第201話 アドックスADOXのモノクロフィルム CHS 100Ⅱの使用感とリバーサル現像

 アドックスADOXという会社はフィルムや印画紙、現像液などを製造するドイツの企業で、世界で初めてX線用写真乾板を開発した企業として有名ですが、現在のアドックスは「アドックス・フォトヴェルケ」という事業会社が継承しており、創業時の会社とは異なるようです。
 アドックスのフィルムを使った経験はあまり多くないのですが、ずいぶん前にCHS100というモノクロフィルムを使ったことがありました。しかし、そのフィルムも2012年ごろに製造が終了になってしまい、その後、後継となるCHS100 Ⅱというフィルムが発売されたのですが、私は使ったことがありませんでした。
 今回、比較的良好な評価が多くみられるCHS100 Ⅱを使ってみました。

アドックスのオルソパンクロマチックフィルム

 外箱はなく、黒いフィルムのケースには「MADE IN GERMANY」と書かれています。ベルリンに工場があるようで、同社のホームページを見ると、「2006年、ADOX工場は1980年代の廃墟となった軍用ランドリーの敷地内に建設を開始しました。多くの研究、生産、製菓機械は、アグファ、フォルテ、コニカなどの倒産した写真工場から救出されました。」と書かれています。日本のコニカも支援をしていたようです。

 オルソパンクロマチックということなので、フィルムとしてパンクロマチックに分類されつつも、赤色光に対する感度低減の性質を持っているということなのでしょう。
 特性について少し調べてみたところ、データシートを見るとおよそ660nmから上の赤色光には反応しないようです。
 フィルムの素材は透明なPETベースが採用されているとのこと、また、2層のハレーション防止層が設けられているなど、CHS100からはいろいろと改良がくわえられている感じです。
 ISO感度は公称値の100に忠実とのことで、現像において80~125まで適応可能なようです。解像力は100本/mmで、CHS100に比べるとずいぶんよくなっているようですが、特別高いというわけではなく標準的な解像度ではないかと思います。

 今回使用したのはブローニーの120サイズフィルムです。1本1,600円ほどで購入しました。一般的なISO-100のフィルムに比べると少しお高めです。

現像に関するデータ

 このフィルムの現像はコダックのD-76やイルフォードのD-11など一般に出回っている多くの現像液が使用可能ですが、今回はAdox Adonal現像液を使用しました。
 実際の現像条件は以下の通りです。

  ・現像液 : Adox Adonal
  ・希釈 : 1 + 50 (原液1に対して水50)
  ・温度 : 20度
  ・現像時間 : 12.5分
  ・撹拌 : 最初に30秒、その後60秒ごとに2回倒立撹拌
  ・停止 : 60秒
  ・定着 : 7分
  ・水洗 : 10分

 使用した現像タンクはパターソンのPTP115というモデルで、必要な現像液の量は約500mlです。Adox Adonalの原液10mlと水500mlを合わせて510mlの現像液を調合しました。水は精製水を使うのが望ましいのですが、いつもながら水道水を5分ほど煮沸し、冷ましたものを使っています。
 液温が下がらないように深めのバットに水を張り、その中に電熱器を入れて20℃を保つようにして、そこに現像タンクを入れておきました。
 なお、停止液は酢酸、定着液はスーパーフジックスLと、いずれも富士フイルムの製品を使いました。

 データシートによるとフィルムのベース厚みは0.1mmとのことで、イルフォードのDELTA100と比べるとわずかに薄い印象がありますが、柔らかすぎず程よい硬さといった感じです。
 ただし、乾燥後のカールを防ぐ対策が施されているとのことですが、結構カールします。

アドックス CHS 100 Ⅱの作例

 今回の撮影に使用したカメラはMamiya 6 MF、使用したレンズは75mmです。撮影した中から4枚の写真をご紹介します。いずれも哲学堂公園(東京都中野区)とその周辺で撮影したものです。

 まず1枚目は、哲学堂公園にある四聖堂と呼ばれる建物を撮影したものです。

 周囲にある木々からの木漏れ日が蔀戸のごく一部だけに差し込んでいるところを撮りました。ハイライト部分が白飛びしすぎないよう、露出はおさえ気味にしています。
 コントラストが高い感じはなくて、全体的になだらかできれいな階調で表現されているように思います。シャドー部もつぶれすぎず柔らかな感じを受けます。
 解像度も問題のないレベルだと思いますが、粒状感が目立つように思います。

