第202話 手放してしまったことを後悔しているカメラやレンズのあれこれ

富士フイルム TX-1 取扱説明書より転載
Contax Ⅱa 取扱説明書より転載

(2026.1.25)

#CONTAX #FUJINON #コンタックス #フジノン #富士フイルム

第201話 アドックスADOXのモノクロフィルム CHS 100Ⅱの使用感とリバーサル現像

 アドックスADOXという会社はフィルムや印画紙、現像液などを製造するドイツの企業で、世界で初めてX線用写真乾板を開発した企業として有名ですが、現在のアドックスは「アドックス・フォトヴェルケ」という事業会社が継承しており、創業時の会社とは異なるようです。
 アドックスのフィルムを使った経験はあまり多くないのですが、ずいぶん前にCHS100というモノクロフィルムを使ったことがありました。しかし、そのフィルムも2012年ごろに製造が終了になってしまい、その後、後継となるCHS100 Ⅱというフィルムが発売されたのですが、私は使ったことがありませんでした。
 今回、比較的良好な評価が多くみられるCHS100 Ⅱを使ってみました。

アドックスのオルソパンクロマチックフィルム

 外箱はなく、黒いフィルムのケースには「MADE IN GERMANY」と書かれています。ベルリンに工場があるようで、同社のホームページを見ると、「2006年、ADOX工場は1980年代の廃墟となった軍用ランドリーの敷地内に建設を開始しました。多くの研究、生産、製菓機械は、アグファ、フォルテ、コニカなどの倒産した写真工場から救出されました。」と書かれています。日本のコニカも支援をしていたようです。

 オルソパンクロマチックということなので、フィルムとしてパンクロマチックに分類されつつも、赤色光に対する感度低減の性質を持っているということなのでしょう。
 特性について少し調べてみたところ、データシートを見るとおよそ660nmから上の赤色光には反応しないようです。
 フィルムの素材は透明なPETベースが採用されているとのこと、また、2層のハレーション防止層が設けられているなど、CHS100からはいろいろと改良がくわえられている感じです。
 ISO感度は公称値の100に忠実とのことで、現像において80~125まで適応可能なようです。解像力は100本/mmで、CHS100に比べるとずいぶんよくなっているようですが、特別高いというわけではなく標準的な解像度ではないかと思います。

 今回使用したのはブローニーの120サイズフィルムです。1本1,600円ほどで購入しました。一般的なISO-100のフィルムに比べると少しお高めです。

現像に関するデータ

 このフィルムの現像はコダックのD-76やイルフォードのD-11など一般に出回っている多くの現像液が使用可能ですが、今回はAdox Adonal現像液を使用しました。
 実際の現像条件は以下の通りです。

  ・現像液 : Adox Adonal
  ・希釈 : 1 + 50 (原液1に対して水50)
  ・温度 : 20度
  ・現像時間 : 12.5分
  ・撹拌 : 最初に30秒、その後60秒ごとに2回倒立撹拌
  ・停止 : 60秒
  ・定着 : 7分
  ・水洗 : 10分

 使用した現像タンクはパターソンのPTP115というモデルで、必要な現像液の量は約500mlです。Adox Adonalの原液10mlと水500mlを合わせて510mlの現像液を調合しました。水は精製水を使うのが望ましいのですが、いつもながら水道水を5分ほど煮沸し、冷ましたものを使っています。
 液温が下がらないように深めのバットに水を張り、その中に電熱器を入れて20℃を保つようにして、そこに現像タンクを入れておきました。
 なお、停止液は酢酸、定着液はスーパーフジックスLと、いずれも富士フイルムの製品を使いました。

 データシートによるとフィルムのベース厚みは0.1mmとのことで、イルフォードのDELTA100と比べるとわずかに薄い印象がありますが、柔らかすぎず程よい硬さといった感じです。
 ただし、乾燥後のカールを防ぐ対策が施されているとのことですが、結構カールします。

