月21日)は冬至でした。言わずと知れた、一年のうちで昼の時間が最も短い日です。
 また、日没後の空では実に397年ぶりと言われる木星と土星の大接近が見られました。私は視力があまりよくないので、肉眼では一つに見えてしまいました。
 調べたところ、前回の大接近の時は徳川家光が将軍になった頃のようです。もしかしたら家光も見ていたかも知れません。

 冬至は、太陽の力が一番弱まる日ですが、この日を境に再び太陽の力が蘇ることから、すべての運が上昇に転じる縁起の良い日とされています。この縁起の良い日に「ん」のつく食べ物を食べると「運がつく」と言われています。最も日が短く寒さも厳しくなり、風邪をひきやすい時期であるところから、縁起を担ぐようになったのかも知れません。
 旬をむかえる柚子を入れる柚子風呂も昔からのならわしの一つです。風邪をひかないと言われていますが、高価な柚子を風呂に入れるのはためらわれてしまいます。むしろ、焼酎に入れて飲んだ方が風邪をひかなくなるのではと、ついつい不届きなことを考えてしまいます。

枯れてもなお...セイヤタアワダチソウ

 この時期、東京は冬晴れの日が続きますが、季節感の希薄な東京でも寒さが強まり、冬の訪れを感じます。同時に野に咲く花の数はめっきり減ってしまいます。しかし、この時期ならではの「花」が見られるのも自然界の妙ではないかと思います。
 下の写真はセイタカアワダチソウです。

セイタカアワダチソウ PENTAX67Ⅱ smcPENTAX67 1:4/200 F4 1/250 PROVIA100F

 秋に黄色い花を咲かせる北アメリカ原産の帰化植物ですが、ものすごい勢いで繁殖すると言われており、いたるところで見ることができます。根から他の植物の成長を抑制する化学物質を出すらしく、嫌われ者の感がありますが、葉っぱはハーブとしても利用されるようです。
 花の時期はとうに終わっており全身すっかり枯れていますが、枯れてもなお原型をとどめているところにも、この植物の繁殖力のすごさを感じます。
 枯草なのでほとんど見向きもされないだろうと思いますが、花の少ないこの時期には貴重な被写体です。セイタカアワダチソウに限らず、植物は花が咲いているときはもちろん美しいのですが、芽が出てから枯れるまでの間、その時々の美しさというのがあります。
 これは河川敷で撮ったものですが、バックが日陰になっていたおかげでセイタカアワダチソウが引き立ってくれました。

ツタモミジも輝いています

 東京の紅葉は12月に入ってからが本番なので、年末になっても場所によってはまだ紅葉を見ることができます。そんな名残の紅葉を撮ってみたのが下の一枚です。

ツタモミジ New Mamiya 6 MF Mamiya G 1:4.5/150 F5.6 1/60 PROVIA100F 

 場所は近所の公園ですが、木の幹に絡みついたツタモミジを逆光で撮ってみました。カサカサした落ち葉ばかりが目立ってしまいますが、まだこのような光景を見ることができます。この紅葉もよく見るといちばん美しい時期は過ぎており、かなり傷みが目立ってきていますが、最後の輝きを放ってくれているという感じです。
 ツタの葉っぱだけではつまらないので、後方にある常緑樹からの木漏れ日を玉ボケにしてみました。玉ボケが大きくなりすぎないように絞りを少し絞ってみましたが、やはり開放の丸いボケのほうが柔らかな感じになり、この時期らしさを出せたかも知れません。

 冬はこれからが本番ですが、葉をすっかり落した木の枝には米粒ほどの芽がついています。植物にとってはすでに春に向けての準備が始まっているのでしょう。

(2020.12.22)

#ペンタックス67 #PENTAX67 #野草 #二十四節気 #花の撮影

BESSAMATIC(ベッサマチック)で撮ってみました

 4か月ほど前に新宿の中古カメラ店で衝動買いしたVoigtlander BESSAMATIC(フォクトレンダー ベッサマチック)がどんな写りをするのか、モノクロフィルムを入れて撮影してみました。使用したのは富士フィルムのACROS100Ⅱです。

 ついているレンズはデッケルマウントのCOLOR-SCOPAR X(カラースコパー) 1:2.8/50。60年以上も前のカメラですが、現代のフィルム一眼レフカメラと基本的なところはほぼ同じです。ただし、クイックリターンミラーは採用されていないため、フィルムを巻き上げないとミラーが上がったままで、ファインダーを覗いても真っ暗です。
 何と言ってもいちばん特徴的なのは、絞りとシャッター速度を連動させるライトバリュー方式の露出操作だと思います。絞りとシャッター速度を合わせた後、シャッター速度ダイヤルを動かすと連動して絞りダイヤルも動き、常に同じ露出を維持するような仕組みになっています。すごい機構を組み込んだものだと思いますが、個人的にはあまり使い勝手が良いとは思いません。シャッター速度だけ変えたいと思っても絞りまで動いてしまうので、絞りを元に戻す操作をしなければならず、ちょっと煩わしいです。

 フォーカシングはスプリットイメージ方式が採用されています。しかし、縦の線がはっきりしないような被写体ではマット面で合わせることになりますが、ピントの山が非常につかみにくいスクリーンです。
 セレン式の露出計も内蔵されていて動作はしているようですが、精度のほどはわかりません。

 今のカメラのようにカメラ本体にストラップをつける金具がないので、首から下げる場合は昔懐かしい茶色の革のケースに入れなければなりません。これがまた、何とも言えず格好が良いです。