 写真の中央付近、木漏れ日の差している部分を拡大したのが下の写真です。

 やはり粒状性は粗くて、ざらざらした感じがしますが、木目がしっかりと表現されていたり、蝶番の金属の質感なども良く出ていると思います。コントラストが高すぎて平面的になってしまうようなこともなく、非常に立体感のある写りではないかと思います。

 2枚目は同じく哲学堂公園に設置されている像を撮影した写真です。

 背後は日差しが当たっている雑木林ですが、手前の像には直接光が当たっていない状況です。1枚目の写真とは反対に、像のディテールがわかるように露出は多めにかけています。
 像全体がなだらかな階調で表現されていると思います。特に像の下半分、徐々に黒く落ち込んでいくあたりも綺麗で、黒い中にもわずかな色の違いが感じられます。また、このような状況だと粒状感もあまり気になることはく、綺麗なトーンが出ていると思います。

 3枚目は哲学堂公園近くにあるお寺で撮影したものです。

 入口の山門近くにたくさんのお地蔵さまが並んでいました。お地蔵様の正面から陽が差している状態で、お地蔵様の背後には黒い影がくっきりと出ています。
 ハイライト部分が多めになるように露出はオーバー気味にして撮影していますが、石の質感などが損なわれることなく表現されていると思います。掲載した写真ではわかりにくいかもしれませんが、特に中央左側のお地蔵様の石のザラザラした感じがよくわかります。解像感も申し分ない感じです。
 お地蔵様の前掛けはかなり白飛びしていますが、ペタッとした感じにはならず、布のウェーブがわかるので立体感が感じられます。

 もう一枚、同じ場所で撮影したのがこちらの写真です。

 五重塔の軒下を撮影したもので、直射日光はあたっていないので全体的にコントラストは低めの状態です。斗栱の木の質感がとてもきれいに出ていると思います。うまく表現できないのですが、エッジが効きすぎておらず、シャープさがあるにもかかわらず全体的に柔らかな感じがします。
 若干、粒状性の粗さは感じますが、このようなシチュエーションでは効果的に働いているのではないかと思います。

リバーサル現像に関するデータ

 フィルムベースに透明なPET素材を採用しておりリバーサル現像にも向いているとのことでしたので、2本目はリバーサル現像してみました。
 現像時間を少し変更した程度で、基本的にはこれまで行なってきた現像とほぼ同じ条件で行ないました。
 使用した現像液類は以下の通りです。

 ・第1現像液: シルバークロームデベロッパー 100ml + 水 400ml (希釈 1+4)
 ・漂泊液: 過マンガン酸カリウム水溶液 20ml + 水 230ml と、硫酸水溶液(10%) 25ml + 水 225ml の混合
 ・洗浄液: ピロ亜硫酸ナトリウム 12.5g を水 500mlに溶解
 ・第2現像液:第1現像液を使用
 ・定着液: スーパーフジックス定着液 170ml + 水 330ml

 第1現像時間は標準的なネガ現像時間から換算して9分(20℃)としました。
 その他の工程と時間は以下の通りです。

  ・第1現像: 9分
  ・水洗: 5分
  ・漂泊: 5分
  ・水洗: 1分
  ・洗浄: 3分
  ・水洗: 1分
  ・再露光: 片面3分
  ・第2現像: 3分
  ・水洗: 1分
  ・定着: 7分
  ・予備水洗: 1分
  ・水洗促進: 1分
  ・水洗: 20分
  ・水滴防止: 30秒

リバーサル現像した作例

 フィルムベースが透明ということもあり、とてもすっきりとしたヌケの良い綺麗なポジが得られました。黒の締まりも良く、好感の持てるポジではないかと思っています。
 こちらは東京都庁の都民広場で撮影したもので、使用したカメラは同じくMamiya 6 MF で、レンズは75mmです。都民広場にはいくつものオブジェ(像)が設置されていて、試し撮りにはありがたい場所です。

 まず1枚目、「犬の唄」というタイトルの像です。

 午前中なので像のあたりには陽が差し込んでいません。全体的にコントラストは低めな状態です。
 ネガ現像と同様、ディテールもしっかりと出ており、なだらかな階調で表現されていると思います。使用した現像液が違うので単純比較はできませんが粒状感はあまり気になりません。もしかしたら被写体や背景のせいかも知れません。像が非常に立体的に感じるのはネガ現像と同じです。

 もう一枚、同じく都民広場にある「はばたき」という像を撮ったものです。

 こちらは直射日光が差している明るいビル群や空をバックに、シルエット気味に撮っています。像が真っ黒に塗りつぶされないギリギリのところまで露出をかけています。
 髪の毛や纏っているドレスの細部が綺麗に表現されており、ハイコントラストながらカリッとした硬さは感じられません。このような状況でも描写が乱れないのは及第点だと思います。

