第42話 フジノン 大判レンズ FUJINON CM Wide 1:5.6/105mm

 フジノンの大判カメラ用レンズの最終モデルとなってしまったCM Wideシリーズのうちの1本です。CM WideシリーズはWシリーズの後継モデルで、105mmから450mmまで10本がラインナップされていました。

レンズの主な仕様

 フィルターワークを容易にするために105mm~250mmまではアタッチメントサイズが67mmに統一されていました。W105mmのフィルターサイズは46mmでしたので、それと比べると前枠が大きく広がっており、図体はずいぶん大きくなったように感じます。

FUJINON CM Wide 1:5.6/105mm

 レンズの主な仕様は以下の通りです(富士フィルム株式会社 公式HPより引用)。
   イメージサークル  : Φ174mm(f22)
   最大包括角度    : 78度
   最大適用画面寸法  : 4×5
   レンズ構成枚数   : 5群6枚
   最小絞り      : 45
   シャッター     : No.0
   シャッター速度   : T.B.1~1/500
   フィルター取付ネジ : 67mm
   前枠外径寸法    : Φ70mm
   後枠外径寸法    : Φ42mm
   フランジバック   : 103.4mm
   バックフォーカス  : 92.8mm
   全長        : 51.6mm
   重量        : 220g

 このレンズを4×5判で使った場合、画角は35mm判カメラでいうと30mmくらいのレンズに相当します。イメージサークルはΦ174mm(f22)で、W105mmのΦ162mmと比べると大きくなったとはいえ、シリーズの中では最も控えめな値です。
 前モデルのW105mmのイメージサークルはほとんど余裕がなく、4×5判で撮影する場合、フロントでのアオリは実質的に使えないという感じでしたが、こちらのレンズは若干の余裕があり、4×5判で横位置撮影の場合、フロントライズで約13mm、フロントシフトで約11mmが可能です。

富士フイルムが威信をかけて世に送り出したレンズ

 アタッチメントサイズが統一されたのは良いのですが、レンズボード面からレンズ先端までの長さ(高さ)にくらべて前枠径が大きいので、これが邪魔になってシャッター速度のリングが非常に回しにくくなってしまっていますし、刻印されたシャッター速度もとても見難くなってます(下の写真はレンズの下側から撮影したものなのでシャッター速度の目盛りが良く見えますが、レンズ上側からは非常に見難いです)。

FUJINON CM Wide 1:5.6/105mm

 しかしながら、若干の使いにくさはあるものの、収差は全くと言ってよいほど感じられませんし、解像度も極めて高いレンズだと思います。
 富士フイルムのホームページにはフジノンの歴史エピソードとして次のように掲載されています。
 「1994年、FUJINONは大判カメラ用レンズの最新型となるCM FUJINONシリーズのラインナップ10本を完成させる。
1951年に、リリースされ始めたFUJINON大判カメラ用レンズは、40年の技術革新を経て完成を見たとも言える。それは、Professionalの求める”最高画質”の一つの到達点でもある。
今まで本連載でもとりあげたように、設計技術の進化があり、そして非球面レンズ、EDガラスレンズなどの新たな硝材の開発、コート技術の革新などが、絶え間なく繰り返されてきた。FUJINON大判カメラ用レンズの最終型に冠されたNamingは”CM”。それはCommercialを意味する。ProfessionalがProfessionalとしての報酬を得る業務、つまり”Commercial 写真の現場”で使用されるためのレンズ。」

 富士フイルムが威信をかけて世に送り出したレンズ、ということが感じられます。

CM Wide 105mmで撮影した作例

 上にも書いたようにイメージサークルは大きくないのであまり大きなアオリは使えませんが、ストレートに風景を写すには全く問題はありません。4×5判で使用すると対角画角が72度の広角レンズになりますが、風景を撮るには広すぎず、使い易い画角だと思います。アオリを使わなくても絞り込めば被写界深度は深くなりますし、絞りを開けば程よいボケも得られます。