Voigtlander BESSAMATIC

 さて、実際に撮影してみた感想ですが、想像していたよりもはるかにシャープな写りをするレンズでした。60年も前のレンズなので、もっとふわっとした感じの写りを想像していたのですが、ちょっと驚きです。しかし、逆光気味になると途端に画質が落ちてしまいますが、これは仕方のないことかもしれません。

 下の写真は東京都庁の都民広場です。

東京都庁 都民広場

 半円形に湾曲した壁面のグラデーションも綺麗に出ていますし、光が強く当たっているところの光の滲みもあまり感じられません。黒のしまりがいい感じに出ているのはフィルムのおかげだと思います。

 もう一枚、新宿NSビルに設置されている世界最大の振り子時計、「ユックリズム」です。

新宿NSビル ユックリズム振り子時計

 ビルの中なので全体にコントラストが低めですが、それでもシャープな写りをしていると思います。

 以前は35mm判カメラもごろごろしていたのですが、ほとんど手放してしまい、手元に残っている35mm判カメラはCONTAX T2だけです。T2はコンパクトカメラなので持ち歩きには便利ですが、「よし、撮るぞ!」という気合のようなものは湧いてきません。
 それに比べて今回持ち出したBESSAMATICは、写真を撮るという行為そのものが楽しくなるようなカメラです。決して使い易いカメラではありませんが、そのフォルムといい、茶色のケースに入ったレトロな感じといい、「カメラだなぁ」と感じさせてくれます。
 とはいえ、今後もこのカメラの出番が増えることはないと思いますが、中古カメラ店を覗いて心惹かれるものがあれば、また衝動買いをしてしまうかも知れません。

 なお、今回の現像は富士フィルムのミクロファインを使っています。

(2020.12.18)

#BESSAMATIC #ベッサマチック #中古カメラ #モノクロフィルム

谷根千 Mamiya 6 でお散歩写真(東京都台東区・文京区)

 少し前になりますが今年の6月の長かった梅雨の最中、県境を越えずに近場でお手軽に撮影ということで、東京の下町風情が今も漂う「谷根千」に行ってきました。谷根千とは、台東区谷中、文京区根津、千駄木の一帯を指す総称です。持ち出したカメラはMamiya 6 MF、レンズは55mmと75mmの2本という軽装です。

旧都電停留場跡

 東京メトロ千代田線の根津駅を出て不忍通りを南に少し歩くと旧都電停留場跡があり、2008年まで都電荒川線を走っていた都電7500形の車両が展示されています。ここにはかつて、池之端七軒町という停留場があったそうですが、いまはこじんまりとした公園になっています。

臨江寺 国指定の史跡

 裏通りを谷中方面に向かいます。根津駅前から北東に延びている言問い通りを横断し、さらに進むと、ちょっとそそられる感じの居酒屋を発見。もちろん時間が早いのでまだ開店前ですが、ぜひ来てみたいと思わせるたたずまいです。
 このあたりにはたくさんのお寺が集まっており、その中の一つ、臨江寺に立ち寄ってみました。道路からお寺の山門まで結構な距離があり、その奥に緑が鮮やかに映える境内があります。このお寺、蒲生君平のお墓があり、国指定の史跡になっているようです(勉強不足で蒲生君平なる御仁を存じ上げませんでした)。

臨江寺

赤字坂 かつての財閥のお屋敷跡

 臨江寺の少し先の交差点を右折して赤字坂に向かいます。澤の屋という旅館を過ぎた先から急に上り坂になります。急に雨脚が強くなってきたので、坂の途中にある真島町会詰所の軒下をお借りして雨宿りです。
 赤字坂とは妙な名前だと思って調べてみたところ、明治のころ、渡辺治右衛門という財閥がここに住んでおり、日本橋で「明石屋」という乾物屋を営んでいたことから、「明治坂(あかじざか)」と呼ばれていたらしいです。ところが昭和の大恐慌によって破産してしまい、以後、皮肉をもって「赤字坂」となったとのことです。坂を上る左手に立派な石垣がありますが、この上が渡辺治右衛門の邸宅だったのかもしれません。

初音六地蔵

 赤字坂を上りきったところを左折、しばらく行くと神田白山線(都道452号)に出ます。この通りを少し行ったところにお地蔵様(初音六地蔵)が祀られていました。初音とはこの辺りの昔の地名らしく、初音の森という鶯がたくさん集まる場所だったらしいです、昔の地名は風情がありますね。

初音六地蔵

おしゃれなお店が多い

 初音六地蔵の先の交差点を左に、細い通りに入ります。両側は住宅が軒を連ねる通りなんですが、そこに様々なお店があってついつい立ち寄ってみたくなります。昔からあったと思われるお店もありますが、どちらかというと最近になって民家を改装して営業を始めたという感じのおしゃれなお店が多いです。

和の器 韋駄天

観音寺の築地塀

 下の写真は有名な観音寺の築地塀です。国の有形文化財にもなっているとのことで、なんだか江戸時代にタイムスリップしたような感じになります。映画やドラマのロケに使われることもあるらしく、ぜひ撮影現場を見てみたいものです。

観音寺 築地塀

 日暮里駅に近づくにつれお店の数の増えてきます。うなぎ料理のお店、薬膳カレーのお店、あにまるデザイン雑貨のお店、ミシンのお店等々。軒先に藍色に染め抜いた暖簾がかかっている古民家風の建物があり、暖簾をよく見ると「未来定番研究所」と書かれています。なんでも、5年後の未来の生活を創造するというコンセプトで大丸松坂屋百貨店が運営しているとのこと。
 朝倉文夫の作品が展示されている朝倉彫塑館に立ち寄ろうと思いましたが、残念ながら休館日でした。