 なお、ポジ原版はほぼ透明ですが、わずかに薄い緑色がかかっている感じです。

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 多少の粒状感はあるものの、それがかえってフィルムらしさを感じさせるフィルではないかと思います。解像力も申し分なく、何と言ってもなだらかな階調表現と立体感が持ち前のフィルムという印象です。
 ローライのRPX25やアグファのCOPEX RAPID 50のようなエッジの効いたキリっとした描写ではありませんが、とても豊かな表現をしてくれるという感じです。シャドー部もべたっとつぶれることもなく、ハイライト部も極端に白飛びすることもなく、細部にわたって表現してくれるフィルムと言ったらよいでしょうか。
 ISO感度もほぼ正確に100という値が出ていると思われ、安心して使えると思います。
 また、リバーサル現像でも非常に良い結果が得られており、いろいろな使い方ができるフィルムでもあると思います。もちろん好みもあるでしょうが、スナップやポートレートに向いているかも知れません。

 なお、別の現像液を使用すると結果も変わってくると思いますので、近いうちに試してみたいと思います。

(2025.12.21)

#Mamiya #リバーサル現像 #ADOX #CHS100II #ロジナール #Rodinal

第196話 アグファ AGFA COPEX RAPID 50 モノクロフィルムのリバーサル現像

 第183話でアグファのCOPEX RAPID 50というモノクロフィルムについて書きました。もともとはマイクロフィルムとして使われてきたというだけあって非常にコントラストの高いフィルムであり、一般の撮影用にはあまり向いていないという感想を持ちました。そのため、その後は使うこともなかったのですが、メリハリの効いた描写がとても印象的で、このフィルムをリバーサル現像したらどんな感じに仕上がるのだろうという思いがむくむくと頭を持ち上げてきました。
 ということで、アグファのモノクロフィルム、COPEX RAPID 50をリバーサル現像してみました。

COPEX RAPID 50 を使っての撮影

 今回使用したフィルムはブローニー判の120サイズです。2025年7月1日現在、1本1,600円前後で購入することができます。以前購入した時は1,300円ほどでしたから、この半年ほどの間で2割以上、値上がりしているようです。

 使用したカメラはPENTAX 67Ⅱ、使用したレンズはPENTAX 67用の75mm、105mm、200mm、300mmで、撮影時のISO感度は表記通り、ISO50としました。
 67判のカメラで使用すると10枚の撮影が可能で、被写体をいろいろ選択するほどたくさんは撮れないのですが、できるだけ異なるシチュエーションを選んでみました。

リバーサル現像のプロセス

 現像プロセスはイルフォードが推奨する手順に準拠していますが、使用する薬剤や処理時間等は適宜変更を加えています。
 実際に使用した薬剤は以下の通りです。

 【第1現像液】
  コダックのD-76に準拠して自家調合した薬剤を使用しました。
  今回の現像で使用する現像タンクはパターソンのPTP115というタイプで、これに必要な現像液の量は500mlです。したがって、調合した薬剤とその量は以下の通りです。

  無水亜硫酸ソーダ : 50g
  硼砂 : 1g
  メトールサン : 1g
  ハイドロキノン : 2.5g

  これらを500mlの水に溶解して現像液を作りました。これを希釈せずに使用します。
  なお、このD-76に準拠した現像液の調合についてご興味のある方は、下記のページをご覧ください。

  第187話 モノクロフィルム現像用「D-76準拠」現像液の自家調合

 【漂泊液】

  漂泊液は以下の薬剤を使用しています。

  過マンガン酸カリウム水溶液 20ml + 水 230ml
  硫酸水溶液(10%) 25ml + 水 225ml

  これらを混合して500mlの漂泊液を作ります。

 【洗浄液】

  洗浄液の調合は以下の通りです。

  ピロ亜硫酸ナトリウム 12.5gを500mlの水に溶解します。

 【第2現像液】

  本来、第2現像液は第1現像液よりも希釈度を高めたもの、つまり濃度の薄いものを使用するように推奨されていますが、今回は第1現像液をそのまま使用し、現像時間で調整をすることとしました。