 下の写真は、このレンズで冬の滝を撮ったものです。

魚止めの滝 Linhof MasterTechnika 45 FUJINON CM Wide 1:5.6/105mm F32 1s Velvia100F

 手前の落ち葉もくっきりと写したかったので、F32まで絞り込み、わずかにフロントティルトのアオリをかけています。逆光での撮影ですがコントラストも良く出ていますし、画面の周辺部でも見事に解像していると思います。詳細はわかりませんが、CMシリーズになってレンズコーティング技術もかなり向上しているらしく(11層のコーティングがされているという話しもありますが、定かではありません)、その効果も大きいのかもしれません。

 この構図をもう少し離れたところから長めのレンズで撮ると、滝の力強さは増すと思うのですが広がりが希薄になってしまい、逆にもっと近づいてより広角で撮ると散漫になってしまうということで、ここではこのレンズの画角が最適という感じでした。

 手前の落ち葉のあたりを拡大したのが下の写真です。

魚止めの滝(部分拡大) Linhof MasterTechnika 45 FUJINON CM Wide 1:5.6/105mm F32 1s Velvia100F

 画面ではうまくお伝え出来ないのが残念ですが、濡れた落ち葉の質感なども見事にとらえられており、このレンズの描写力の高さがわかるのではないかと思います。

 このレンズに限ったことではありませんが、こういう素晴らしい描写をする大判レンズが生産終了になってしまったのはやはり寂しく思います。

(2021.2.2)

#フジノン #FUJINON #レンズ描写

第34話 中判レンズ ペンタックス67:smc PENTAX-M☆ 67 1:4 300mm ED(IF)

 PENTAX67用で焦点距離300mmの望遠レンズです。35mm判カメラ用の150mmくらいのレンズの画角に相当します。ED(特殊低分散)ガラスが採用されたレンズです。

レンズの主な仕様

 このレンズが発売される前は☆のつかない「smc PENTAX67 1:4 300mm」というレンズがあったのですが、それに比べて仕様もお値段も格段にグレードアップされました。ヘリコイドリングのところにグリーンの線が入り、前のモデルとの差を見せつけているという感じです。
 前玉側から覗き込むと、吸い込まれるような妖しい美しさがあります。

smc PENTAX-M☆ 67 1:4 300mm ED(IF)

 レンズの仕様は以下の通りです(リコーイメージング株式会社 公式HPより引用)。
   画角      : 17度
   レンズ構成枚数 : 9群9枚
   最小絞り    : 32
   最短撮影距離  : 2.0m
   フィルター径  : 82mm
   最大径x長さ  : 92.5mm × 209.5mm
   重さ      : 1,650g

重いけれど使い易いレンズ

 前のモデルのレンズ構成が5群5枚だったのに対し、こちらは9群9枚構成になり、レンズ枚数がほぼ倍増しています。また、インナーフォーカス方式が採用されているため、ヘリコイドリングを回してもレンズの全長が変化しないので、バランスの移動も起きません。そして、ヘリコイドリングは軽く、とても滑らかに動きます。これは非常に薄い被写界深度の中においても、とてもピント合わせがし易いです。まさに1mmほど動かしてピントの山を移動させたい時など、この滑らかさがないと大変です。

 ヘリコイドはオーバーインフになっていて、無限遠を通り過ぎて少し先まで回ります。前のモデルがオーバーインフになっていたかどうか記憶がありません。
 最短撮影距離が2mと、前のモデルの半分以下になっているのも使い勝手が良く、ありがたいです(前モデルの最短撮影距離は5m)。