谷中銀座商店街

 御殿坂に出て夕やけだんだんを下ると谷中銀座です。昔ながらの総菜屋さんや魚屋さんもあれば、今風のこじゃれたお店があったりで、商店街というのは歩いているだけで楽しい場所です。

谷中銀座商店街

 谷中銀座を通り抜け、本駒込駅方面に向かいます。細い路地が入り組んだ一帯ですが、高村光太郎の旧居跡があったり、ファーブル昆虫館があったり、見どころの多い場所です。有名な和モダン銭湯の「ふくの湯」さんもこの一角にあります。

重厚感のある東京大学農正門

 本駒込の駅前から本郷通りに出て、本郷三丁目方面に向かいます。左手は東京大学の広大なキャンパスです。東大といえば赤門が有名ですが、この農正門も趣があります。さすが東大といった感じです。

東大 農正門

(2020.12.15)

#谷根千 #マミヤ #Mamiya #リバーサルフィルム

オリジナルカレンダーを作る

 毎年この時期になると、年賀状とともに来年のカレンダーのことが気になり始めます。というのも、20年ほど前からオリジナルカレンダーを毎年作っており、仕事関係の方や個人的なお付き合いの方にお渡ししているからです。来年のテーマは何にしようかと一年も前から気にはなっているのですが、具体的に行動に出るのはいつもこの時期になってしまいます。たぶん、こういう性分は一生治らないと思います。
 来年こそはカレンダーのテーマを事前に決めて、一年かけて季節ごとの撮影をしようと思うのですが、表紙用の写真も含めて13枚を撮るというのは困難を極め、結局、何枚かはこれまでに撮りためた写真の中から選ぶということになってしまいます。

 そんな状況は今年も相変わらずですが、何とか出来上がりました。今回は滝のシリーズです。

2021年カレンダー

 滝には不思議な魅力があります。水が落ちることでつくられる美しい景観に惹かれるのももちろんですが、同じ水であっても単なる川の流れとは全く別物として感じられます。古来から日本人は滝に神が宿るとして、滝をご神体として崇めているところもたくさんありますが、そういったことも滝に引き付けられる理由かもしれません。

 滝に限らず、撮影に行くのは関東、中部、東北が圧倒的に多く、今回の滝の写真も長野県、群馬県、栃木県、山形県に偏っています。
 カレンダーなので出来るだけその季節に合った写真にしたいのと、似たような雰囲気の写真ばかりにならないようにしたいのとで、写真選びは結構苦労します。どんなに美しい写真であっても、1月とか2月に燃えるような紅葉と滝の写真をもってくると、やはり違和感があります。

 昔はオリジナルカレンダーを作ろうとすると、専門の業者さんにお願いしてオフセット印刷で作ってもらうしかなく、手間も時間もかかり、かつ、少ない部数では極めて割高になってしまいましたが、いまはデジタル印刷が進化したおかげで部数の自由度も高く、しかも短期間で作ってもらえるようになりました。もちろん、品質はオフセット印刷にかないませんが、カレンダーは一過性のものなので、デジタル印刷でも十分にきれいで全く支障がないと思います。
 ちなみにフィルムのスキャンは自分で行ないます。

 カレンダーは写真なり絵画なりの部分に重きを置いたものと、写真や絵画は控えめにしてカレンダーとしての機能を追求したものとがあると思っています。前者は装飾的な意味合いが強く、カレンダーの部分は下の方に申し訳程度にあるといった感じです。一方、後者は離れたところからでも見えるように文字が大きかったり、いろいろ書き込めるように日付の周囲に余白があったりと、まさに機能重点主義のカレンダーです。
 これら装飾性と機能性の両方を程よく取り込もうとすると中途半端な感じになってしまうようにも思いますが、いちばんカレンダーらしいカレンダーかも知れません。

 来年のカレンダーが出来上がると、年末の仕事の一つが終わったという感じで、肩の荷が少し軽くなります。
 余談ですが、来年のカレンダーを見ていて、来年は連休が少ないなと感じました。

(2020.12.13)

スリッククランプヘッドと超ローアングル撮影

 野草の撮影をすることが多いのですが、野草というのは背丈の低いものが圧倒的に多く、カメラもできるだけ低い位置で構えるということになります。もちろん、上から俯瞰するアングルもありますが、野草の目線で撮ろうとすると低くしなければなりません。

超ローアングル撮影は苦労が多い

 手持ち撮影であれば地面に寝転がって撮ることでローアングルも可能ですが、中判カメラで接写リングをつけたレンズで撮ることが多いので、手持ちでは無理があります。どうしても三脚が必要になります。

 各メーカーからローアングル撮影用の三脚も販売されていますが、めいっぱい低くしても雲台を含めると25cmくらいが限界かと思います。また、通常の撮影では地面に接するのは三脚の石突の部分だけですが、ローアングルにすると脚がいっぱいに開くため、地面に接するのが石突ではなく脚の先の方になります。地面が平らなところならまだしも、野山や田圃の畦のようなところは三脚を安定させるのに一苦労します。というような理由で、私は三脚をローアングルにして使うことはほとんどありません。
 ビーンズバッグという手もありますが、微妙なアングル調整をすることが難しいので選択肢には入りにくいです。