アドックス CHS 100 Ⅱの作例

 今回の撮影に使用したカメラはMamiya 6 MF、使用したレンズは75mmです。撮影した中から4枚の写真をご紹介します。いずれも哲学堂公園(東京都中野区)とその周辺で撮影したものです。

 まず1枚目は、哲学堂公園にある四聖堂と呼ばれる建物を撮影したものです。

 周囲にある木々からの木漏れ日が蔀戸のごく一部だけに差し込んでいるところを撮りました。ハイライト部分が白飛びしすぎないよう、露出はおさえ気味にしています。
 コントラストが高い感じはなくて、全体的になだらかできれいな階調で表現されているように思います。シャドー部もつぶれすぎず柔らかな感じを受けます。
 解像度も問題のないレベルだと思いますが、粒状感が目立つように思います。

 写真の中央付近、木漏れ日の差している部分を拡大したのが下の写真です。

 やはり粒状性は粗くて、ざらざらした感じがしますが、木目がしっかりと表現されていたり、蝶番の金属の質感なども良く出ていると思います。コントラストが高すぎて平面的になってしまうようなこともなく、非常に立体感のある写りではないかと思います。

 2枚目は同じく哲学堂公園に設置されている像を撮影した写真です。

 背後は日差しが当たっている雑木林ですが、手前の像には直接光が当たっていない状況です。1枚目の写真とは反対に、像のディテールがわかるように露出は多めにかけています。
 像全体がなだらかな階調で表現されていると思います。特に像の下半分、徐々に黒く落ち込んでいくあたりも綺麗で、黒い中にもわずかな色の違いが感じられます。また、このような状況だと粒状感もあまり気になることはく、綺麗なトーンが出ていると思います。

 3枚目は哲学堂公園近くにあるお寺で撮影したものです。

 入口の山門近くにたくさんのお地蔵さまが並んでいました。お地蔵様の正面から陽が差している状態で、お地蔵様の背後には黒い影がくっきりと出ています。
 ハイライト部分が多めになるように露出はオーバー気味にして撮影していますが、石の質感などが損なわれることなく表現されていると思います。掲載した写真ではわかりにくいかもしれませんが、特に中央左側のお地蔵様の石のザラザラした感じがよくわかります。解像感も申し分ない感じです。
 お地蔵様の前掛けはかなり白飛びしていますが、ペタッとした感じにはならず、布のウェーブがわかるので立体感が感じられます。

 もう一枚、同じ場所で撮影したのがこちらの写真です。

 五重塔の軒下を撮影したもので、直射日光はあたっていないので全体的にコントラストは低めの状態です。斗栱の木の質感がとてもきれいに出ていると思います。うまく表現できないのですが、エッジが効きすぎておらず、シャープさがあるにもかかわらず全体的に柔らかな感じがします。
 若干、粒状性の粗さは感じますが、このようなシチュエーションでは効果的に働いているのではないかと思います。

リバーサル現像に関するデータ

 フィルムベースに透明なPET素材を採用しておりリバーサル現像にも向いているとのことでしたので、2本目はリバーサル現像してみました。
 現像時間を少し変更した程度で、基本的にはこれまで行なってきた現像とほぼ同じ条件で行ないました。
 使用した現像液類は以下の通りです。

 ・第1現像液: シルバークロームデベロッパー 100ml + 水 400ml (希釈 1+4)
 ・漂泊液: 過マンガン酸カリウム水溶液 20ml + 水 230ml と、硫酸水溶液(10%) 25ml + 水 225ml の混合
 ・洗浄液: ピロ亜硫酸ナトリウム 12.5g を水 500mlに溶解
 ・第2現像液:第1現像液を使用
 ・定着液: スーパーフジックス定着液 170ml + 水 330ml

 第1現像時間は標準的なネガ現像時間から換算して9分(20℃)としました。
 その他の工程と時間は以下の通りです。

  ・第1現像: 9分
  ・水洗: 5分
  ・漂泊: 5分
  ・水洗: 1分
  ・洗浄: 3分
  ・水洗: 1分
  ・再露光: 片面3分
  ・第2現像: 3分
  ・水洗: 1分
  ・定着: 7分
  ・予備水洗: 1分
  ・水洗促進: 1分
  ・水洗: 20分
  ・水滴防止: 30秒