 三脚座は鏡筒と一体になっていて取り外しはできませんが、とても薄型なので特に支障は感じません。手持ち撮影の時には手のひらにちょうど収まり、レンズを支えながら指でヘリコイドを回すことができるので便利です。

smc PENTAX-M☆ 67 1:4 300mm ED(IF) 三脚座

 とはいえ、かなり大きくて重いレンズであることには間違いありません。レンズ先端からマウント面まで約210mmあります。PENTAX67のフランジバックが約85mmですので、このレンズをカメラに取付けたときのレンズ先端からカメラ後端まで、全長は300mmを越えます。そして、レンズ単体の重さが1,650gですので、小ぶりなレンズ2~3本分の重さです。このレンズをカメラバッグに入れると途端に重くなり、持ち歩くのは決して楽ではありません。大判カメラ用で使っているニコンのM300というレンズと比較してみるとこの違いです(下の写真)。開放F値が2段以上違いますので当然と言えば当然ですが、M300は重さがわずか290gですから、いかにPENTAXのレンズが大きいかがわかります。

smc PENTAX-M☆ 67 1:4 300mm ED(IF) + PENTAX67Ⅱ

浅いピントとシャープな写り

 しかし、その大きさや重さを差し引いても使いたくなる魅力のあるレンズであることも事実です。このレンズ、とにかくキレが良くて、撮影済みのポジをライトボックスで見るとエッジのシャープさが良くわかります。被写界深度が浅いこともあり、ピントの合っている部分がまるで浮き上がっているような立体感を感じます。いわゆるヌケの良い描写をするとともに、ピントのピーキーさが際立っているレンズだと思います。

 下の写真はほとんど落葉して幹と枝ばかりになった木を撮影したものです。

裸木 PENTAX67Ⅱ smcPENTAX-M 67 1:4 300mm F4 1/250 PROVIA100F

 白く輝く枝を逆光気味で撮影しています。白い枝が飛ばない程度に露出を若干オーバー目にして、裸木なりの力強さを狙ってみました。画面上ではわかりにくいかもしれませんが、枝の先端までくっきりと写っています。コントラストが高く、キリッと引き締まった印象を受ける描写だと思います。ちょっとオーバーかも知れませんが、その場の空気まで写し込むといった表現が当てはまるくらいです。
 この写真では鋭い点光源がないのでそもそも色収差は起こりにくいかもしれませんが、ポジを高倍率のルーペで確認しても色収差らしきものは見当たりません。さすが、EDレンズといった感じです。
 また、ファインダー上でピントのヤマがはっきりとわかり、ピント合わせのし易いレンズです。ヘリコイドリングを回したときにピントがスーッと立ってくるのは気持ちの良いものです。

素の状態で使ってこそ

 このレンズに1.4xのリアコンバータをつけると420mmに、2xのリアコンバータをつけると600mmの超望遠になりますが、画質の低下が目立ちます。リアコンバータが特に粗悪というわけではありませんが、このレンズの性能が高いだけにそのギャップがわかりやすいのだと思います。どうしても長い玉が必要というのでなければ、リアコンバータの併用はお勧めしません。単独で使ってこそ性能が発揮されるレンズではないかと思います。

 PENTAX67用のレンズは二線ボケの傾向がありますが、このレンズも撮影条件によっては若干二線ボケが出ることがあります。風景など遠景を撮る分にはほとんど気になることはありませんが、野草撮影などのように比較的近景を撮ると、二線ボケが気になることがあります。
 そういったレンズのクセというか個性を把握しながら撮影するのも写真の面白さかもしれません。

(2020.12.28)

#ペンタックス67 #PENTAX67 #レンズ描写

第23話 フジノン 大判レンズ FUJINON SWD 1:5.6/75

 フジノンの大判用レンズです。SWD(Super Wide Delux)シリーズは65mm、75mm、90mmの3種類が発売されており、これはそのうちの一つです(もちろん、すでに販売終了になっていますが)。

