第49話 PENTAX67用レンズ - PENTAX-K マウントアダプタの作成

 私が使うカメラはもっぱらフィルム用ですが、デジカメを全く使わないというわけではありません。一応、コンパクトデジカメとデジタル一眼レフをそれぞれ1台ずつ持っています。一眼レフは何年か前に中古で購入したPENTAX K-5というカメラですが、ほとんど出番がありません。作品作りはフィルムでということがデジカメの出番のない大きな理由ですが、レンズを1本しか持ち合わせていないということもあります。
 追加でレンズを購入しようと思ったことも何度かありましたが、あまり使うことのないカメラにお金をかけてももったいないということで、結局、踏ん切りがつかずに過ぎてしまいました。

 出番がかなり少ないとはいえ、レンズが1本しかないのは不便なので、PENTAX67用のレンズをマウントアダプタを介して使おうと思い、調べてみましたが、これがかなりお高いことが判明しました。
 それならば作ってしまえということで、家に転がっているパーツを使って作ってみました。
 使用するパーツは下の写真の通りです。

マウントアダプタに使う主なパーツ

 まず、PENTAX67用のレンズをはめ込むマウントとして使用する、1号の接写リング(写真左上)です。
 次に、マウントアダプタの長さを稼ぐために使うPENTAX67用レンズのリアキャップ(写真右上)。
 そして、PENTAX K-5のマウントにはめ込むための金具(写真右下)です。この金具をレンズのリアキャップに取付ければよいのですが、そのまま取付けたのでは長さが足りず無限遠が出ないので、スペーサーとしてPENTAX用のボディキャップ(写真左下)を使います。

 調べてみたところ、PENTAX K マウントのフランジバックは45.46mm。一方、PENTAX67のフランジバックは84.95mmで、マウントアダプタとしては、39.49mmの長さが必要ということがわかりました。1/100mmの精度の加工は無理なので、39.5mmとすることにしました。
 1号の接写リングの厚さは14mm、レンズのリアキャップの厚さは19.5mm、マウント金具の厚さが2mmでしたので、これらを重ねると35.5mmになります。あと4mmはスペーサーでカバーすることになります。

 接写リングは特に加工する必要がないので、そのまま使います。

 次に、レンズのリアキャップですが、PENTAXのボディキャップが入るように、中央に直径45mmの穴をあけます(下の写真)。

PENTAX67用レンズ リアキャップ

 PENTAX K-5のマウントにはめ込む金具は、ネットオークションで1円で落札したジャンクレンズから外して使います。金具を止めている小さなネジが5本ありますので、なくさないように要注意です。

 スペーサーとして使うボディキャップの加工には少し手間がかかりますが、まず、キャップの中央に直径42mmの穴をあけます。次に、キャップ裏側にカメラのマウントと嵌合する爪があるので、これをやすりで削り取ってしまいます。プラスチックなので簡単に取れます。
 そして、キャップの表面をやすりで削って、全体を薄くしていきます。削り取る厚さは2.5mmほどですが、厚みに偏りができるとレンズの光軸が傾いてしまうので、ノギスで厚さを測りながら慎重に行ないます。

 さて、ボディキャップの厚さが4mmほどになったら、これら4点のパーツを仮組して、PENTAX K-5にはめてみます。無限遠が出ていればOKです。もし、無限遠が出ていなければボディキャップがまだ厚すぎるので、もう少し削る必要があります。
 スペーサーとして完成したのが下の写真です。

PENTAX用ボディキャップを加工したスペーサー

 こうして、無限遠が出るようになったら、4点のパーツを組み上げます。マウント金具はスペーサーにネジ止め、スペーサーとレンズリアキャップは強力接着剤で固定します。レンズをカメラに取付けた時に、レンズの距離・絞り指標(赤い菱形のマーク)が真上になるよう、位置関係を確認して取り付けます。
 最後に、接写リングへの取付けですが、レンズのリアキャップは簡単に外れてしまうので、動かないように3か所からネジで締め付けるようにして固定します。
 少々不格好ですが、出来上がったマウントアダプタが下の写真です。

PENTAX6 - PENTAX-K マウントアダプタ

 そして、カメラに取付けるとこんな感じになります。つけているレンズはPENTAX67 MACRO 135mmです。

PENTAX K-5 + PENTAX67 MACRO 135mm

 一通り確認してみましたが、特に問題はなさそうです。
 ただし、光軸が撮像面に対して直角になっているかどうかまでは確認できていません。精密な工作機械で加工したわけではないので、間違いなく傾いていると思います。
 しかし、これでPENTAX67用のレンズ、35mmフィッシュアイから500mm望遠まで11本のレンズがPENTAX K-5で使えるようになりました。ジャンク箱の中から拾い集めたパーツで作ったので、新規購入コストは0円でした。

(2021.2.28)

#ペンタックス67 #PENTAX67 #マウントアダプター

第43話 フィルムカメラでつづる二十四節気の花暦 ~立春~

 今年の立春は2月3日で、これは実に124年ぶりとの報道がされていました。寒さはまだ続きますが、これからの寒さは余寒というらしく、春に向けて暖かくなっていく寒さということで、こういう使い分けが日本人の感性の豊かさだと思います。
 旧暦では立春のころが1年の始まりだったようで、日本では旧正月を祝う習慣はなくなってしまいましたが、中国の春節やベトナムのテトなど、アジアでは旧正月を祝う国がたくさんあるようです。

梅が咲き始めました

 今ではすっかり日本の風景に溶け込んでいる梅ですが、奈良時代に中国から持ち込まれたものらしく、万葉の時代には花というと桜ではなく白梅のことをさすくらい、当時の人々に愛でられていたようです。
 学問の神様として有名な菅原道真も紅梅を深く愛したひとりで、彼の邸宅は「紅梅殿」とよばれ、春の訪れとともに芳しい香りに包まれたといわれています。藤原時平の訴えにより、九州の大宰府に左遷されてしまうわけですが、以来、日本各地にある天満宮の境内には梅の木が植えられ、神紋には梅鉢が使われるようになったといいます。