スリックのクランプヘッドという便利グッズ

 スリックから「クランプヘッド」という製品が出ており、需要が多いのかどうかわかりませんがロングセラー商品です。若干のマイナーチェンジはされているようですが、発売からかれこれ30年近くになるようです。
 ご存じの方も多いと思いますが、三脚の脚に取付けてローアングル撮影を可能にするグッズです。取り付ける脚の太さに応じて3種類(32mmまで、38mmまで、45mmまで)ありますので、自分の三脚に合わせて選択することになります。

スリック クランプヘッド

 アイディア製品だとは思うのですが、いま主流になっているカーボン三脚で使用する場合、クランプを閉めすぎると脚がメリメリと割れてしまうそうなので要注意です。私もこの製品を使っていますが、三脚がカーボン製なので脚に取付けたくはありません。そこで、ロックナット部分に取付けようと思いましたが、ロックナットの径が太すぎて取付けができません。

クランプヘッドの改造

 ということで、クランプ部分を取り外し、マンフロット製のスーパークランプに交換しています。交換といってもそのまま取付けられるわけではないので、クランプヘッドとスーパークランプをつなぐための特殊ネジを作り、これを用いて接合しています(下の写真)。

マンフロット スーパークランプ & 取付け用特殊ネジ(自作)
スリック クランプヘッド + マンフロット スーパークランプ

 このスーパークランプは無骨ながら非常に強力です。直径60mmくらいまでクランプすることができますので、三脚のロックナットも楽々つかんでくれます。
 しかし、ロックナット部分とはいえ、あまり強く締めすぎるのはよろしくないと思うので、ロックナットにスチールパイプを被せてクランプしています。こうすることで、締め付ける力が均等にかかるので、多少強く締めても問題はありません。
 これにPENTAX67を取り付けると、下の写真のような状態になります。

三脚ロックナットへの取付け

 一番下のロックナットに取付けることで地面からヘッド(雲台)まで8cmほどの高さになりますので、かなりのローアングル撮影が可能になります。
 この場合、カメラの位置が低いので、アングルファインダーがないと撮影にかなり難儀をします。

超ローアングル撮影の作例

 ここまでカメラ位置を下げると、背丈が数cmというような小さな野草もそこそこの目線で撮ることができます。
 下の写真は春に撮ったものですが、ここまでローアングル撮影ができます。

タンポポ

もっとローアングルにしたい

 これよりもさらにローアングルで撮りたい場合は、三脚のセンターポールの下端に雲台(ボール雲台が便利です)を取り付け、ここにカメラをつけることで地面すれすれのローアングルが実現できます。

三脚センターポール下端への取付け

 ただし、カメラが逆さまになっていますので操作性は著しくよろしくありません。レンズの絞り目盛りやシャッター速度ダイアルなどは下側になってしまいますので、鏡にでも映さない限り目視での確認はできません。また、3本の脚の間にカメラがぶら下がっている状態ですのでファインダーを覗きにくく、やはりアングルファインダーは必須だと思いますが、このローアングルならではの、ちょっと違った世界が見えることも事実です。

(2020.12.5)

#スリック #SLIK #クランプ

フィルムカメラでつづる二十四節気の花暦 ~小雪~

 今日から師走。不思議なもので、12月というよりも師走と言うほうが季節感が漂います。日常の会話の中で、12月以外で旧暦の呼び名を使うことはまれですが、12月だけ旧暦の呼び名を使うことが多いのは何故なのでしょう?

 今は二十四節気の「小雪(しょうせつ)」にあたり、さらに七十二候で言うところの「朔風払葉(きたかぜこのはをはらう)」という時期らしいです。冷たい北風が吹き、木々の葉っぱを落とす頃という意味のようですが、こういった昔の日本人の感性には驚かされます。
 木の葉が落ちるといえば、私もよく使う甲州街道(国道20号線)を新宿から八王子方面に向かうと、道路の両側に大きな欅の木がたくさん植えられています。毎年この季節になると大量の欅の葉が道路に舞い落ちます。そこを自動車が走りぬけると落ち葉が舞い上がり、まるで映画かCMのワンシーンのような感じになります。

宝石のようなヒヨドリジョウゴの実

 私は野に咲く花(野草)を撮ることも多いのですが、この時期はそういった花もほとんどなくなってしまいます。それでも、まだ自然が残されている郊外の野山などに行くと、緑もすっかり影を潜めた枯野の中に赤や紫に色づいた木の実を見ることができます。紫色のヤブムラサキやオレンジ色のカラスウリ、真っ赤なガマズミなどなど。
 そんな中でも見つけるとつい撮ってしまうのが「ヒヨドリジョウゴ(鵯上戸)」の実です。

ヒヨドリジョウゴ

 葉っぱもすっかり枯れてしまいカサカサと音をたてそうですが、赤い実はとても瑞々しく、つまんで食べてみようかと思ってしまうほどです。しかし、実だけでなく全草に毒があるらしく、食べ過ぎると下痢や嘔吐などの中毒症状が出るようですが、漢方の生薬としても利用されています。昔の人の知恵は本当に素晴らしいと思います。
 ヒヨドリジョウゴはナス科の植物で、夏から初秋にかけて小さな白い花を咲かせます。花は開いたあと白い花冠が反り返って、まるでダーツの矢のような形になり何とも可愛らしいものです。そして、花が散った後に緑色の実をつけるのですが、この頃はまだ特に目立つこともないごく普通の野草です。
 ところが、周りの野草がその寿命を終えようとしている頃になるとこの写真のように真っ赤になり、ひときわ目立ってきます。

 ヒヨドリが好んで食べることからついた名前と言われていますが、本当にヒヨドリが食べるのかどうか知りません。しかし、ヒヨドリは赤いものを好むのか、春先には梅や桜のつぼみをついばんでしまうので、もしかしたら毒のあるこの実も食べてしまうのかも知れません。