レンズの主な仕様

 4×5判で使用した場合、35mm判に換算すると21mmくらいのレンズの画角になりますので、超広角に分類されるレンズです。最大包括角度は105度、イメージサークルは196mm(f22)あり、キャビネ判まで対応していますが決してゆとりがあるというわけではありません。横位置撮影の際のライズ可能範囲は26mmほどで、大きなアオリを使おうとするとケラれてしまいますので注意が必要です。

FUJINON SWD 1:5.6/75

 レンズの主な仕様は以下の通りです(富士フィルム株式会社 公式HPより引用)。
   イメージサークル  : Φ196mm(f22)
   最大包括角度    : 105度
   最大適用画面寸法  : キャビネ
   レンズ構成枚数   : 6群8枚
   最小絞り      : 45
   シャッター     : No.0
   シャッター速度   : T.B.1~1/500
   フィルター取付ネジ : 67mm
   前枠外径寸法    : Φ70mm
   後枠外径寸法    : Φ70mm
   フランジバック   : 85.1mm
   バックフォーカス  : 53.4mm
   全長        : 76.0mm
   重量        : 400g

ベッドの写り込みを防ぐ

 このレンズをリンホフマスターテヒニカ45で使用する場合は、横位置でも無限遠時はベッドがわずかに写り込んでしまいますので、ベッドダウンかライズが必要になります。しかし、撮影するポジションまでレンズを繰り出すとUアーム(レンズ支柱)がボディトラックと繰出しトラックの両方にかかってしまい、ベッドダウンができません。これを回避するためには凹みレンズボードを使って、Uアームがボディトラックから完全に外れ、繰出しトラック上にある状態にするか、もしくは、逆にUアームをボディトラック上に置いて、カメラのバック部を引っ張り出すかをしなければなりません。ただし、後者の場合はピント合わせに苦しみます。
 私の使っているレンズボードは通常のフラットなタイプですので、少しだけライズをしてお手軽に済ませてしまっています。(ちなみに、マスターテヒニカ2000の場合はボディトラックが移動するような機構が組み込まれており、Uアームをボディトラックだけに乗せて使えるのでずいぶん便利です)

大きな後玉外枠径

 F5.6の大口径ですので明るくて使い易いですが、レンズ単体で400gあり、結構重いです。また、後玉の外枠径が70mm(前玉の外枠径と同じです)もあるため、リンホフマスターテヒニカやウイスタ45では問題ありませんが、ホースマン45FAの場合はレンズ取付け部の穴径が小さくて入りません。どうしても取り付けたい場合はいったん後玉を外し、蛇腹の後方から手を突っ込んで後玉を取り付けるという面倒なことをしなければなりません。
 下の写真はSWD75mm(左)とW210mm(右)を真横から見た状態です。SWD75mmの後玉が大きいのがわかると思います。

FUJINON SWD75mm & FUJINON W210mm

 このレンズは建築やインテリアなどの撮影に使われることが多いのかもしれませんが、私はそういった写真を撮ることはほとんどなく、もっぱら風景撮影に使っています。手前から広がりのある風景をパンフォーカスで撮ることができるので、インパクトのある写真にすることができます。超広角といえども焦点距離は75mmあるわけですから、よほど間近なものでも撮らない限り、パースが強すぎることによる歪みは抑えられていると思います。超広角レンズの特徴であるパースをあえて出したい場合は極端に近寄るか、もしくは、より短焦点のレンズを使う必要があります。

作例 青森県下北半島 仏ケ浦

 同じフジノンの大判レンズの中でもこのSWDシリーズのレンズは、Wシリーズのレンズと比べるとコクのある色乗りと言ったらいいのか、若干こってりとした印象があります。決して嫌みのあるこってり感ではなく、ヌケの良いクリアな色乗りが特徴のレンズではないかと思います。