 下の写真は近所の公園で撮った早咲きの白梅です。ほかの木はまだ1~2輪がようやく咲き始めたところですが、この梅はこの公園の中でも真っ先に咲きます。

白梅 PENTAX67Ⅱ smc PENTAX67 200mm 1:4 F4 1/250 PROVIA100F

 「梅は百花の魁」といわれますが、梅が咲き始めるとあたりが明るくなったようにさえ感じます。満開の状態はもちろん豪華ですが、個人的には梅は咲き始めた頃がいちばん好きです。ぽつぽつと咲き始めた頃のちょっと恥じらうような姿に風情が感じられます。特に白梅には楚々とした感じが漂っていて、例えると、春の光のもとで微笑む小町娘、といったところでしょうか。

 ここ数日の暖かさで紅梅も咲き始めていました。紅梅には白梅と違った華やかさがあります。白梅が楚々とした美しさであれば、紅梅は艶っぽさ漂う美しさといった感じです。

紅梅 PENTAX67Ⅱ smc PENTAX-M 67 300mm 1:4 F4 1/500 PROVIA100F

福寿草も眩しいくらいに輝いて

 元日草とか正月花などの別名をもつ福寿草、旧暦の正月、ちょうど今頃に咲き始めることからついた名前のようですが、立春を待ちかねたように咲き始めていました。新年を祝う花として古くから日本人の心を癒してきたといわれていますが、いまの時代は春の訪れを告げる花というイメージの方がしっくりきます。
 雪を割って芽を出す姿には心惹かれるものがありますが、東京ではなかなかそういう姿にお目にかかることはできません。それでも緑がほとんどない大地から芽を出して、身の丈に比べて大きな花を咲かせる姿には癒されます。

福寿草 PENTAX67Ⅱ smc PENTAX67 200mm 1:4 F4 1/60 EX2 PROVIA100F

 花の少ないこの時期に、輝くような黄色の花は遠目にも良く目立ちます。太陽の動きを追いかけて花の向きを変える性質(向日性)があり、このため、花の内側は外側に比べて温度が高くなるらしいです。まるで、太陽の熱を集めるパラボラ集熱装置のようです。

 品種改良がなされて二重咲や八重咲といった豪華な福寿草もありますが、日本に自生しているのは一種のみだそうです。上の写真の福寿草は自生種と思われますが、定かなことはわかりません。しかし、これから次々といろいろな花が咲き始めることを教えてくれることには変わりありません。 

立春限定の日本酒も

 立春の未明に搾りあがったばかりのお酒のことを「立春朝搾り」といい、日本酒好きの人には待ち焦がれたお酒です。このお酒は火入れをしていない生原酒で、どの蔵元のお酒も日付が入った同じデザインのラベルが貼られています。今年のラベルは、「令和三年辛丑二月三日」と書かれています。実は、このラベルの裏側には、「大吉」の文字が書かれており、ビンの反対側から透かすと見ることができます。ちょっとした遊び心ですね。

(2021年2月8日)

#ペンタックス67 #PENTAX67 #野草 #白梅 #紅梅 #二十四節気 #花の撮影

第39話 フィルムカメラでつづる二十四節気の花暦 ~大寒~

 一年のうちでいちばん寒いとされる時期で、天文学では太陽黄経が300度になった日が大寒の初日らしいです。二十四節気では立春が一年の始まりとされているので、いまは年末といったところでしょうか。
 一年でいちばん寒い時期ですが、春に向かっているという想いがあるせいか、冬至のころに比べると明るいイメージがあります。野に咲く花もこれから少しずつ増えてきます。

清楚な花が特徴のニホンスイセン

 1月も半ばを過ぎると東京でも日当たりの良いところではちらほらとスイセンが咲き始めます。ニホンスイセンと呼ばれる野生種で、一重咲きと八重咲きの2種類が見られます。家の庭先や花屋さんでよく見かけるラッパスイセンに比べると花も小ぶりです。華やかさではラッパスイセンに劣るかもしれませんが、ニホンスイセンには楚々とした美しさがあり、この花が咲くとあたりが明るくなったような感じがします。

ニホンスイセン Pentax67Ⅱ smcPENTAX67 200mm 1:4 F4 1/60 Velvia100

 野生のスイセン群生地といえば伊豆半島の爪木崎が有名ですが、今頃は300万本といわれる満開のスイセンでおおい尽くされます。もともとは平安の頃に、遣唐使などによって薬草として日本に持ち込まれたらしいですが、爪木崎では、はるか南の島から流れついた球根が根付いたという言い伝えもあるようです。どこから流れてきたのかわかりませんがロマンのある話です。
 やはり水仙の群生地で有名な越前海岸地方には、その昔、海からやってきた美しい娘が二人の若者の恋の鞘あてにあった末、海に身を投げ、自らの命を絶った。水仙はその娘の生まれ変わり...こんな逸話も残っているといいます。

 種類にもよるようですがスイセンは香料の原料にも使われるらしく、甘い香りがします。野外で咲いているときはさほど気になりませんが、切り花として屋内に持ち込むと、市販の芳香剤などとは比べ物にならないくらい強烈な芳香を放ちます。
 雪の中でも咲くことから「雪中花」とも呼ばれるようですが、春が近いことを教えてくれる花のひとつだと思います。

小さなぼんぼりのようなロウバイ

 ロウバイも冬に花を咲かせる数少ない花木のひとつです。花弁が厚くて、質感が本当にロウ細工のようで、近寄るととてもいいにおいがします。太陽の光が差し込むと黄色く輝き、小さなぼんぼりに明かりが灯ったようです。
 中国原産の落葉樹らしいですが、花のほとんどない冬枯れの季節に花を見たいという昔の人の強い想いで、日本に持ち込んだのかもしれません。