日本の原風景 残り柿

 そして、この季節に見ることができる日本の原風景といえるのが「残り柿」です。葉はすっかり落ちてしまい、実だけが残っています。

残り柿

 昔の人は、柿はすべての実をもいでしまうのではなく、下のほうは旅人のために、上のほうは鳥たちのために残しておいたと言われています。その昔、ここを通りかかった旅人がこの小さな祠にお参りをし、柿を二つ三つもいで、また旅を続けるという光景が浮かんでくるようです。
 今は食べ物も豊富で旅人が柿をもぐこともないかもしれませんが、食べ物が少なくなるこの時期、鳥たちにとっては貴重な食料源です。
 また、「柿若葉」、「柿紅葉」、「柿落ち葉」など、季節ごとの情趣に富んだ名前で呼ばれるのも柿の木ならではだと思います。

 大きな柿の木にたくさんの実がついていても、収穫されることなくそのままになっている光景をよく目にします。冬の風物詩でもある吊るし柿を作る家が減ってしまったことも、ほったらかしになっている理由の一つかもしれません。
 一方、スーパーや八百屋さんで売られている柿はとても立派で、しかもお高いです。出荷するために栽培されているものなので当然ですが、残り柿はあまり立派な実よりも、少々小ぶりのほうが風情があると感じてしまいます。

(2020.12.1)

#ペンタックス67 #PENTAX67 #野草 #二十四節気 #花の撮影

シートフィルムをフィルムホルダーに装填する際のミス防止

 大判カメラで撮影する場合は、まずシートフィルムを専用のフィルムホルダーに装填しなければなりません。この装填の仕方についてはたくさんの方が投稿されていらっしゃいますので、そちらを見ていただいた方が良いと思います。ここでは装填時のミスを防ぐちょっとしたコツのようなものをご紹介します。

シートフィルム挿入時に発生しやすいミス

 シートフィルムを装填するのは真っ暗闇で行なわなければなりません。暗室がいちばん作業しやすいのですが、暗室がない場合はダークバッグやダークボックスの中で行なうことになります。私も家でフィルムの装填をおこなうときは暗室にこもりますが、撮影先でフィルムが不足した時は暗室がありませんので、ダークバッグを使います。ダークバッグは中が狭くて、決して作業性が良いとは言えませんが仕方ありません。

 シートフィルムの装填は慣れてしまえばどうってことないですが、慣れないうちはミスってしまうこともあります。多分、いちばん多いミスはフィルムホルダーの引き蓋用のスリットに入ってしまうことではないかと思います。フィルムの表裏を間違えるというミスも可能性としてはゼロではありませんが、右側から挿入する場合はフィルムについているノッチコードを右手前に来るように確認さえすれば、表裏が逆になることはまずありません。
 ということで、フィルムが正しくない位置に入ってしまうミスの防止について触れたいと思います。

フィルムホルダーの構造

 下の写真は4×5判フィルムホルダーの全景(写真左)と、ホルダーの引き蓋を引いた状態(写真右)です。

4×5判 フィルムホルダー

 ここにシートフィルムを1枚ずつ入れていくわけですが、挿入する箇所を拡大したのが下の写真です。

4×5判 フィルムホルダー

 引き蓋を引くとレールのようなものが2本あることがわかります。上側のレール(黄色の矢印)と下側のレール(赤色の矢印)です。上側のレールと下側のレールの間のスリット(溝)は引き蓋が通るところで、フィルムは下側のレールの下のスリットに入れなければなりません。
 ところが、引き蓋が通るスリットにフィルムが入ってしまうことがあります。そうなるとフィルムが浮いた状態になりますので、どんなにピントを合わせても実際に撮影するとピントがずれた写真になってしまいます。また、最悪の場合、撮影後に引き蓋を挿入するときに引き蓋でフィルムが押されて、フィルムが折れ曲がってしまうという事態になりかねません。

フィルムを正しい位置に入れるために

 フィルムが正しい位置に入った状態(写真左)と、引き蓋が通る溝に入ってしまった状態(写真右)が下の写真です。

4×5判 フィルムホルダー フィルムの挿入位置

 正しい位置に入ったかどうか確認するために、挿入後に指でこの2本のレールを触ってみるという方法があります。上側と下側のレール端が5mm程ずれていますので、2つのレールの端が確認できれば、フィルムが正しい位置に入っていることになります。
 また、もし引き蓋が通るスリットに入ってしまっている状態で引き蓋を閉めると、引き蓋の動きが重くなるので、注意しているとわかります。

 ですが、そもそも引き蓋が通るスリットに入らないようにするのが理想です。そのために、引き蓋を全部引き抜てしまうのではなく、下側のレールと同じくらいの位置まで開いた状態でフィルムを挿入することで、このミスを防ぐことができます(下の写真)。

4×5判 フィルムホルダー

 赤色の矢印が下側のレールの端で、これと同じくらいの位置で引き蓋を止めておきます。この状態だと、引き蓋が通るスリットに入れる方が至難の業です。
 真っ暗闇の中、手探りでこの状態にするのが難しい場合は、暗室やダークバックに入れる前にこの状態にしておきます。

 フィルムが正しい位置に入ると、フィルムの後端を指で軽く押すだけでスーッと入っていきます。もし、引っかかるような感触があったり動きが重いようであれば、正しくない場所に入っている可能性が高いので、再度入れ直しを行なった方が無難です。