リバーサル現像した作例

 フィルムベースが透明ということもあり、とてもすっきりとしたヌケの良い綺麗なポジが得られました。黒の締まりも良く、好感の持てるポジではないかと思っています。
 こちらは東京都庁の都民広場で撮影したもので、使用したカメラは同じくMamiya 6 MF で、レンズは75mmです。都民広場にはいくつものオブジェ(像)が設置されていて、試し撮りにはありがたい場所です。

 まず1枚目、「犬の唄」というタイトルの像です。

 午前中なので像のあたりには陽が差し込んでいません。全体的にコントラストは低めな状態です。
 ネガ現像と同様、ディテールもしっかりと出ており、なだらかな階調で表現されていると思います。使用した現像液が違うので単純比較はできませんが粒状感はあまり気になりません。もしかしたら被写体や背景のせいかも知れません。像が非常に立体的に感じるのはネガ現像と同じです。

 もう一枚、同じく都民広場にある「はばたき」という像を撮ったものです。

 こちらは直射日光が差している明るいビル群や空をバックに、シルエット気味に撮っています。像が真っ黒に塗りつぶされないギリギリのところまで露出をかけています。
 髪の毛や纏っているドレスの細部が綺麗に表現されており、ハイコントラストながらカリッとした硬さは感じられません。このような状況でも描写が乱れないのは及第点だと思います。

 なお、ポジ原版はほぼ透明ですが、わずかに薄い緑色がかかっている感じです。

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 多少の粒状感はあるものの、それがかえってフィルムらしさを感じさせるフィルではないかと思います。解像力も申し分なく、何と言ってもなだらかな階調表現と立体感が持ち前のフィルムという印象です。
 ローライのRPX25やアグファのCOPEX RAPID 50のようなエッジの効いたキリっとした描写ではありませんが、とても豊かな表現をしてくれるという感じです。シャドー部もべたっとつぶれることもなく、ハイライト部も極端に白飛びすることもなく、細部にわたって表現してくれるフィルムと言ったらよいでしょうか。
 ISO感度もほぼ正確に100という値が出ていると思われ、安心して使えると思います。
 また、リバーサル現像でも非常に良い結果が得られており、いろいろな使い方ができるフィルムでもあると思います。もちろん好みもあるでしょうが、スナップやポートレートに向いているかも知れません。

 なお、別の現像液を使用すると結果も変わってくると思いますので、近いうちに試してみたいと思います。

(2025.12.21)

#Mamiya #リバーサル現像 #ADOX #CHS100II #ロジナール #Rodinal

第200話 それでも大判カメラを使って撮影をする理由(わけ)

(2025.11.28)

#写真観 #大判フィルム

第199話 フィルムカメラやレンズの修理やメンテナンスに使うツールのあれこれ

 私が使っているカメラのほとんどはフィルムカメラで、しかも半世紀以上も前のものばかりです。今のカメラのように電子化されている部分も少なく、故障する頻度もそれほど高くはありませんが、とはいえ機械ものなので時には動作に異常をきたすこともあります。また、機械ものゆえ、時どきはメンテナンスをする必要もあります。手に負えない故障などは専門のところにお願いせざるを得ませんが、軽微なものや簡単なメンテナンスなどは自分で行ないます。
 今回は自分でメンテナンスや修理を行なうために私が使っているツールのいくつかをご紹介します。
 私は修理専門業者ではありませんので特殊なツールなどは持ち合わせておらず、一般に市販されているものばかりですが、およそこのくらいのものを揃えておけばある程度までの対応は可能かと思われます。

精密ドライバー

 何はなくともこれは必要です。カメラに使われているネジは非常に小さいものが多いので、やはり精密ドライバーは必須です。

 上の写真の左側に写っているドライバーのセットで大抵のことは対応できます。+ドライバーと-ドライバーが3本ずつ入っています。いまは100円ショップでもこのようなセットが売られていて、それでも十分使えますが、やはり素材が柔らかいのか、固着したようなネジで無理な力をかけるとドライバーが負けてしまうことがあります。やはり、少しお金をかけてもしっかりしたものの方が無難であることは言うまでもありません。