ソシンロウバイ Pentax67Ⅱ smcPENTAX67 200mm 1:4 F4 1/125 Velvia100

 ロウバイは花に似合わず大きな実をつけますが、その実が翌年の開花時期になっても真っ黒になったまま残っているのを見かけます。花の写真を撮ろうとするときにはかなり目立ってしまい、邪魔な存在に感じてしまうこともしばしばです。中には小豆ほどの種が入っており、これを土にまくと春分の頃には芽が出てくるらしいです。

 最近は各地に「ロウバイ園」や「ロウバイの郷」なるものが誕生しています。関東近県では埼玉県の宝登山や、群馬県の松井田が有名です。公園などにも植えられているのをよく見かけますが、ソシンロウバイという園芸品種が多いようです。
 漢字で書くと「蝋梅」で、「梅」という字がついていますが梅の仲間ではないらしく、ロウバイ科という種類があるようです。確かに、素人が見ても梅の花と同じ仲間には見えません。
 そういった学術的なことはさておいても、この寒い時期に花を咲かせてくれることには本当に感謝です。スイセン同様に、春もそう遠くないことを感じさせてくれます。

 梅のつぼみもだいぶ膨らんできており、フィールドがにぎやかになるのも間もなくといった感じです。自然界は着実に動いていることを感じます。

(2021.1.23)

#ペンタックス67 #PENTAX67 #野草 #二十四節気 #花の撮影

第37話 御岳渓谷 2020年最後の紅葉をPENTAX67Ⅱで撮影

 御岳渓谷は多摩川の上流、東京都青梅市にある渓谷です。多摩川は、山梨県にある笠取山の山頂直下を源として、東京都、神奈川県を経由して東京湾に注ぎこむ一級河川ですが、上流の方は護岸工事をされていないところも多く、きれいな水が流れています。御岳渓谷のあたりはカヌーの聖地とも呼ばれているらしく、カヌーで川下りをしている人をたくさん見かけます。
 11月中旬あたりから綺麗な紅葉が見られるので、2020年最後の紅葉撮りに行ってきました。

 電車だとJR青梅線の御嶽駅からすぐ、車だと近くに有料駐車場があり、そこから歩いて10分ほどで御岳渓谷に着きます。夏の暑い時期やカヌーの大会があるときは賑わいますが、普段はそれほど人出が多いわけでもなく、ゆっくりと撮影をすることができます。

玉堂美術館前の大イチョウが輝いて

 紅葉の時期、何と言ってもひときわ目を引くのが玉堂美術館の前にある大イチョウの黄葉です。下の写真は対岸(左岸側)から撮ったものです。

玉堂美術館前の大イチョウ PENTAX67Ⅱ smcPENTAX67 200mm 1:4 F4 1/250 PROVIA100F

 この辺りは南側がすぐ山になっているため、朝のうちは日陰になっていますが、日が回り込んでくると黄色く色づいたイチョウがまさに黄金色に輝きます。樹高が30mほどもあるらしく、自ら光を放っているような姿は圧巻です。
 イチョウの葉っぱは枝についている間は綺麗な黄色を保っており、この色のまま一気に落葉していきます。他の黄葉のように葉っぱが茶色くならないので、綺麗な状態のまま散っていく潔さのようなものがあって好きです。少し強い風が吹いたときなどに一気に散る姿も見事です。

名水百選の蒼い流れ

 御岳渓谷一帯の流れは御岳渓流とも呼ばれており、名水百選に選ばれているようです。水深はあまり深くなさそうですが、大きな岩がごろごろしており、綺麗な景観をつくってくれています(下の写真)。

御岳渓谷 PENTAX67Ⅱ smcPENTAX67 55mm 1:4 F22 1s PROVIA100F

 1/2段ほど露出を抑えめにして、渓谷の蒼然たる感じを狙ってみました。まだ渓谷に陽が差し込む前なので、全体に青っぽく色かぶりをしています。
 それにしてもこんなところをカヌーで下っていくのですから凄いです。

燃えるようなイロハモミジの紅葉

 左岸側にはカエデ(イロハモミジ)がたくさんあり、日が差し込むと燃えるような色を見せてくれます。

イロハモミジ PENTAX67Ⅱ smcPENTAX-M67 300mm 1:4 F4 1/250 PROVIA100F

 対岸は日が当たっていないので黒く落ち込み、そこに真っ赤に色づいたカエデが浮かび上がります。薄曇りくらいの光の方が柔らかな感じになって個人的にはその方が好きですが、この日は快晴のため光が強すぎたのと、ほぼ正面からの光で撮ってしまったために全体的に硬く、ぎらついた感じになってしまいました。

落ち着いた色合いのトウカエデの黄葉

 下の写真は御岳小橋の脇で見つけた黄葉です。たぶん、トウカエデではないかと思います。

トウカエデ PENTAX67Ⅱ smcPENTAX67 200mm 1:4 F4 1/125 PROVIA100F

 だいぶ落葉してしまってスカスカしてますが、まだ綺麗な色を保っていました。太陽の位置もだいぶ高くなっているので、前のカエデの写真に比べると落ち着いた感じになりました。葉っぱが落ちた後の枝も白く輝いて、晩秋らしさが出ているのではないかと勝手に思ってます。

やはりイロハモミジの紅葉は第一級品

 午後2時過ぎ、御岳渓谷での撮影を切り上げ、帰路を車で移動している際に偶然に綺麗な紅葉を見つけました。まさに今が盛りと真っ赤に色づいた何とも美しいイロハモミジです。