 なお、フィルムホルダーを振り回したり強く振ったりすることなく、普通に扱っていれば引き蓋が勝手に抜けてしまうようなことは起こりませんが、もし心配な場合はマスキングテープとかパーマセルテープで止めておけば振り回しても安心です。

(2020.11.26)

#フィルムホルダー

反射光式単体露出計:PENTAXデジタルスポットメーター

 私が使っているカメラは一部を除いて露出計が内蔵されていません。ですので、撮影の際には腰巾着のように単体露出計も連れていきます。そこで、日ごろ愛用しているPENTAXデジタルスポットメーターについてご紹介したいと思います。

デジタルスポットメーターとは

 スナップ撮影の時など、単体露出計を使わず目測だけで露出を決めて撮ることもありますが、風景撮影、特に大判カメラでの撮影時には必ず使用します。大体は目測でもわかりますが、フィルム代も現像代も高い大判で失敗するとダメージが大きいので、必ず単体露出計で確認をします。

 数台ある単体露出計の中でも最も出番の多いのが下の写真の「ペンタックス デジタルスポットメーター」です。

PENTAX DIGITAL SPOTMETER

 発売は1980年代の中頃らしく、かれこれ35年くらいは経っていることになります。もちろん、いまは製造されていません。ときどきネットオークションに出品されているのを見かけますが、程度の良いものは4万円近くの値がつけられています。
 露出計は測光方式によって大きく分けると入射光式と反射光式がありますが、この露出計は反射光式です。測光する範囲(受光角)は1度で、非常に狭い範囲の測光が可能です。受光角1度がどれくらいの範囲かというと、10m先にいる人の手のひらだけを測ることができるくらいの狭さです。35mm判カメラの2400mmくらいのレンズの画角になります。
 測光範囲はISO100でEV1~20、最小目盛りが1/3段ですので通常の撮影では全く問題ありません。

デジタルスポットメーターのファインダー内表示

 この露出計は機能が極めてシンプルで、基本的には被写体の輝度を測る輝度計といったところです。その輝度(Bv)をもとにISO感度に対応したEVの値が表示されるので、あとはダイヤルを回して絞りやシャッタースピードを求めるという、非常に単純な操作のみです。これのどこがデジタルなのかと思われるかもしれませんが、測光した値がファインダー内に数字(デジタル)で表示されるからだと思います。古き良きアナログ時代の匂いがする露出計です。

ファインダー内表示 (EV8+1/3 を意味します)
  中央の黒っぽい丸が受光角1度の測光範囲です

露出設定のための目盛りリング

 「測光(被写体の輝度)だけは責任をもって行なうから、あとは自分で決めてね。」と言わんばかりの潔さというかシンプルさが私はとても気に入っています。
 下の写真ではわかりにくいかも知れませんが、測光した値(EV)をオレンジ色の三角マークに合わせ、白で書かれたシャッター速度と青で書かれた絞りの組み合わせを読み取ると、露出値がわかるという仕組みです。

上からISO目盛り、シャッタースピード目盛り、絞り目盛り、EV目盛り

スポット露出計を使う理由

 風景撮影の場合、被写体が遠く離れたところにあることがほとんどですので、そこまで出向いて行って測光するというわけにはいきません。そのため、反射光式の露出計という選択になるわけですが、反射光式の中でもスポット露出計を使っている理由はそれだけではありません。フィルムに写し込まれる広い範囲の中には当然ですが明るいところも暗いところもあります。全体がなんとなく適正露出で写っているというのも大事ですが、ここだけはきちんと表現したいという場所があり、そこをピンポイントで測って、自分のイメージ通りの露出を決めるということができるのが最大の理由です。
 また、リバーサルフィルムを使用する場合、露出設定がシビアなので、明暗差が大きいと黒くつぶれたり白飛びしたりしてしてしまうことがありますが、それを把握できるのもスポット露出計ならではです。

 重さは250gほどで負担になるほどの重さではありません。もう一回り小さいとかさばらなくてありがたいとも思いますが、持った時に手になじむ感じと操作性は抜群で、これくらいの大きさが必要なのかも知れません。

 最近のカメラは露出計が内蔵されており、しかもいくつもの測光方式を使えるとあって、単体露出計の需要がガタ落ちです。それでもスタジオ撮影には使われることが多いのか、入射光式の単体露出計は複数のメーカーから何種類かの製品が出ていますが、反射光式の単体露出計は本当に少ないです。さらに、受光角が1度というような露出計は1~2機種といった状態ではないでしょうか。

 デジタルカメラを露出計の代わりに使うという方法もあり、全体の仕上がり具合を見るには便利ですが、1度というような狭い範囲の測光は難しく、なかなか単体露出計の代用というわけにはいきません。

 なお、単体露出計を使った測光法や露出設定について書き出すと長くなるので、別途、「How to」のページに掲載したいと思います。

(2020.11.24)

#露出 #ペンタックス #PENTAX

八方ヶ原(栃木県)で紅葉と渓谷の撮影(後編)

 八方ヶ原での撮影の2日目です。風も少なく、穏やかな秋晴れが続いています。2日目はもう少し標高の高いところでの撮影です。

おしらじの滝

 まずは「おしらじの滝」からスタートです。矢板から塩原に抜ける八方道路(県道56号)をひたすら進むと、登り切ったあたりに駐車場があります。駐車場の脇から滝に下る登山道のような道がついていますので、ここを下っていきます。あちこちぬかるんでいて歩きやすいとは言えませんが、急なところには柵も設置されています。最近設置されたようで、遊歩道の整備を進めているのかもしれません。