 下の写真は青森県の仏ケ浦で撮影したものです。

仏ケ浦(青森県)  Linhof MasterTechnika 45 FUJINON SWD75mm 1:5.6  F45 1/8 PROVIA100F

 早朝に撮影したのでまだ太陽の光が若干赤みを帯びていますが、空と雲と岩のコントラストが綺麗に出ていると思います。中央右寄りの「如来の首」という名前がついている岩の高さは15mほどあります。この如来の首ももちろんですが、左端の岩も垂直に立たせたかったので、このレンズのギリギリまでライズしてカメラをできるだけ水平に近く保っていますが、もう少しイメージサークルが欲しいというのが正直なところです。画面ではよくわからないと思いますが、解像度でも色再現性においても、さすがFUJINONといった描写力だと思います。

 大判カメラに67判のフィルムホルダーを着けてこのレンズで撮影する場合は、35mm判換算で35~38mmのレンズに相当する画角になりますので、標準的な広角レンズといったところです。重いレンズではありますが、広い風景を切り取ったりパースペクティブを活かしたり、いろいろなシチュエーションで使えるレンズであり、重宝しています。

(2020.11.8)

#フジノン #FUJINON #レンズ描写

第15話 中判レンズ ペンタックス67:SMC TAKUMAR 6×7 75mm 1:4.5

 PENTAX67用のレンズです。焦点距離が75mmですので中判カメラ用としては広角の部類に入ります。35mm判カメラでいうと35~38mmくらいのレンズに相当する画角といったところでしょうか。風景を撮る際、私にとってこの焦点距離と画角は使い易く、比較的出番の多いレンズです。

レンズの主な仕様

 レンズの仕様は以下の通りです(リコーイメージング株式会社 公式HPより引用)。
   画角      : 61度
   レンズ構成枚数 : 4群5枚
   最小絞り    : 22
   最短撮影距離  : 0.7m
   フィルター径  : 82mm
   最大径x長さ  : 91.5mm × 81mm
   重さ      : 600g

SMC TAKUMAR 6×7 75mm 1:4.5

 フィルター径が82mmあり、寸胴型をしていますので大きく見えますが、重さは600g(カタログ値)で、TAKUMAR 6×7 105mm 1:2.4 (590g)とほぼ同じです。ほぼ同じ重さながら図体が大きいので、手に持つと見かけよりも軽く感じます。私のレンズはTAKUMAR 6×7ですが、PENTAX 67になると40gほど軽くなっています。レンズ構成など仕様は同じですので、鏡胴等の材質を変えることで軽量化が図られているのではないかと思います。

特徴的なメニスカスレンズ

 このレンズの外観上の特徴は何といっても前玉にあります。斜め横から見ると曲率の大きなメニスカスレンズがドーム屋根のように盛り上がって見えます。斜めから入射する光を収束するのに効果があるといわれていますが、PENTAX67用のレンズの中でも、これだけ大きな曲率を持ったメニスカスレンズを用いているのはこの75mmとShift75mmだけではないかと思います。コーティングの色は最近のレンズに比べるとあっさりとした感じがします。

SMC TAKUMAR 6×7 75mm 1:4.5

 開放絞りが4.5と若干暗めですが、風景を撮る分にはそれほど不都合は感じません。一方、最短撮影距離の0.7mはもう少し短くしてほしかったという思いはあります。
 2001年にSMC PENTAX67 75mm 1:2.8 AL というレンズが発売されました。明るいし小ぶりだし最短撮影距離は短いし、とっても欲しかったのですが非常にお高くて結局あきらめました。そもそも製造数が少ないらしく、中古市場でもあまり出回っていませんし、たまに見かけてもかなりの高額です。非球面レンズを採用しているので写りも向上しているのではないかと思いますが、残念ながら実際に使ったことはありません。