 【定着液】

  今回使用した定着液は以下の通りです。

  フジックス定着液 170ml + 水 330ml

 こうして調合したそれぞれの薬剤は1,000ml用のビーカーに入れ、それを水温20℃に保たれたバットの中にいれ、液温が20℃になるようにしています。なお、現像液は液温が変わると現像時間に影響が出るので、できるだけ正確に20℃を保つようにしたいのですが、それ以外の薬剤は多少の温度の上下があっても問題はないと思います。

 次に、実際の現像プロセスですが、以下のような手順で行ないました。

  ・第1現像: 5分20秒 最初の1分は連続倒立撹拌、以後、1分ごとに5秒の倒立撹拌
  ・水洗: 流水で5分
  ・漂泊: 5分 連続撹拌
  ・水洗: 流水で1分 漂泊液の紫色が消えればOK
  ・洗浄: 3分 連続攪拌
  ・水洗: 流水で1分
  ・再露光: 片面4分 (2分ずつ2回)
  ・第2現像: 3分 最初の1分は連続倒立撹拌、以後、1分ごとに5秒の倒立撹拌
  ・水洗: 流水で1分
  ・定着: 3分 最初の30秒は連続撹拌、以後、30秒ごとに5秒の撹拌
  ・予備水洗: 流水で1分
  ・水洗促進: 1分 連続撹拌
  ・水洗: 流水で20分
  ・水滴防止: 30秒

 第1現像、第2現像ともに倒立撹拌を行なっていますが、必ずしも倒立撹拌である必要はないと思います。ただし、倒立撹拌の方が現像液の濃度のムラはできにくいのではないかと思われます。
 漂泊と洗浄はあまり強い水流を起こし過ぎると銀粒子が剥離してしまう可能性があるので、倒立撹拌は避けた方が良いかもしれません。
 第2露光は一般的な家庭用の蛍光灯(40~60W)を使用した場合、ISO100フィルムで片面1~2分程度です。今回使用したフィルムはISO50なので片面4分としました。この時間が短すぎると残ったハロゲン化銀が完全に露光しきれず、モヤっとしたような仕上がりになってしまうことがありますので、多少長めに露光した方が無難です。
 また、最後の水洗時間が短すぎるとフィルムが黄変してしまうことがあるので、長めに確実に行なうことが望ましいと思います。

 水滴防止液にくぐらせた後は埃の少ない場所につるして自然乾燥させます。フィルムの水滴をスポンジなどでふき取る方もいらっしゃいますが、私はほったらかし乾燥です。

COPEX RAPID 50 リバーサル現像した作例

 このフィルムをリバーサル現像したのは初めてですが、仕上がったポジ原版を見ての第一印象は見事に引き締まった黒が出ているということです。ネガ原版を見ても黒が引き締まっているであろうことは容易に想像できるのですが、実際にポジを見てみるとそれを視覚で確認することができます。
 ポジ原版をライトボックスに乗せた状態はこんな感じです。

 フィルムのカールが強くてクルンとなってしまうのでスリーブに入れての撮影です。そのため、若干画質が悪いですが、締まりの良い感じがわかると思います。

 まず1枚目は、空き地に放置された農機具のようなものを撮ってみました。

 この日は薄曇りでそれほどコントラストが高い状態ではないのですが、やはり、このフィルムで撮ると高コントラストな仕上がりになります。画下側のシロツメクサの葉っぱや上側の杉のような樹の葉っぱなどは比較的中間調として表現されていますが、農機具のボディの白い部分などは真っ白になっています。一方、右上の建物の窓や農機具の下で陰になっているところなどは黒くつぶれていて、全体として目がちかちかするような高コントラストな画像です。
 掲載した写真は解像度を落としてあるのでわかりにくいと思いますが、細かなところまでくっきりと描写されていて解像度の高さを感じます。

 右下のあたりを切り出したのが下の写真です。

 シロツメクサの葉脈や農機具のパーツに刻印された文字などもくっきりと認識できるので、十分な解像度が出ていると思います。また、粒状感もあまり感じられません。

 2枚目は、神社の参道にあった石灯篭です。

 1枚目の写真よりもさらにコントラスが低い状態です。実際にはこの写真で見るよりもはるかに暗い感じの場所でしたが、それでもコントラストが高く表現されています。石灯篭の明るい部分は飛び気味ですが、石の質感はしっかりと表現されていて、やはりこのフィルムの解像度の高さがうかがえます。

 次は桜の葉っぱを曇り空に抜いて撮影したものです。

 中間調がほとんどない状態ですが、それでも枝の先の方で重なりのない葉っぱは中間調が残っています。葉脈もしっかりと確認することができます。
 虫に食べられて葉っぱに空いた穴が面白いパターンを作り出していました。
 このようなシチュエーションでも、一般的なモノクロフィルムを用いればもっと中間調が豊かに出て柔らかな感じに仕上がると思われます。