 10分ほど下ると滝の正面に到着します。以前は滝つぼまで降りて行かれたようですが、現在は立ち入り禁止になっており、4~5人も立てばいっぱいになりそうな狭い観瀑台から見るしかありません。必然的に撮影のアングルもほぼ固定されてしまいます。
 水が枯れてしまって滝が消滅してしまうことも多いらしいのですが、この日はまずまずの水量が流れ落ちていました。

おしらじの滝  Linhof Mastertechnika 45 Schneider APO-Symmar 180mm 1:5.6
                     F22 6s PROVIA100F

 それにしても美しい滝です。豪快な音を立てて落ちる迫力のある滝も見事ですが、それとは対極にあるような優美な滝です。私が今までに見た中でも、3本の指に入るくらいの優美な滝ではないかと思います。吸い込まれるような深い色をした静かな滝つぼに滝が映り込んでおり、優美さを一層引き立てている感じです。陽が差し込むと滝つぼはターコイズブルーのような美しい色に輝くようですが、残念ながら早朝なので滝つぼには光が差し込んでおらず、奇跡の色を見ることはできませんでした。
 もう少し露光時間を長くして、水面に浮いている葉っぱの動く軌跡を写し込んだ方が良かったかもしれません。

 1時間ほど撮影をしていましたが、その間、訪れる人は一人もおらず、気兼ねなく撮影をすることができました。とても狭い場所なので、他に滝を見に来たり撮影しに来た方がいらっしゃると、三脚立ててゆっくり撮影というわけにはいきません。日中になると訪れる人も増えると思います。
 撮影を終えて駐車場に向かいますが、戻りは重い機材を担いで急な坂を上っていかなければならないので少々しんどいです。

鹿の股沢風景林で紅葉の撮影

 さて、次はスッカン沢に向かいます。この先、道路は下りになり、間もなく那須塩原市に入ります。紅葉真っ盛りといった感じで、ハッと目を引くような黄紅葉があちこちにあります。このあたり一帯は、「鹿の股沢風景林」と呼ばれており、美しい落葉樹の林が続いています。ちょっと寄り道して、この風景林の中で撮影していくことにしました。林の中に分け入っていくと、車道からでは見ることのできない発見があります。
 下の写真は林の中で偶然見つけた紅葉です。ハウチワカエデではないかと思われます。周囲はすでに落葉している木が多く、そのため、紅葉がひときわ輝いている感じです。

ハウチワカエデ  PENTAX67Ⅱ SMC PENTAX67 55mm 1:4 F22 1/8 Velvia50

 写真でもわかると思いますが、この林の中に入るとこのような感じでたくさんの木があって見通しがききません。撮影をしているうちに方角がわからなくなり、どちらを向いても同じような景色で迷ってしまうこともありますので、出口までの目印を決めておいたほうが無難です。
 この風景林、初めて入り込んでみましたが、とても魅力的な場所です。新緑の季節もさぞかし美しいのではないかと思います。

スッカン沢 遊歩道修復工事中

 スッカン沢も紅葉の最盛期でしたが、昨年(令和元年)の台風19号で被害を受けた遊歩道の改修工事中のため、沢に降りることができません(現在は解除されているようです)。スッカン沢には「雄飛の滝」や「仁三郎の滝」など、見ごたえのある滝がたくさんあるのですが残念です。
 せっかくなので沢を見下ろす雄飛橋から1枚撮影してみました。まだ沢に陽が回り込んできていないので、若干色かぶりしていますが、右端の紅一点のモミジがとても映えていると思います。

スッカン沢  Linhof MasterTechnika 45 Schneider APO-Symmar 150mm 1:5.6
                    F32 4s PROVIA100F

 スッカン沢を下りながら撮影する予定でしたが工事中のためそういうわけにもいかず、予定を変更してもう少し那須塩原方面に向かうことにしました。下調べをしっかりしておかないとだめですね。

カエデの紅葉が真っ盛り

 県道56号線は塩原方面に向けて上りになります。スッカン沢から北寄りの山は紅い色(紅葉)が多いように感じます。紅葉はどれも美しいですが、やはり何といってもカエデの紅葉は第一級だと思います。カエデの紅葉を見つけるとシャッターを切りたくなってしまいます。
 下の写真はヤマモミジかオオモミジのどちらかではないかと思うのですが、炎のような色が印象的で撮った一枚です。

ヤマモミジ  PENTAX67Ⅱ SMC PENTAX67 200mm 1:4 F8 1/60 Velvia50

 こういった光景は晴れた日でなければ撮れませんが、個人的には燃え立つような紅葉よりも、どちらかというとしっとりとした紅葉のほうが好きです。しかし、紅葉と青空の組み合わせは何とも言えない爽快感がありますし、何といっても秋の清々しい空気を感じます。

 今回掲載した写真のうち、2枚目と4枚目はVelvia50で撮影したものです。やはり、このフィルムの発色には派手さがあります。この派手さも、鮮やかな紅葉を写し取るには向いているのかもしれません。

 北関東以北の紅葉の時期はほぼ終わってしまいましたが、東京近郊の紅葉はこれからです。寒い地方の紅葉と比べると東京のそれは鮮やかさでとてもかないませんが、美しい紅葉に出会えることを期待したいです。
 

(2020.11.21)

#八方ヶ原 #渓流渓谷 #紅葉 #リバーサルフィルム

八方ヶ原(栃木県)で紅葉と渓谷の撮影(前編)

 10月も中旬を過ぎてから秋の進み方が例年に比べて早まった感じがします。今年は台風の上陸も少なかったため、紅葉が綺麗ではないかといわれていますので、紅葉が見ごろを迎えている栃木県の八方ヶ原に行ってきました。