イロハモミジ PENTAX67Ⅱ smcPENTAX67 300mm 1:4 F8 1/4 PROVIA100F

 左サイドからの光で撮っていますが、背景の方が日が当たっていて明るかったので、背景があまり映り込まないようにカエデの木をフレームいっぱいに入れてみました。紅葉が濁らないように露出は少しオーバー目にしています。同じ赤でも色の濃淡があるのと、光が当たって白く光っているところがあり、平坦になりすぎずに済んだと思っています。
 まだほとんど落葉しておらず、葉っぱが密集しているためにこのような撮り方ができますが、落葉してスカスカ状態だとこのような感じは出せないと思います。

 東京都心の紅葉はあまり鮮やかに色づかないものが多いですが、標高230mmほどの御岳渓谷のあたりは気温の寒暖差が大きいためか、色がとても鮮やかです。同じ東京とは思えない豊かな自然が残されており、近くにある御岳山にはレンゲショウマの群生地があるようです。一度、訪れてみたいものです。

(2021.1.13)

#御岳渓谷 #渓流渓谷 #ペンタックス67 #PENTAX67 #紅葉

第34話 中判レンズ ペンタックス67:smc PENTAX-M☆ 67 1:4 300mm ED(IF)

 PENTAX67用で焦点距離300mmの望遠レンズです。35mm判カメラ用の150mmくらいのレンズの画角に相当します。ED(特殊低分散)ガラスが採用されたレンズです。

レンズの主な仕様

 このレンズが発売される前は☆のつかない「smc PENTAX67 1:4 300mm」というレンズがあったのですが、それに比べて仕様もお値段も格段にグレードアップされました。ヘリコイドリングのところにグリーンの線が入り、前のモデルとの差を見せつけているという感じです。
 前玉側から覗き込むと、吸い込まれるような妖しい美しさがあります。

smc PENTAX-M☆ 67 1:4 300mm ED(IF)

 レンズの仕様は以下の通りです(リコーイメージング株式会社 公式HPより引用)。
   画角      : 17度
   レンズ構成枚数 : 9群9枚
   最小絞り    : 32
   最短撮影距離  : 2.0m
   フィルター径  : 82mm
   最大径x長さ  : 92.5mm × 209.5mm
   重さ      : 1,650g

重いけれど使い易いレンズ

 前のモデルのレンズ構成が5群5枚だったのに対し、こちらは9群9枚構成になり、レンズ枚数がほぼ倍増しています。また、インナーフォーカス方式が採用されているため、ヘリコイドリングを回してもレンズの全長が変化しないので、バランスの移動も起きません。そして、ヘリコイドリングは軽く、とても滑らかに動きます。これは非常に薄い被写界深度の中においても、とてもピント合わせがし易いです。まさに1mmほど動かしてピントの山を移動させたい時など、この滑らかさがないと大変です。

 ヘリコイドはオーバーインフになっていて、無限遠を通り過ぎて少し先まで回ります。前のモデルがオーバーインフになっていたかどうか記憶がありません。
 最短撮影距離が2mと、前のモデルの半分以下になっているのも使い勝手が良く、ありがたいです(前モデルの最短撮影距離は5m)。

 三脚座は鏡筒と一体になっていて取り外しはできませんが、とても薄型なので特に支障は感じません。手持ち撮影の時には手のひらにちょうど収まり、レンズを支えながら指でヘリコイドを回すことができるので便利です。

smc PENTAX-M☆ 67 1:4 300mm ED(IF) 三脚座

 とはいえ、かなり大きくて重いレンズであることには間違いありません。レンズ先端からマウント面まで約210mmあります。PENTAX67のフランジバックが約85mmですので、このレンズをカメラに取付けたときのレンズ先端からカメラ後端まで、全長は300mmを越えます。そして、レンズ単体の重さが1,650gですので、小ぶりなレンズ2~3本分の重さです。このレンズをカメラバッグに入れると途端に重くなり、持ち歩くのは決して楽ではありません。大判カメラ用で使っているニコンのM300というレンズと比較してみるとこの違いです(下の写真)。開放F値が2段以上違いますので当然と言えば当然ですが、M300は重さがわずか290gですから、いかにPENTAXのレンズが大きいかがわかります。

smc PENTAX-M☆ 67 1:4 300mm ED(IF) + PENTAX67Ⅱ

浅いピントとシャープな写り

 しかし、その大きさや重さを差し引いても使いたくなる魅力のあるレンズであることも事実です。このレンズ、とにかくキレが良くて、撮影済みのポジをライトボックスで見るとエッジのシャープさが良くわかります。被写界深度が浅いこともあり、ピントの合っている部分がまるで浮き上がっているような立体感を感じます。いわゆるヌケの良い描写をするとともに、ピントのピーキーさが際立っているレンズだと思います。

 下の写真はほとんど落葉して幹と枝ばかりになった木を撮影したものです。

裸木 PENTAX67Ⅱ smcPENTAX-M 67 1:4 300mm F4 1/250 PROVIA100F

 白く輝く枝を逆光気味で撮影しています。白い枝が飛ばない程度に露出を若干オーバー目にして、裸木なりの力強さを狙ってみました。画面上ではわかりにくいかもしれませんが、枝の先端までくっきりと写っています。コントラストが高く、キリッと引き締まった印象を受ける描写だと思います。ちょっとオーバーかも知れませんが、その場の空気まで写し込むといった表現が当てはまるくらいです。
 この写真では鋭い点光源がないのでそもそも色収差は起こりにくいかもしれませんが、ポジを高倍率のルーペで確認しても色収差らしきものは見当たりません。さすが、EDレンズといった感じです。
 また、ファインダー上でピントのヤマがはっきりとわかり、ピント合わせのし易いレンズです。ヘリコイドリングを回したときにピントがスーッと立ってくるのは気持ちの良いものです。

素の状態で使ってこそ

 このレンズに1.4xのリアコンバータをつけると420mmに、2xのリアコンバータをつけると600mmの超望遠になりますが、画質の低下が目立ちます。リアコンバータが特に粗悪というわけではありませんが、このレンズの性能が高いだけにそのギャップがわかりやすいのだと思います。どうしても長い玉が必要というのでなければ、リアコンバータの併用はお勧めしません。単独で使ってこそ性能が発揮されるレンズではないかと思います。