 また、カメラには特殊なネジが使われていることも多く、これらのネジには専用のドライバーが必要で、私は何種類ものドライバービットがセットになっているものも用意しています。上の写真の右側がそれで、100種類のドラーバービットのほかにグリップなどがセットになっています。ネジに合わせてビットを交換しなければならないのでちょっと面倒ですが、使う頻度はそれほど高くないので、あれば便利というものです。

カニ目レンチ

 レンズのメンテナンスを行なうためにはぜひ必要な工具で、レンズを押さえているリングなどを外すときなどに使います。いろいろな形状のものが市販されていますが、私が使っているのは下の写真のようなごくシンプルなものです。

 レンチの先端が交換できるようになっていて、3種類がセットになっています。このカニ目レンチで対応できる径は約12mm~115mmですので、通常のレンズであれば問題なく使えます。
 使う上での自由度は高いのですが、対象物に合わせてレンチの幅を合わせるのに少々手間がかかるのが難点です。対象物の径にぴったり合わせないと、力を入れたときにレンチが外れてしまったり、リングの溝を削ってしまったり、最悪の場合、レンズに傷をつけてしまうこともありますので、手間がかかっても慎重に使わなければならない工具です。

オープナー

 カニ目レンチの先端をはめる溝が切ってないリングを外すときに使う工具です。ゴム製で、円錐形の先の方をカットした形状になっています。

 私が使っているのは6個セットのもので、いちばん大きなオープナーの外形が60mm、最も小さなオープナーの外形が14mmです。これをレンズを押さえているリングに押し当てて回すというものです。ゴムでできているので滑ることがなくリングを回すことができます。
 レンズにオープナーが接触した状態で回すとレンズを傷つける恐れがあるので、リングの内径よりも若干大きめのオープナーを使うことが望ましいです。

レンズサッカー

 レンズを鏡胴の中から取り出したり、また、外したレンズをもとに戻すときなどに使う工具で、簡単に言うと吸盤でレンズを吸いつけるものです。

 レンズを押さえているリングを外して、その下にあるレンズを取り出そうとしても工具などが入る隙間がありません。レンズを逆さまにして軽く振ればポトッと落ちてきますが、あまり好ましい方法ではありません。
 レンズサッカーの吸盤をレンズ面に押し当てて吸着し、上に引き上げるとレンズが簡単に取り出せます。吸盤からレンズを外すときは、持ち手の部分を軽く押して空気を吸盤の方に送ると簡単に外れます。
 私は吸盤の大きさが異なる2種類のレンズサッカーを使っています。それぞれ、吸盤の直径が20mmと30mmです。
 この工具に関しては大は小を兼ねることがなく、レンズ径よりも小さな吸盤でないと使うことができません。ただし、小さな吸盤であまり大きくて重いレンズに使うと、重さに耐えきれずに途中で落ちてしまう可能性があるので注意が必要ですが、吸盤にゆがみがなく、レンズにぴったりと密着すれば、かなりの重さに耐えられます。ちなみに、私が使っている小さいほうのレンズサッカー(20mm径)でも250gくらいは耐えられます。

ピンセット

 カメラに使用されているネジは小さくて、しかも狭いところにあることが多いので、指先だけでは限界がありピンセットが必要になります。
 ピンセットはいろいろな種類がありますが、私が使用しているのは下の写真の3種類です。

 左端のものは医療用のピンセットで、先端が山型に曲がっているタイプのものです。手を自然な形のままつかむことができるのでとても使いやすいピンセットです。先端はかなり細くなっていて、非常に小さなイモネジのようなものもしっかりと掴むことができます。