宮川渓谷 傾聴の滝

 初日は八方ヶ原の入り口、県民の森のある宮川渓谷での撮影です。東北自動車道の矢板ICから30分ほどで県民の森駐車場に到着。広い駐車場が完備されていますが、早朝のせいか車は1台もありません。このすぐわきに宮川が流れており、ここを起点に川に沿って上流と下流にそれぞれ遊歩道が整備されています。まずはここで渓谷や滝を撮っていきます。

 上流に向かう遊歩道を歩くと間もなく「傾聴の滝」が見えてきますが、滝の上部に出てしまい全容が見えません。全体を見るためには川の反対側(右岸)に行かなければならないようです。少し引き返して橋を渡って右岸側に行き、上流に向かって歩くと滝つぼまで降りていくことができます。ここは宮川渓谷の中でも人気の撮影ポイントらしいです。

 ということで、下の写真が傾聴の滝です。

傾聴の滝  Linhof MasterTechnika 45 FUJINON SWD75mm 1:5.6 F32 4s Horseman612 PROVIA100F

 落差は3mほどでそれほど大きな滝ではありませんが、滝に比べて滝つぼがとても広い印象です。そして、とても穏やかな滝つぼです。滝つぼ全体を入れると滝がずいぶん小さく感じられてしまうので、612ホルダーでパノラマ撮影しました。早朝ということもありますが周囲を大きな木が覆っているため、滝つぼはかなり薄暗いです。水面に滝の向こうにある木々の黄葉を映したかったのですが、かろうじて黄色く見えてるといった感じですね。新緑の頃は水面に緑が映り込み、とても美しいのではないかと思います。

色づき始めた宮川渓谷を大判カメラで

 さらに上流に向かうと、岩の間を蛇行する優美な流れが続いています。水量は多くありませんので激しさとか力強さというよりは、整った渓谷美という表現が適切かもしれません。
 中でもいちばん渓谷美を感じた場所から撮ったのが下の写真です。

宮川渓谷  Linhof MasterTechnika 45 FUJINON W125mm 1:5.6
                   F32 4s PROVIA100F

 この辺りは標高があまり高くないので紅葉もようやく色づき始めたところですが、緑と黄色のグラデーションも綺麗なものです。手前の岩から奥の木々までパンフォーカスにしたかったので、レンズを少しティルトしています。また、苔むす岩のしっとり感を出すために若干アンダー気味の露出設定にしています。

 ゆっくり撮影しながら2時間ほどで上流側の遊歩道の終点になります。ここで折り返して下流に向かいます。
 上流側は流れが穏やかでしたが、傾聴の滝からさらに下流にいくと流れも若干急になり、創造の滝、反省の滝、五条の滝のほかに名もない小さな滝がたくさん見られます。それにしてもこの渓谷の滝にはユニークな名前がつけられているものです。

赤滝 水辺景観10選

 午前中で宮川渓谷での撮影を切り上げ、中川にある「赤滝」に向かいました。林道赤滝線に入りましたが、滝の入り口がわかりません。途中から工事のため通行止めでしたので歩いていたところ、人ひとりが通れるくらいのガードレールの切れ目があり、「水辺景観10選 赤滝」と書かれた小さな看板が立っていました。車では気づかずに通り過ぎてしまいそうです。
 ここから狭くて急な道を降りていくと赤滝の正面に出ることができます。

 滝から下流は大きな岩がごろごろしており、足場は極めてよろしくありません。三脚を立てるのも一苦労といった感じです。

 滝の下の方の岩が赤いことから「赤滝」と呼ばれているようです。修験者の滝行にも使われているとのことですが、確かにそんな雰囲気が漂っています。水量はさほど多くありませんが落差は10mほどあるので、滝に打たれたら結構痛そうです。
 滝の美しさと周囲の険しい環境を表現できればと思い、撮影した一枚です。手前の岩を強調するため、カメラのバック部であおっています。

赤滝  Linhof MasterTechnika 45 FUJINON W125mm 1:5.6 F32 2s PROVIA100F

 撮影しているときは全く気がつかなかったのですが、画の下側中央左寄りにある手前から2つ目の大きな岩に何やら文字のような絵のようなものが彫られています。フィルムスキャンした画像をパソコンで確認しているときに見つけましたが、何と書いてあるのか読めません。別のところにあったものが崩れてきたのか、それともここにあった岩に彫ったのかわかりませんが、いずれにしても霊験神秘な感じがします。

岩に刻まれた文字? 絵?

 なお、この滝のさらに下流には赤滝鉱泉という秘湯一軒宿があるらしいです。江戸時代から続く湯治場とのことで、次回は訪れてみたいと思います。

小さな秋があちこちに

 赤滝の撮影を終え、中川沿いを歩いてみましたが、この辺りまで来ると紅葉もだいぶ進んでいます。色づいた木の実もあちこちで見られたり、足元にはリンドウが咲いていたり、滝や渓谷とは違った小さな秋を撮ることができました。被写体は豊富で、いつまで撮っていても飽きることがありません。
 下の写真はガマズミだと思われます。葉はすっかり落ちていますが、真っ赤に色づいた実が輝いていました。もう少し寒くなって霜が降りる頃になると白い粉をふいて甘くなると思うのですが、まだ早いようです。

ガマズミ  PENTAX67Ⅱ SMC PENTAX-M 300mm 1:4 F4 1/30 EX-Tube PROVIA100F

 後編に続きます。

(2020.11.17)

#八方ヶ原 #渓流渓谷 #紅葉 #リバーサルフィルム