 PENTAX67用のレンズは二線ボケの傾向がありますが、このレンズも撮影条件によっては若干二線ボケが出ることがあります。風景など遠景を撮る分にはほとんど気になることはありませんが、野草撮影などのように比較的近景を撮ると、二線ボケが気になることがあります。
 そういったレンズのクセというか個性を把握しながら撮影するのも写真の面白さかもしれません。

(2020.12.28)

#ペンタックス67 #PENTAX67 #レンズ描写

第33話 フィルムカメラでつづる二十四節気の花暦 ~冬至~

 昨日(12月21日)は冬至でした。言わずと知れた、一年のうちで昼の時間が最も短い日です。
 また、日没後の空では実に397年ぶりと言われる木星と土星の大接近が見られました。私は視力があまりよくないので、肉眼では一つに見えてしまいました。
 調べたところ、前回の大接近の時は徳川家光が将軍になった頃のようです。もしかしたら家光も見ていたかも知れません。

 冬至は、太陽の力が一番弱まる日ですが、この日を境に再び太陽の力が蘇ることから、すべての運が上昇に転じる縁起の良い日とされています。この縁起の良い日に「ん」のつく食べ物を食べると「運がつく」と言われています。最も日が短く寒さも厳しくなり、風邪をひきやすい時期であるところから、縁起を担ぐようになったのかも知れません。
 旬をむかえる柚子を入れる柚子風呂も昔からのならわしの一つです。風邪をひかないと言われていますが、高価な柚子を風呂に入れるのはためらわれてしまいます。むしろ、焼酎に入れて飲んだ方が風邪をひかなくなるのではと、ついつい不届きなことを考えてしまいます。

枯れてもなお...セイヤタアワダチソウ

 この時期、東京は冬晴れの日が続きますが、季節感の希薄な東京でも寒さが強まり、冬の訪れを感じます。同時に野に咲く花の数はめっきり減ってしまいます。しかし、この時期ならではの「花」が見られるのも自然界の妙ではないかと思います。
 下の写真はセイタカアワダチソウです。

セイタカアワダチソウ PENTAX67Ⅱ smcPENTAX67 1:4/200 F4 1/250 PROVIA100F

 秋に黄色い花を咲かせる北アメリカ原産の帰化植物ですが、ものすごい勢いで繁殖すると言われており、いたるところで見ることができます。根から他の植物の成長を抑制する化学物質を出すらしく、嫌われ者の感がありますが、葉っぱはハーブとしても利用されるようです。
 花の時期はとうに終わっており全身すっかり枯れていますが、枯れてもなお原型をとどめているところにも、この植物の繁殖力のすごさを感じます。
 枯草なのでほとんど見向きもされないだろうと思いますが、花の少ないこの時期には貴重な被写体です。セイタカアワダチソウに限らず、植物は花が咲いているときはもちろん美しいのですが、芽が出てから枯れるまでの間、その時々の美しさというのがあります。
 これは河川敷で撮ったものですが、バックが日陰になっていたおかげでセイタカアワダチソウが引き立ってくれました。

ツタモミジも輝いています

 東京の紅葉は12月に入ってからが本番なので、年末になっても場所によってはまだ紅葉を見ることができます。そんな名残の紅葉を撮ってみたのが下の一枚です。

ツタモミジ New Mamiya 6 MF Mamiya G 1:4.5/150 F5.6 1/60 PROVIA100F 

 場所は近所の公園ですが、木の幹に絡みついたツタモミジを逆光で撮ってみました。カサカサした落ち葉ばかりが目立ってしまいますが、まだこのような光景を見ることができます。この紅葉もよく見るといちばん美しい時期は過ぎており、かなり傷みが目立ってきていますが、最後の輝きを放ってくれているという感じです。
 ツタの葉っぱだけではつまらないので、後方にある常緑樹からの木漏れ日を玉ボケにしてみました。玉ボケが大きくなりすぎないように絞りを少し絞ってみましたが、やはり開放の丸いボケのほうが柔らかな感じになり、この時期らしさを出せたかも知れません。

 冬はこれからが本番ですが、葉をすっかり落した木の枝には米粒ほどの芽がついています。植物にとってはすでに春に向けての準備が始まっているのでしょう。

(2020.12.22)

#ペンタックス67 #PENTAX67 #野草 #二十四節気 #花の撮影

第28話 フィルムカメラでつづる二十四節気の花暦 ~小雪~

 今日から師走。不思議なもので、12月というよりも師走と言うほうが季節感が漂います。日常の会話の中で、12月以外で旧暦の呼び名を使うことはまれですが、12月だけ旧暦の呼び名を使うことが多いのは何故なのでしょう?

 今は二十四節気の「小雪(しょうせつ)」にあたり、さらに七十二候で言うところの「朔風払葉(きたかぜこのはをはらう)」という時期らしいです。冷たい北風が吹き、木々の葉っぱを落とす頃という意味のようですが、こういった昔の日本人の感性には驚かされます。
 木の葉が落ちるといえば、私もよく使う甲州街道(国道20号線)を新宿から八王子方面に向かうと、道路の両側に大きな欅の木がたくさん植えられています。毎年この季節になると大量の欅の葉が道路に舞い落ちます。そこを自動車が走りぬけると落ち葉が舞い上がり、まるで映画かCMのワンシーンのような感じになります。

宝石のようなヒヨドリジョウゴの実

 私は野に咲く花(野草)を撮ることも多いのですが、この時期はそういった花もほとんどなくなってしまいます。それでも、まだ自然が残されている郊外の野山などに行くと、緑もすっかり影を潜めた枯野の中に赤や紫に色づいた木の実を見ることができます。紫色のヤブムラサキやオレンジ色のカラスウリ、真っ赤なガマズミなどなど。
 そんな中でも見つけるとつい撮ってしまうのが「ヒヨドリジョウゴ(鵯上戸)」の実です。