 写真中央は逆作動ピンセットと呼ばれるもので、ピンセットを指でつまむと先端が開き、指を放すと閉じるという、通常のピンセットとは逆の動作をします。
 小さなものをつかんで細かな作業をする場合、指の力加減によってつかんでいたものを落としてしまうということがありますが、この逆作動ピンセットを使うと指を放した状態で物を掴んでいてくれるので作業がしやすいという利点があります。小さなネジを掴んでネジ穴に入れるというようなときに便利です。

 そして右端のは切手用のピンセットです。先端が板状で平べったくなっています。
 これは小さなものを掴むのには向いておらず、薄いシート状のものを掴むときなどに使います。例えば、レンズの絞り羽根などを掴むときなどに使っています。ある程度広い面積を掴むので、傷がついたり折れ曲がったりということが防げます。

 ピンセットは安いものだと数百円からありますが、2本の先端がピタッと一致していることと、少々力を加えても変形しない材質のものが好ましいです。

レンズ締め付けリング用レンチ

 大判レンズ以外には使うことがないかも知れませんが、大判レンズのメンテナンス時にはあると便利な工具です。大判レンズをレンズボードに取り付ける際の締め付けリングを回すためのレンチです。

 正式名称は何というのか知りませんが、私が使っているのはトヨ製で、「シャッターレンチ」という商品名で販売されています。
 長方形の鉄板の四辺がレンチになっていて、以下の6種類のシャッターに対応できます。

  ・COPAL-0
  ・COLAP-1
  ・SEIKO-0
  ・SEIKO-1
  ・COMPUR-0
  ・COMPUR-1

 レンズ締め付けリングには溝が切ってあるので、そこにこのレンチをはめて回します。
 カニ目レンチでも問題なく代用できますが、専用工具なのでやはり使いやすいです。ただし、トヨ製は販売終了になっているかも知れません。何しろ、大判レンズそのものを使う人が少ないですから、致し方ありません。

ノギス

 寸法を測る測定器ですが、長さのほかに外径、内径、深さも測ることができます。

 一般的なノギスは1/20mm(0.05mm)まで測ることのできる目盛りが刻まれていますが、廉価なものは1/10mm(0.1mm)までというものもあるようです。また、最近は計測値をデジタル表記してくれるものもありますが、私の使っているのは昔ながらのアナログ式です。
 カメラやレンズのメンテナンスにそれほど出番が多いわけではありませんが、ちょっと壊れたところを補修するとか、あるいは代替の部品を使うときなど、正確な寸法が必要な時にあると便利です。
 長さを測ると言っても物差しやメジャーとは用途が異なるので、あまり大きな寸法のものまで測れる必要はなく、150mmくらいまで測ることができるもので十分だと思います。

無水エタノール

 清掃用になくてはならない必需品です。
 新型コロナが流行していたころは需要が急増して品薄、かつ価格も高騰していましたが、最近は在庫も価格も落ち着いてきているようです。

 私が良く購入しているのは上の写真の商品です。400ml入りのボトルですが、これだけあれば軽く1年以上は使えます。このボトルのままだと使いにくいので、レンズクリーナーの空きボトルに移して使っています(写真右側)。

 同じアルコールでもアルコールランプなどに使う燃料用アルコールは1/4ほどの価格で購入できますが、人体に有害なので清掃用には使用しないよう注意が必要です。

クリーニング用ペーパークロス

 無水エタノールと対で必要なのがペーパークロスです。
 これもいろいろなタイプのものが販売されていますが、私は主に下の二つを使用しています。

 一つは「HCLデジタルクリーニングペーパー」、そしてもう一つが「CURA MICRO WIPER」です。
 HCLデジタルクリーニングペーパーは厚みがあって非常にしっかりとしておりながらソフトな感触、サイズも150x180mmと大きめです。無水エタノールやクリーナーをしっかり吸い込んで保持してくれるのでとても使いやすいのですが、お値段も高めです。
 一方、CURA MICRO WIPERはHCLに比べるとかなり薄くてサイズも半分ほどですが、小さなレンズやちょっとしたところのクリーニングには十分だと思います。価格もHCLの半分ほどです。