 最後はテーブルフォトとして、室内でシーサーの置物を撮った写真です。

 余計なものが入り込まないように黒い背景紙を使っており、写真の左方向から照明を当てていますが、ちょっと照明が強すぎたようです。シーサーの体の部分の質感が損なわれており、露出ミスといったところです。
 その分、彫りが深く見えるかもしれませんが、間接照明にすべきだったと思います。

 前回、ネガ現像した際に用いた現像液はSilverSaltでしたが、今回はD-76準拠の現像液で、しかもリバーサル現像なので単純に比較することはできませんが、やはりSilverSalt現像液の方が綺麗な描写をしていると感じます。
 また、撮影時の露光条件は前回と同じですが、ハイライト部の飛び具合が今回の方が明らかに強い感じです。これは撮影時の条件の差ではなく、現像の違いではないかと思われます。
 白が強く出過ぎているということは、第1現像の時間が長すぎたことが考えられます。つまり、第1現像ではネガ画像が生成されますがこれが強く出過ぎてしまい、漂泊で洗い流されてしまったため、白飛びが強く出たと思われます。第1現像の時間を5分20秒と設定しましたが、4分50秒ぐらいが妥当だったかもしれません。

 ただし、リバーサル現像してもこのフィルムらしい高コントラストの像は十分に保たれており、大きな品質の低下も感じられませんでした。
 黒と白だけで構成されたパターン的な描写を狙うのであれば効果的なフィルムではあると思いますが、やはり景色という視点からすると扱いの難しいフィルムです。

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 今回使用したCOPEX RAPID 50に限らず、モノクロフィルムをリバーサル現像するとポジ原版が得られるので、ライトボックスなどでそのまま鑑賞することができます。ネガを見るのとは全く違った感覚です。
 しかし、リバーサル現像してしまうと通常の紙焼き(プリント)はできなくなってしまいます。スキャナなどで読み取ってデータ化する分には問題ありませんが、紙焼きするのであれば通常のネガ現像にしておくべきで、私も時々、テスト的にリバーサル現像する程度です。
 また、スライドプロジェクターのような機器で大きく投影するにはポジ原版が必要ですが、残念ながら私はそのような機器を持ち合わせていません。スクリーンに大きく投影されれば、昔のモノクロ映画を見ているような感じで感動するかもしれません。

 なお、機会があればSilverSaltを使ってリバーサル現像してみたいと思います。

(2025.7.5)

#AGFA #COPEX_RAPID #D76 #アグファ #モノクロフィルム #リバーサル現像

第143話 ローライ Rollei RPX25 超微粒子、高解像度、高コントラストのモノクロフィルム

 私が使っているモノクロフィルムの中でいちばん使用頻度が高いのがイルフォードのDELTA100、次いで富士フィルムのACROSⅡ、そして、ローライのRPX25です。それ以外のフィルムはお試しに使ってみる程度で、常用しているのはこの3種類です。
 RPX25はDELTA100やACROSⅡに比べると使用頻度は低いのですが、カリッと締まった描写が気に入っています。ISO感度が低いので使いにくいところもありますが、他のフィルムとは一線を画したようなところがあるフィルムだと思っています。

低感度のパンクロマチックモノクロフィルム

 ISO25という低感度フィルムです。世の中にはISO6とかISO12とかの超低感度フィルムも存在するようですが、ブローニーサイズの現行品で普通に手に入るフィルムとしては、このRPX25が最も低感度ではないかと思います。かつて、コダックからISO25のコダクロームKMとPKMという低感度リバーサルフィルムが販売されていましたが、RPX25を見ているとそれを思い出します。
 本来が低感度フィルムなのでEI25として使用するのが一般的だと思いますが、現像液によってはEI320にも対応可能なようです。私はEI320どころかEI50としても使ったことがないので、どのような写りになるのか知りませんが、のっぴきならない事情があったり、あるいは特別な表現を求めるとき以外は不必要にEIを高くすることもないと思います。

 このフィルムを使って私が撮影するのはほとんどが風景です。晴天時の日中に絞りを開いての撮影であれば手持ちでもいけますが、少し薄暗いときや絞り込んでの撮影、または夜景の撮影時などは三脚が必須です。シャッター速度はどうしても遅くなりがちなので、被写体ブレを起こしたくないようなときは気を使います。