ヒヨドリジョウゴ

 葉っぱもすっかり枯れてしまいカサカサと音をたてそうですが、赤い実はとても瑞々しく、つまんで食べてみようかと思ってしまうほどです。しかし、実だけでなく全草に毒があるらしく、食べ過ぎると下痢や嘔吐などの中毒症状が出るようですが、漢方の生薬としても利用されています。昔の人の知恵は本当に素晴らしいと思います。
 ヒヨドリジョウゴはナス科の植物で、夏から初秋にかけて小さな白い花を咲かせます。花は開いたあと白い花冠が反り返って、まるでダーツの矢のような形になり何とも可愛らしいものです。そして、花が散った後に緑色の実をつけるのですが、この頃はまだ特に目立つこともないごく普通の野草です。
 ところが、周りの野草がその寿命を終えようとしている頃になるとこの写真のように真っ赤になり、ひときわ目立ってきます。

 ヒヨドリが好んで食べることからついた名前と言われていますが、本当にヒヨドリが食べるのかどうか知りません。しかし、ヒヨドリは赤いものを好むのか、春先には梅や桜のつぼみをついばんでしまうので、もしかしたら毒のあるこの実も食べてしまうのかも知れません。

日本の原風景 残り柿

 そして、この季節に見ることができる日本の原風景といえるのが「残り柿」です。葉はすっかり落ちてしまい、実だけが残っています。

残り柿

 昔の人は、柿はすべての実をもいでしまうのではなく、下のほうは旅人のために、上のほうは鳥たちのために残しておいたと言われています。その昔、ここを通りかかった旅人がこの小さな祠にお参りをし、柿を二つ三つもいで、また旅を続けるという光景が浮かんでくるようです。
 今は食べ物も豊富で旅人が柿をもぐこともないかもしれませんが、食べ物が少なくなるこの時期、鳥たちにとっては貴重な食料源です。
 また、「柿若葉」、「柿紅葉」、「柿落ち葉」など、季節ごとの情趣に富んだ名前で呼ばれるのも柿の木ならではだと思います。

 大きな柿の木にたくさんの実がついていても、収穫されることなくそのままになっている光景をよく目にします。冬の風物詩でもある吊るし柿を作る家が減ってしまったことも、ほったらかしになっている理由の一つかもしれません。
 一方、スーパーや八百屋さんで売られている柿はとても立派で、しかもお高いです。出荷するために栽培されているものなので当然ですが、残り柿はあまり立派な実よりも、少々小ぶりのほうが風情があると感じてしまいます。

(2020.12.1)

#ペンタックス67 #PENTAX67 #野草 #二十四節気 #花の撮影

第20話 中判カメラPENTAX67Ⅱで撮る北秋川渓谷神戸川(東京都檜原村)

 GoToトラベルに東京もやっと仲間入りさせてもらったとはいえ、正直なところ、県境を越えて他県に行くことには気を使います。東京都ならいいというわけではありませんが、なるべく人と接しないようにということで北秋川渓谷の支流の一つである神戸川(かのとがわ)に行ってきました。

神戸岩の滝

 檜原街道から水根本宿線(都道205号)に入り、神大橋の手前を右折します。この先は北秋川に合流する神戸川に沿って進みます。4~5km行くと神戸岩(かのといわ)の駐車場に到着。車をここに停めて神戸岩に向かうと、間もなく神戸岩から流れ落ちる滝が見えてきます。落差はさほどありませんが岩穴から流れ出てくように見え、とても雰囲気のある滝です。

神戸岩の滝  PENTAX67Ⅱ SMC TAKUMAR6×7 75mm 1:4.5 F22 1s PROVIA100F

 この滝の右側に梯子が掛けられており、そこを上っていくと神戸岩の中に入っていくことができます。しかしその先は岩場に幅30cmほどの足場があるくらいで、鎖につかまりながら進むという状態ですのでカメラや三脚などの機材をもっていくのは困難です。何とか持って行ったとしても三脚を立てるようなスペースもなく、残念ながら機材はこの滝の手前に置いていくしかありません。
 神戸岩はこの川の両側に垂直に100mほども切り立っており、ほとんど日差しが入ることもないと思われます。両側の岩に反響するせいか、流れる水の音がひときわ大きく聞こえます。

心霊スポットで有名な神戸対隧道 

 神戸岩を抜けた後、戻りは神戸岩をまいて通っている車道を歩くことになります。ここはトンネルになっているのですが、真っ暗なうえに有名な心霊スポットらしく、ここを一人で歩くのはちょー怖いです。後ろから何かついてきていないかとか、背中に何か張り付いていないかとか、そんなことが気になって振り返りながらつい足早になってしまいます。トンネル出口部分の天井だけコンクリートで固めてありますが、岩から染み出た水がこのコンクリートに女性の姿を描き出すといわれており、怖くて見る気にもなりません。トンネルから出た後に振り返りましたが、トンネルに吸い込まれるようなおどろおどろしい雰囲気があります。

小さな滝が続く神戸川の流れ

 気を取りなおし、神戸川を下流に向かいます。下の写真はいくつもの小さな滝を作りながら流れる神戸川を撮影した一枚です。

神戸川  PENTAX67Ⅱ SMC PENTAX-M 67 300mm 1:4 F32 8s PROVIA100F

 岩の間を流れ落ちる小さな滝と、川底が見える静かな流れとの対比がとても美しいと思います。枝っぷりの良い楓が渓流に張り出しており、まだ青々としていますが、紅葉するとまた違った美しさを見せてくれることでしょう。
 この辺りは山に囲まれており、かなり太陽が高くならないと渓谷まで陽が入り込んできません。陽が差し込んでくるとコントラストが強くなりすぎてしまい、しっとり感がなくなってしまうので、その前にできるだけ撮影しようと気がせいてしまいます。