被写界深度

 話しを75mm 1:4.5のレンズに戻しますが、鏡胴に刻まれた被写界深度目盛りを見ると、最小絞りのF22で約2.4m~∞までピントが合うことになっています。これは、5mあたりにピント位置を置いておけば、近距離の撮影を除いてはピント合わせをしなくてもパンフォーカスの写真が撮れるということになります。しかし、そんな状態で撮影した写真は四つ切くらいまでのプリントであれば問題ありませんが、半切や全紙に引き伸ばすとピントの甘さが目立ってきます。ましてやフィルムをスキャンしてパソコンで等倍表示などしようものならさらに目立ちます(等倍表示してどうするんだという思いもありますが)。そもそも、この頃のレンズの許容錯乱円が、パソコンで等倍表示するなどということを想定されていないわけですから、これは仕方のないことかもしれません。ですので、被写界深度は深いとはいえ、やはり正確なピント合わせは必要と思います。

このレンズの写りは...(作例)

 さて、このレンズ、PENTAX67用のレンズの中では若干硬めの写りをするように思います。カリカリとした感じではなくキリッとしたシャープさが感じられ、個人的には好感の持てる写りだと思っています。コクのある発色も好みです。
 周辺部の画質の劣化や歪曲収差などもほとんど感じられず、建物などを撮影してもまっすぐなものはまっすぐに写り、気持ちの良い画に仕上がるレンズだと思います。

 下の写真は夜の京王線車両基地をこのレンズで撮ったものです。デイライトフィルムを使っているために照明による色被りが発生していますが、全体にわたって高い解像度を保っており、シャープさが感じられるのではないかと思います(もちろん、今のデジカメはもっとシャープに写せるのでしょうが)。周辺部においても画質の乱れはほとんど感じられないレベルではないかと思います。

京王線若葉台車両基地  PENTAX67Ⅱ SMC TAKUMAR 75mm

 このレンズの画角は61度ですが、これは私にとって非常にしっくりとくる画角です。クセのない画角、特徴を出しにくい画角という見方もできますが、大きく引き伸ばしたときに不自然さがないのがお気に入りの理由です。
 すでに生産終了品ですので新品は手に入りませんが、中古市場で程度の良い個体がお手頃な価格で出回っていたら、もう一本買っておきたいと思えるレンズです。

(2020.8.29)

#ペンタックス67 #PENTAX67 #レンズ描写

第11話 シュナイダー 大判レンズ アポジンマー 150mm Schneider APO-SYMMAR 5.6/150

 Schneider製、150mmの大判用レンズです。正式には「Schneider KREUZNACH APO-SYMMAR 5.6/150(シュナイダー クロイツナッハ アポジンマー)」という長い名前がついています。

レンズの主な仕様

 4×5判カメラでこのレンズを使った場合、35mm判カメラに換算すると42mm前後のレンズの画角に相当します。シャッターはCOPALの#0ですので、ポケットに入れられるくらいの小ぶりのレンズです。
 私は150mmという焦点距離は結構好きで、このレンズの使用頻度も高めです。写りに関しても個人的には文句のつけようのない、お気に入りのレンズです。

Schneider KREUZNACH APO-SYMMAR 5.6/150

 レンズの主な仕様は以下の通りです(Schneider KREUZNACHカタログより引用)。
   イメージサークル  : Φ220mm(f22)
   包括角度      : 62度
   レンズ構成枚数   : 4群6枚
   最小絞り      : 64
   シャッター     : No.0
   シャッター速度   : T.B.1~1/500
   フィルターサイズ  : 58mm
   前枠外径寸法    : Φ60mm
   後枠外径寸法    : Φ45mm

 開放絞りが5.6、最小絞りが64です。絞り羽根は7枚で、いっぱいに絞っても型崩れしないきれいな7角形を保っています。絞りレバーは35mm一眼レフのレンズのようなクリックはなく、スーッと動きます。シャッタースピードは最高で1/500秒ですが、いままで、このレンズを使った撮影でそんな速いシャッターを切ったことはないと思います。