 ちなみに、RPX25の120サイズのフィルム、ヨドバシカメラでは1本1,900円ですが、通販のかわうそ商店では1本1,090円です。さらに10本セットだと9,900円なので、1本あたり990円となります(いずれも2023年3月24日時点の税込み価格です)。フィルムが高騰している現在、10本セットはいえ、1本あたりが1,000円を切っているというのはお安いのではないかと思います。

コダック Kodak のD-76でネガ現像

 現像液はローライのスーパーグレイン SUPER GRAIN が望ましいのかもしれませんが、普段使っているコダックのD-76を使用しました。EI25の場合、1+1の希釈で20℃、8分となっていますので、それに従っています。このところ、暖かさを通り越して初夏のような陽気になっており、気温も20度近くまで上がっているので、現像液を温めたり冷やしたりという手間が省け、現像するにはありがたい気候です。

 コダックの薬品の国内販売が終了してしまったようですが、アマゾンなどではまだ在庫があるのか、購入ができるようです。私は販売終了のアナウンスがあった際に5袋ほど買い置きしておきましたが、そろそろ底をつきそうです。海外では販売されているようなので個人輸入という手もありますが、私の場合、それほどD-76に拘っているわけではないので、なくなったら別の現像液を使うことになりそうです。

黒が締まった硬調な描写が特徴

 先日、隅田川に架かる橋を撮りに出かけた際、RPX25を2本だけ持って行きました。その時に撮った写真を何枚かご紹介します。
 いずれも大判カメラに67判のロールフィルムホルダーを着けて撮影しています。

 まず1枚目の写真ですが、蔵前橋の下から撮影したものです。

▲Linhof MasterTechnika 45 FUJINON SWD65mm 1:5.6 F22 2s

 この日は良く晴れていて、橋の下から見ると川面に反射した光が橋げたを照らしていて、無機質の鉄骨ならではのコントラストになっていました。日中なので外はかなり明るく、背景はほとんど白飛びしています。
 橋脚からアーチ型に伸びた鉄骨が放射状に広がって見えるように短焦点レンズを使っています。もちろん、実際にはこんな風に放射状になっているわけではなく、同じ間隔を保ちながら平行に並んでいます。もう少し短めのレンズを使って真上まで入れた方が迫力が出たかも知れません。

 橋げたの下の部分は反射した光で明るいのですが奥の方までは光が届いていません。しかし、奥の方が黒くつぶれているかというとそういうわけでもなく、橋げたの構造がわかるような画像が記録されています。黒に対しての許容度が高い感じを受けます。
 また、中間調も綺麗に表現されていて、黒か白かに二分されてしまうのではなく、なだらかなグラデーションになっています。全体としてはカリッとした感じを受ける描写ですが、豊かな階調も損なわれることなく表現されていて、硬調な中にも柔らかさを感じます。

 次は、橋の下から係留されている釣船を撮影した写真です。

▲Linhof MasterTechnika 45 FUJINON W210mm 1:5.6 F8 1/250

 太陽の位置はほぼ正面上方にあり逆光状態ですが、上部に橋げたの一部を入れることで明るい空をカットして、光が直接入るのを防いでいます。また、遠くにある釣船を注視しているような効果を狙ってみました。
 川面は光の反射でとても明るいので、陽があたっていない釣船とのコントラストが高く、長めの焦点距離のレンズで撮っていることもあり、立体感が出ていると思います。釣船の右舷側はかなり暗いのですが、つぶれてしまうことなく描写されています。

 個人的には水面の反射で輝いている左舷の金属の質感が気にいっています。

 3枚目の写真は、橋げたの一部だけを撮影したものです。

▲Linhof MasterTechnika 45 FUJINON W210mm 1:5.6 F16 2s

 水面の反射によって、橋げたの鉄骨の一部だけが明るく照らされている状況です。塗装がされているので、実際にはこんなに輝いては見えないのですが、光が当たっていないところとのコントラストと相まってモノクロならではの描写です。大量に打たれたリベットの頭部がわずかに光っているところなどに構造物の重厚感が感じられます。
 何度も塗料の塗り重ねがされてきたのだと思いますが、白く輝いている中にも表面の凹凸がわかりますし、暗部のディテールも良く出ていて、このフィルムのポテンシャルの高さを感じます。