神戸川 差し込む光に輝く水面

 午前10時半くらいになるとようやく木々の間から光が漏れて、渓谷に差し込んできます。澄んだ流れと光があちこちに美しい景色を作り出しています。そんな中の一枚が下の写真です。

神戸川  PENTAX67Ⅱ SMC PENTAX67 MACRO135mm 1:4 F22 1/4 PROVIA100F

 川面全体に光が差し込み、川底の石が輝いているようです。一方、川から垂直に立ち上がっている対岸の岩に差す光はまばらで、草や岩の上にたまった落ち葉を浮かび上がらせています。明るいところと暗いところの露出差が5EVほどもあるため、陽がさしていない岩のところは黒くつぶれてしまうかと思いましたが、かろうじて写ってくれました。

石垣に根を下ろしたシダ

 陽が高くなってきたので渓谷での撮影を切り上げ、林の中に入り、モノクロフィルムで林の中の小さな景色を切り取ってみました。下の写真は苔むした石垣の隙間に根付いたシダの葉っぱです。

シダ  PENTAX67Ⅱ SMC PENTAX67 MACRO135mm 1:4 F4 1/60 ILFORD Delta 100

 石垣全体に陽が当たってしまうとフラットになってしまうので、木の枝の隙間からスポットライトのようにシダに陽が差し込む瞬間を狙ってみました。光を反射して輝く葉っぱと、周囲の濡れた苔とのコントラストが出るようにとの思いで撮影した一枚ですが、左上の苔に当たる光がちょっと強すぎる感じですね。
 林の中にはとっくに花期を終えたヤマアジサイもたくさんあり、モノクロで撮るには格好の被写体でした。

 今ごろの季節は、夏が終わって秋に向かうちょうど変わり目の時期で、ちょっと中途半端な感じもしますが、季節の移ろいを感じられる時期でもあります。錦秋の季節も間もなくで、気持ちも高ぶってきます。
 この日はすべてPENTAX67Ⅱでの撮影で、使用したレンズは55mm、75mm、105mm、135mm、200mm、300mmの6本でした。

(2020.10.10)

#神戸川 #北秋川渓谷 #渓流渓谷 #ペンタックス67 #PENTAX67

第15話 中判レンズ ペンタックス67:SMC TAKUMAR 6×7 75mm 1:4.5

 PENTAX67用のレンズです。焦点距離が75mmですので中判カメラ用としては広角の部類に入ります。35mm判カメラでいうと35~38mmくらいのレンズに相当する画角といったところでしょうか。風景を撮る際、私にとってこの焦点距離と画角は使い易く、比較的出番の多いレンズです。

レンズの主な仕様

 レンズの仕様は以下の通りです(リコーイメージング株式会社 公式HPより引用)。
   画角      : 61度
   レンズ構成枚数 : 4群5枚
   最小絞り    : 22
   最短撮影距離  : 0.7m
   フィルター径  : 82mm
   最大径x長さ  : 91.5mm × 81mm
   重さ      : 600g

SMC TAKUMAR 6×7 75mm 1:4.5

 フィルター径が82mmあり、寸胴型をしていますので大きく見えますが、重さは600g(カタログ値)で、TAKUMAR 6×7 105mm 1:2.4 (590g)とほぼ同じです。ほぼ同じ重さながら図体が大きいので、手に持つと見かけよりも軽く感じます。私のレンズはTAKUMAR 6×7ですが、PENTAX 67になると40gほど軽くなっています。レンズ構成など仕様は同じですので、鏡胴等の材質を変えることで軽量化が図られているのではないかと思います。

特徴的なメニスカスレンズ

 このレンズの外観上の特徴は何といっても前玉にあります。斜め横から見ると曲率の大きなメニスカスレンズがドーム屋根のように盛り上がって見えます。斜めから入射する光を収束するのに効果があるといわれていますが、PENTAX67用のレンズの中でも、これだけ大きな曲率を持ったメニスカスレンズを用いているのはこの75mmとShift75mmだけではないかと思います。コーティングの色は最近のレンズに比べるとあっさりとした感じがします。

SMC TAKUMAR 6×7 75mm 1:4.5

 開放絞りが4.5と若干暗めですが、風景を撮る分にはそれほど不都合は感じません。一方、最短撮影距離の0.7mはもう少し短くしてほしかったという思いはあります。
 2001年にSMC PENTAX67 75mm 1:2.8 AL というレンズが発売されました。明るいし小ぶりだし最短撮影距離は短いし、とっても欲しかったのですが非常にお高くて結局あきらめました。そもそも製造数が少ないらしく、中古市場でもあまり出回っていませんし、たまに見かけてもかなりの高額です。非球面レンズを採用しているので写りも向上しているのではないかと思いますが、残念ながら実際に使ったことはありません。

被写界深度

 話しを75mm 1:4.5のレンズに戻しますが、鏡胴に刻まれた被写界深度目盛りを見ると、最小絞りのF22で約2.4m~∞までピントが合うことになっています。これは、5mあたりにピント位置を置いておけば、近距離の撮影を除いてはピント合わせをしなくてもパンフォーカスの写真が撮れるということになります。しかし、そんな状態で撮影した写真は四つ切くらいまでのプリントであれば問題ありませんが、半切や全紙に引き伸ばすとピントの甘さが目立ってきます。ましてやフィルムをスキャンしてパソコンで等倍表示などしようものならさらに目立ちます(等倍表示してどうするんだという思いもありますが)。そもそも、この頃のレンズの許容錯乱円が、パソコンで等倍表示するなどということを想定されていないわけですから、これは仕方のないことかもしれません。ですので、被写界深度は深いとはいえ、やはり正確なピント合わせは必要と思います。

このレンズの写りは...(作例)