 安価なペーパークロスだと紙質が硬かったり、ペーパー自体から紙粉が出るものもありますが、この二つのペーパークロスはそういったこともなく、とても使いやすいと思っています。

グリス

 レンズのヘリコイドなどに塗布して動きを滑らかにするもので、動きが鈍くなってきたような可動部分のメンテナンスに準備しておくとよいと思います。
 大量に使うものではないので、小さな容量のもので構わないと思います。

 私が常備しているのは、ジャパンホビーツールという会社から販売されている光学用ヘリコイドです。硬さがいろいろあるのですが、私は#30を使っています。重めのヘリコイドが好みの場合は#250くらいが良いかもしれません。
 また、レンズのほかに大判カメラのレール部分にも使用していますが、滑らかになりますが軽すぎることはなく、とても良い具合になります。

拡大鏡

 カメラやレンズはとにかく小さな部品が多いので、肉眼だけで作業するのは困難なことがあります。そんな時は無理をせずに拡大鏡を使用しています。
 私が使っているのは倍率の異なるレンズが5枚セットになっている拡大鏡です。

 使用状況によって1.0x、1.5x、2.0x、2.5x、3.5xからレンズを選択してフレームのところに取り付けます。フレームの先端には小さなLED照明がついていて、対象物を照らしてくれます。
 私がよく使うのは1.0xか1.5xで、それ以上の倍率のものはほとんど使うことがありません。倍率が高すぎると視野が狭くなってしまい、作業するのに具合がよくないというのと、そこまでの倍率を必要としないというのが理由です。

 細かな作業をするにはとても便利ではありますが、フレームが重いのが難点です。倍率を変えられなくても良いので、普通の眼鏡のような拡大鏡の方が便利かもしれません。

注射器

 きわめてピンポイントで注油したい時などにこれがあると便利です。もちろん、お医者さんが使うような注射器ではありません。

 シャッター内部の特定のシャフトだけに注油をするような場合、プランジャーを押し出すとドバっと出てしまうので、プランジャーはそのままにして、針先を注油したい場所に触れるとほんの僅かの量がシャフトに伝わっていきます。ほかの部分には全く影響しないほどの量です。
 一度、油類を入れてしまうと中を完全に洗浄するのは難しいので、それ専用に使うのが良いと思います。別の液体を入れる場合は、新たに注射器を用意するのが無難です。高額なものではないので、2~3本用意しておけば十分だと思います。

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 今回ご紹介したツール類は特殊なものはなく、どれも容易に入手することができるものばかりですが、それぞれの種類がたくさんあって、どれを選べばよいか迷ってしまうものばかりです。
 また、価格もピンキリで、安価に揃えることももちろんできますが、やはり価格の高いものは品質的にも機能的にもしっかりしていると思います。安くて使い捨てのようにしても構わないものと、長く使い続けるものとを分けて考えた方が良いかも知れません。

 なお、今回は電気系のツールについては触れませんでしたが、電気系統の修理が必要になることもありますので、それら用のツールについては別途、ご紹介したいと思います。

(2025.10.21)

#ツール

第198話 PENTAX67 ペンタックス67用マクロレンズ「smc PENTAX67 MACRO 135mm 1:4」

 ペンタックス67用には2本のマクロレンズが販売されていました。最初のモデルは1971年に発売された「SMC Macro Takumar 6×7 135mm 1:4」で、その後、マイナーチェンジが行われて「smc PENTAX67 MACRO 135mm 1:4」となっています。もう1本は2002年に発売された「smc PENTAX67 MACRO 100mm 1:4」です
 私が持っているのは135mmマクロの後期モデル、smc PENTAX67 MACRO 135mm 1:4です。詳しいことはわからないのですが、1980年代後半ごろに製造されたものではないかと思います。