Schneider KREUZNACH APO-SYMMAR 5.6/150

 また、イメージサークルが220mm(F22)ありますので、4×5フィルムで風景写真を撮る分にはよほど極端なアオリでもしない限り、ケラレるようなことはありません。もう少し広角寄りの125mmレンズも割と出番があるのですが、イメージサークルが200mmを下回ってしまい、あおる時に気を使います。その点でもこの150mmは安心感があります。

シュナイダーとフジノンの写りの違い

 私の持っている大判レンズはSchneiderと国産の富士フィルム製FUJINONでほとんどが占められていますが、APO-SYMMAR 150mmとほぼ同じ仕様で、FUJINON W150mm 1:5.6というレンズがあります。FUJINONの写りも大好きなのですが、SchneiderとFUJINONの写りを比べた場合、Schneiderの方がわずかに暖色系(アンバー気味)の発色をします。逆の言い方をすると、FUJINONの方がわずかに寒色系(シアン気味)の発色傾向があるということです。例えば新緑を撮ると、Schneiderで撮ったほうが葉っぱの緑が極わずかですが、黄色っぽく写ります。レンズのコーティングの違いではないかと思うのですが、確かにFUJINONのコーティングのほうがグリーンとブルーの色味が強めになっています。

 5~6年前まで35mm一眼レフでCONTAXを愛用していたことがありました。CONTAXのレンズは有名なCarlzeissですが、同じレンズでもドイツ製と日本製があり、やはりドイツ製のレンズのほうが暖色系の傾向がありました。これもコーティングの違いによるものだと思いますが、なぜドイツと日本で違うコーティングをしているのか、その理由はわかりません。ドイツ人と日本人の光に対する感覚の違いかもしれませんね。

「APO」を冠したレンズ

 このAPO-SYMMARを購入する前は「APO」がつかないSYMMARを使っていたのですが、それぞれのレンズで撮影したポジをルーペで見比べてみると、APO-SYMMARでは光の滲みが改善されているのがわかります。色収差が抑えられているからだと思いますが、APO-SYMMARは明暗差の大きい境界部分に出やすい滲みもほとんど感じられません。さすが、だてに「APO」の名称を冠していないという感じです。なお、誤解のないように付け加えますが、決してSYMMARの写りが酷いということではありません。あくまでも比較をすると滲みが起きやすいような箇所でその違いが判るというレベルであり、SYMMARの写りも素晴らしいです。

APO-SYMMAR 150mm の写り

 下の写真はAPO-SYMMAR 150mmで撮影した永代橋の夜景です。画面上ではわからないと思いますが、ポジを見ると解像度とコントラストの素晴らしさがわかります。うまく表現できませんが、コクのある色再現性を持ったレンズといったらいいのでしょうか。

永代橋  Linhof MasterTechnika 2000 APO-SYMMAR 5.6/150 F32 48s Velvia100F

 橋のアーチ中央部分をほぼ等倍に拡大したものです。見事な質感の描写だと思います。

永代橋(拡大)  Linhof MasterTechnika 2000 APO-SYMMAR 5.6/150 F32 48s Velvia100F

 最後にどうでもいいことですが、レンズの鏡胴部分に書かれている「Schneider」のロゴがカッコ良くて好きです。

(2020.8.1)

#シュナイダー #Schneider #レンズ描写 #Symmar

第9話 中判レンズ ペンタックス67:SMC TAKUMAR 6×7 105mm 1:2.4

 PENTAX67用の純正レンズの中でいちばん明るいレンズです。35mmカメラに換算すると50mmくらいのレンズの画角に相当し、中判レンズでは標準レンズに分類されます。

有名なアトムレンズ...ではないようです

 私の持っている105mmは「SMC TAKUMAR」で、「SUPER-TAKUMAR」の次であり「PENTAX」になる前のレンズです。シリアル番号が8490千番台ですので、1980年代中頃に製造されたレンズではないかと思います。ちなみに「TAKUMAR」の由来は、当時の旭光学工業の社長の弟さんである梶原琢磨氏からとったといわれています。