 さて、このレンズ、PENTAX67用のレンズの中では若干硬めの写りをするように思います。カリカリとした感じではなくキリッとしたシャープさが感じられ、個人的には好感の持てる写りだと思っています。コクのある発色も好みです。
 周辺部の画質の劣化や歪曲収差などもほとんど感じられず、建物などを撮影してもまっすぐなものはまっすぐに写り、気持ちの良い画に仕上がるレンズだと思います。

 下の写真は夜の京王線車両基地をこのレンズで撮ったものです。デイライトフィルムを使っているために照明による色被りが発生していますが、全体にわたって高い解像度を保っており、シャープさが感じられるのではないかと思います(もちろん、今のデジカメはもっとシャープに写せるのでしょうが)。周辺部においても画質の乱れはほとんど感じられないレベルではないかと思います。

京王線若葉台車両基地  PENTAX67Ⅱ SMC TAKUMAR 75mm

 このレンズの画角は61度ですが、これは私にとって非常にしっくりとくる画角です。クセのない画角、特徴を出しにくい画角という見方もできますが、大きく引き伸ばしたときに不自然さがないのがお気に入りの理由です。
 すでに生産終了品ですので新品は手に入りませんが、中古市場で程度の良い個体がお手頃な価格で出回っていたら、もう一本買っておきたいと思えるレンズです。

(2020.8.29)

#ペンタックス67 #PENTAX67 #レンズ描写

第9話 中判レンズ ペンタックス67:SMC TAKUMAR 6×7 105mm 1:2.4

 PENTAX67用の純正レンズの中でいちばん明るいレンズです。35mmカメラに換算すると50mmくらいのレンズの画角に相当し、中判レンズでは標準レンズに分類されます。

有名なアトムレンズ...ではないようです

 私の持っている105mmは「SMC TAKUMAR」で、「SUPER-TAKUMAR」の次であり「PENTAX」になる前のレンズです。シリアル番号が8490千番台ですので、1980年代中頃に製造されたレンズではないかと思います。ちなみに「TAKUMAR」の由来は、当時の旭光学工業の社長の弟さんである梶原琢磨氏からとったといわれています。

SMC TAKUMAR 6×7 105mm 1:2.4

 このレンズ、初期のものは屈折率を上げるためにガラスに酸化トリウムが添加されている、いわゆる「アトムレンズ」というのは有名な話ですが、私の持っているレンズがそれに該当するのかどうか、よくわかりません。アトムレンズは経年で黄変するといわれていますが、私のレンズは目視する限り、黄変は認められません。1970年代後半をもってアトムレンズは終焉を迎えたという話しもあるので、たぶん私のレンズは放射線は出していないと思われます。
 余談ですが、数年前までPENTAX6x7 SHIFT 75mmというレンズを持っていましたが、このレンズはかなり黄変しており、カラーポジにはっきりと影響が出るほどでした。このレンズは製造年からしてアトムレンズではないと思うのですが、あまり出番がなかったので手放してしまいました。

レンズの主な仕様

 レンズの仕様は以下の通りです(リコーイメージング株式会社 公式HPより引用)。
   画角      : 46度
   レンズ構成枚数 : 5群6枚
   最小絞り    : 22
   最短撮影距離  : 1.0m
   フィルター径  : 67mm
   最大径x長さ  : 91.5mm × 60mm
   重さ      : 590g

 SMC TAKUMAR 6×7 105mm、見かけは小ぶりですが持った時にズシッとした重さを感じます(カタログ上は590gとなっています)。鏡胴が金属製ということもあるのでしょうが、明るくするために大口径のレンズを使っていることも重さの理由かもしれません。このレンズをPENTAX67に装着すると、絶妙なバランスを保っているように感じます。カメラとレンズで総重量が2.5kg近くにもなるので確かに重いのですが、このバランスのせいなのか、実際の重量ほどには感じないといったところでしょうか。
 ヘリコイドも適度の重さがあり、35mmカメラ用のレンズに比べるとヘリコイドは重いと思うのですが、重量級のカメラに対してスカスカと動いてしまうようなことがありません。

SMC TAKUMAR6×7 105mm の写りと作例

 個人的には非常に素直な写りのする素晴らしいレンズだと思っています。ガウスタイプのレンズは歪曲収差をおさえることができるといわれていますが、このレンズもダブルガウス構成になっており、風景が主な被写体の私にとって気になるような収差はほとんど見られません。開放で撮った際、被写体によってはごくまれに周辺部でふわっとしたような写りに感じられることがあります。ポジをルーペで見てみるとコマ収差が若干残っているような感じもしますが、詳しいことはわかりません。

 シャープな写りをしますがカリカリとした硬さはなく、やわらかさを持ったシャープさとでも言ったらよいのか、それが画の立体感を生み出しているように思えます。そして、46°という画角は変に誇張することなく、ごく自然に風景を切り取ってくれるように感じます。画角は35mmカメラに50mmレンズをつけた時とほぼ同じとはいえ、焦点距離は約2倍の105mmあるわけですから、当然ぼけ方も50mmレンズのそれとは異なりますので、やはり中判カメラならではの画が生み出されます。

 下の写真は福島県で偶然見つけた水芭蕉の群落です。小雨が降っていて、奥の方には霧が立ち込めています。写真の良し悪しはともかく、見事な描写をしてくれていると思います。

水芭蕉群落  PENTAX67 SMC TAKUMAR 6×7 105mm 1:2.4 F16 1s Velvia50

 PENTAX67用の純正レンズはこれを含めて全部で11本そろえていますが、このレンズ、出番の多さでは3本の指に入ります。

余談

 写りには関係ありませんが、私はTAKUMARレンズの平目ローレット加工されたデザインのヘリコイドが好きです。しかし、PENTAXになってからはあや目ローレットになってしまいました。しかも金属ローレット加工ではなく、ゴムのような材質のリングをはめ込んであるだけなので、質感も高級感も失われてしまっています。

(2020.7.26)

#ペンタックス67 #PENTAX67 #レンズ描写