 この日は隅田川に架かる橋の夜景を撮るのが目的で出かけたので、このフィルムでも数枚、夜景を撮影してみました。
 そのうちの1枚が下の写真です。

 日没して1時間ほど経った午後7時ごろに撮影したものです。いわゆるマジックアワーと呼ばれる時間帯は過ぎて、既に空は真っ暗です。
 このような状況において、低感度のフィルムで撮影しても弱い光はなかなか写り込んでくれません。いくら長時間露光をしても弱い光には反応してれないので、極端な言い方をすると、明るいところと暗いところだけで構成された画になってしまいがちです。
 ライトアップされた橋の欄干やアーチ、および水面への映り込みは明るいのですが、それ以外はほぼ黒といった状態で、まるで二値化された画像のようです。非常に硬い感じの描写になっていますが、これはこれで独特の趣が感じられます。

見事にヌケの良いポジが得られるリバーサル現像

 フィルム2本を撮影してきたので、1本をリバーサル現像してみました。
 RPX25は長年使ってきましたが、これまでこのフィルムでリバーサル現像をしたことは一度もなく、今回、初の試みです。
 RPX25のリバーサル現像に関するデータがないので、通常のネガ現像のデータをもとに現像時間を換算してみました。
 実際の現像時間については以下の通りです。

  第1現像 : 8分45秒
  漂白 : 5分
  洗浄 : 3分
  露光 : 片面1分
  第2現像 : 3分
  定着 : 7分

 現像液はイルフォードのシルバークロームデベロッパーを1:4(水)に希釈して使用しました。

 現像後のポジ原版が下の写真です。

 スリーブに入れたポジをライトボックス上で撮影したものなので画質が良くありませんが、黒の締まり具合、ヌケの良さ、解像度の高さなどは感じていただけるのではないかと思います。

 右上のコマをスキャンしたのが下の写真です。

▲Linhof MasterTechnika 45 FUJINON SWD75mm 1:5.6 F22 1s

 こうしてスキャンして画像にしてしまうとネガ現像したものなのか、リバーサル現像したものなのかは判断がつきません。全体的に硬調な描写やしっかりと締まった黒、右の奥に見えるビルの中間調など、豊かな描写をしていると思います。金属の質感も良く出ていますが、橋脚の石の質感も見事です。

 現像の過程で大きな失敗をしなければ、ネガ現像だろうがリバーサル現像だろうが、解像度やコントラストの出方に違いはないと思われますが、リバーサル現像の方が工程が多い分、わずかな失敗でも積み重なって画質に影響を与える可能性はあります。ですので、あえてリバーサル現像をする理由もないのですが、やはり、現像後のポジをライトボックスで見た時の感動はひとしおです。
 イルフォードのDELTA100もヌケの良いポジを得られますが、もしかしたらRPX25の方が上を行っているかも知れません。

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 低感度フィルムなので多少の制約を受けることもありますが、高い解像度やコントラスト、超微粒子による緻密な描写など、魅力のあるフィルムであることは確かです。硬調な描写は見ていて気持ちの良いものですが、硬いだけではないのがこのフィルムの特性かも知れません。
 もともとコントラストの高いフィルムですが、モノクロ用のフィルター(Y2、YA3など)を装着するとさらに高コントラストになります。被写体によっては不自然になってしまうかも知れませんが、一つの表現手法でもあると思います。

 また、このフィルムは冷蔵庫などに入れておくことで長期保存も可能らしいので、買い置き向きかも知れません。

(2023.3.24)

#Rollei_RPX25 #Linhof_MasterTechnika #FUJINON #リバーサル現像 #蔵前橋

第97話 久しぶりのモノクロフィルムのリバーサル現像 イルフォード DELTA100

 ビューティーモデル1という骨董カメラの試し撮りの際、マミヤ6 MFにモノクロフィルムを入れて一緒に持っていきました。その時に撮った写真をリバーサル現像してみました。
 リバーサル現像は通常のネガ現像よりもプロセスが多くて手間がかかるのであまりやらないのですが、カラーリバーサルほど難しくはないし、リバーサルで見るモノクロも味わいがあるので、久しぶりにやってみました。

イルフォードの推奨プロセスで処理

 今回、撮影に使ったフィルムはイルフォードのDELTA100 PROFESSIONALです。シャープネスでキリッと締まった画像が得られるので、個人的には気に入っています。
 ということで、現像はイルフォードの推奨プロセスを参考に行ないました。イルフォードから提示されているプロセスは下記の通りです。

  1) 第一現像 : 20度 12分
  2) 水洗   : 20度 5分
  3) 漂白   : 20度 5分
  4) 水洗   : 20度 1分
  5) 洗浄   : 20度 2分
  6) 水洗   : 20度 30秒
  7) 再露光  : 片面30秒
  8) 第二現像 : 20度 6分
  9) 停止   : 20度 30秒
  10) 水洗   : 20度 30秒
  11) 定着   : 20度 5分
  12) 水洗   : 20度 10分
  13) 水滴防止 : 20度 30秒
  14) 乾燥