SMC TAKUMAR 6×7 105mm 1:2.4

 このレンズ、初期のものは屈折率を上げるためにガラスに酸化トリウムが添加されている、いわゆる「アトムレンズ」というのは有名な話ですが、私の持っているレンズがそれに該当するのかどうか、よくわかりません。アトムレンズは経年で黄変するといわれていますが、私のレンズは目視する限り、黄変は認められません。1970年代後半をもってアトムレンズは終焉を迎えたという話しもあるので、たぶん私のレンズは放射線は出していないと思われます。
 余談ですが、数年前までPENTAX6x7 SHIFT 75mmというレンズを持っていましたが、このレンズはかなり黄変しており、カラーポジにはっきりと影響が出るほどでした。このレンズは製造年からしてアトムレンズではないと思うのですが、あまり出番がなかったので手放してしまいました。

レンズの主な仕様

 レンズの仕様は以下の通りです(リコーイメージング株式会社 公式HPより引用)。
   画角      : 46度
   レンズ構成枚数 : 5群6枚
   最小絞り    : 22
   最短撮影距離  : 1.0m
   フィルター径  : 67mm
   最大径x長さ  : 91.5mm × 60mm
   重さ      : 590g

 SMC TAKUMAR 6×7 105mm、見かけは小ぶりですが持った時にズシッとした重さを感じます(カタログ上は590gとなっています)。鏡胴が金属製ということもあるのでしょうが、明るくするために大口径のレンズを使っていることも重さの理由かもしれません。このレンズをPENTAX67に装着すると、絶妙なバランスを保っているように感じます。カメラとレンズで総重量が2.5kg近くにもなるので確かに重いのですが、このバランスのせいなのか、実際の重量ほどには感じないといったところでしょうか。
 ヘリコイドも適度の重さがあり、35mmカメラ用のレンズに比べるとヘリコイドは重いと思うのですが、重量級のカメラに対してスカスカと動いてしまうようなことがありません。

SMC TAKUMAR6×7 105mm の写りと作例

 個人的には非常に素直な写りのする素晴らしいレンズだと思っています。ガウスタイプのレンズは歪曲収差をおさえることができるといわれていますが、このレンズもダブルガウス構成になっており、風景が主な被写体の私にとって気になるような収差はほとんど見られません。開放で撮った際、被写体によってはごくまれに周辺部でふわっとしたような写りに感じられることがあります。ポジをルーペで見てみるとコマ収差が若干残っているような感じもしますが、詳しいことはわかりません。

 シャープな写りをしますがカリカリとした硬さはなく、やわらかさを持ったシャープさとでも言ったらよいのか、それが画の立体感を生み出しているように思えます。そして、46°という画角は変に誇張することなく、ごく自然に風景を切り取ってくれるように感じます。画角は35mmカメラに50mmレンズをつけた時とほぼ同じとはいえ、焦点距離は約2倍の105mmあるわけですから、当然ぼけ方も50mmレンズのそれとは異なりますので、やはり中判カメラならではの画が生み出されます。

 下の写真は福島県で偶然見つけた水芭蕉の群落です。小雨が降っていて、奥の方には霧が立ち込めています。写真の良し悪しはともかく、見事な描写をしてくれていると思います。

水芭蕉群落  PENTAX67 SMC TAKUMAR 6×7 105mm 1:2.4 F16 1s Velvia50

 PENTAX67用の純正レンズはこれを含めて全部で11本そろえていますが、このレンズ、出番の多さでは3本の指に入ります。

余談

 写りには関係ありませんが、私はTAKUMARレンズの平目ローレット加工されたデザインのヘリコイドが好きです。しかし、PENTAXになってからはあや目ローレットになってしまいました。しかも金属ローレット加工ではなく、ゴムのような材質のリングをはめ込んであるだけなので、質感も高級感も失われてしまっています。

(2020.7.26)

#ペンタックス67 #PENTAX67 #レンズ描写