 なお、イルフォードの推奨プロセスには停止工程と水滴防止工程は記載されていませんが、これらは通常の現像でも行なう工程なので今回も入れています。

 現像液は「ブロモフェン」または「PQユニバーサル」が推奨となっていますが、手元になかったので今回はシルバークロームデベロッパーを使用しました。
 漂白液は過マンガン酸カリウム水溶液と希硫酸(硫酸水溶液)の混合液、洗浄液はピロ亜硫酸ナトリウム水溶液を使っており、これらはイルフォード推奨プロセスと同じです。
 また、定着液はシルバークロームラピッドフィクサーを使いました。

 全工程にわたり水温20度を保つというのは結構難しいので、いちばん影響のある第一現像だけは極力、20度に近い状態を保つように気をつけましたが、それ以外は±1~2度の変動があると思います。

黒が締まったイルフォードらしい描写

 リバーサル現像後のスリーブの写真です。ライトボックスにのせた状態で撮影しています(全12コマ中の9コマ)。

▲リバーサル現像後のスリーブ(ライトボックス上で撮影)

 モノクロフィルムを使うときはモノクロ用のフィルター(Y2とかYA3など)を装着することが多いのですが、今回はいずれも使用していません。
 コントラストもまずまずで、黒もイルフォードらしい感じが出ていると思います。

 下の写真は東京都庁の都民広場にある彫像「天に聞きく」です。

▲Mamiya 6 MF G 75mm 1:3.5 F5.6 1/30 DELTA100

 彫像にも建物にも陽があたっていないので全体的に軟調な感じがしますが、彫像のエッジは綺麗に出ているのではないかと思います。手振れが心配だったので絞りはF5.6で撮影していますが、もう一段くらい開いた方が良かったようです。

 次の写真は、新宿にある住友ビルの一階部分の天井です。屋根を支える鉄骨が描くラインが綺麗です。

▲Mamiya 6 MF G 50mm 1:4 F4 1/15 DELTA100

 屋内での撮影なのでコントラストはあまり高くありませんが、屋根から差し込む光で鉄骨に模様が描かれていますが、そこそこ綺麗に表現できていると思います。
 太陽が西に回り込んでこの屋根に光が差し込むと、よりアーティスティックな模様が浮かび上がるのではと想像します。

 さて、もう一枚は公園での一コマです。

▲Mamiya 6 MF G 75mm 1:3.5 F8 1/250 DELTA100

 斜光状態なのでコントラストが高めになっています。中央の地面は落ち葉が白く輝いており、飛び気味です。左右にある2本の木の幹は日陰になっていますが、ぎりぎりディテールが見て取れる感じです。

ネガ現像とリバーサル現像の比較

 同じフィルム(イルフォード DELTA100 PROFESSIONAL)で撮影し、普通にネガ現像したものとリバーサル現像したものとで違いがあるかということで、下の写真はネガ現像したものです。

▲Mamiya 6 MF G 50mm 1:4 F8 1/60 DELTA100

 電話ボックスを撮影したもので、同じ場所や同じ条件で撮影したわけではないので比較しにくいですが、ネガ現像したほうが黒の締まりが強いように感じます。光の条件が違うのでそう感じるのかもしれませんが、現像による影響もあるかも知れませんし、スキャナで読み取る際はネガ設定とポジ設定と異なりますので、その影響も考えられます。
 やはり、リバーサル現像の方が難しく、扱いを慎重にやらないと良い結果が出ないようです。

 参考に、リバーサル現像とネガ現像した写真の部分拡大を掲載しておきます。
 下の写真の1枚目がリバーサル現像(新宿住友ビル)の天井部分を拡大したもの、2枚目がネガ現像(電話ボックス)の自転車のハンドル部分を拡大したものです。

▲新宿住友ビルの写真の部分拡大
▲電話ボックスの写真の部分拡大

 粒状感やシャープネスなどに大きな違いは感じられません。

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 手間のかかるリバーサル現像ですが、スリーブをライトボックスで観賞できるのは便利です。それ以外にリバーサル現像するメリットはほとんど思いつかないのですが、いつもとは違うフィルムで撮影したような気持ちになれるので、気分転換にはなるかも知れません。

(2022年2月4日)

#イルフォード #ILFORD #モノクロフィルム #リバーサル現像