 100mmマクロに比べて135mmマクロはあまり人気がないのか、中古市場を見ても非常にたくさんの数が出回っています。しかも、PENTAX67用レンズの中でもかなり安い金額で出回っていて、中には捨て値同然のような価格設定されたものもあります。
 私もこのレンズを使う頻度は低いのですが、ご紹介したいと思います。

smc PENTAX67 MACRO 135mm 1:4 の主な仕様

 このレンズ、マイナーチェンジされているとはいえ、外観やデザインに手を加えられただけで、基本的な構成は1971年に発売された時から変わっていないようです。

 このレンズの主な仕様を記載しておきます。PENTAX67交換レンズの使用説明書からの抜粋です。

   レンズ構成枚数 : 3群5枚
   対角画角 : 36.7°(67判使用時)
   最小絞り : 22
   絞り羽根 : 8枚
   測光方式 : 開放測光
   フィルター取付ネジ : 67mm
   最短撮影距離 : 0.75m
   全長 : 95mm
   最大径 : 91.5mm
   重さ : 620g

 このレンズを67判で使ったときの画角は、35mm判カメラに換算すると焦点距離がおよそ70mm前後のレンズに相当します。画角としては35㎜判の標準と中望遠の中間あたりに相当する焦点距離です。67判の対角画角が36.7度、横位置に構えたときの水平画角が29.1度、垂直画角が23.4度ですから、中望遠よりも少し広めの画角です。

 レンズ構成が特徴的で、3群5枚のヘリアー光学系を採用しているようです。ペンタックス67用のレンズの中でこのような構成を採用しているレンズはこれだけではないかと思います。
 3群のレンズは凸凹凸のトリプレット構成になっており、前群と後群が2枚の貼り合わせレンズになっています。正確には中央(2群)のレンズを少し前に移動させたダイナ光学系と呼ばれるようですが、ヘリアー光学系でも間違いではないようです。
 下の図はPENTAX67の使用説明書をもとに作画したものですが、レンズの正確なサイズや位置を再現しているわけではありませんのでご承知おきください。

 ヘリアーは言うまでもなく、フォクトレンダーが120年以上も前に製品化したレンズですが、シンプルな構成でありながら高い性能を持ったレンズと言われていて、改良はされているものの現在でも現役で活躍しているレンズです。

 マクロレンズとはいうものの、最短撮影距離が0.75m、撮影倍率が1/3.2倍という仕様ですから、今のマクロレンズの感覚からするとかなり見劣りする感があります。今のマクロレンズは等倍撮影ができて当たり前のような感じですから、ハーフマクロにも及ばないこのレンズは仕様的に物足りなかったのかも知れません。買ってはみたものの、思うように寄れないということで手放す人も多く、それが中古市場でもだぶついている原因のようにも思えます。

 ちなみに、100mmマクロは単体で1/1.9倍、ライフサイズコンバータを着けると1.12倍までの撮影ができるので、ユーザーがこちらのレンズに流れていくのはごく当たり前かも知れません。ただし、希望小売価格は190,000円という高額なレンズでした。
 私も100mmマクロは欲しいと思っていましたが、縁がなかったのか、いまだに手に入れることができておりません。

 絞りはF4~F32までの指標があり、F5.6~F22の間は1/2段ごとのクリックがありますが、F4とF5.6の間、およびF22とF32の間は中間クリックがありません。
 ピントリング(ヘリコイド)の回転角は約270度で、無限遠から最短撮影距離まで回すには、途中でリングを持ち替えないと厳しいです。最短撮影距離にした際のレンズの繰り出し量は約42mmで、通常のレンズに比べると多く繰り出せるようになっているようです。

 レンズを42mm繰り出すと、レンズと撮像面の距離は177mmになりますので、ここから露出補正値を計算すると、

  露出補正値 = (177 / 135)^2 = 1.72倍

 となります。

 これは絞り値にすると約1.3倍に相当しますので、最短撮影距離における絞りF4の実効F値は約F5.2ということになります。3/4段ほど暗くなりますので、リバーサルフィルムを使用する場合は影響が出る値です。昔ながらのマニュアルカメラで使用する場合は露出補正が必要になることがあると思います。

 素材にプラスチックが多く使われていることもあり、レンズの重さはあまり気になりませんが、手持ちでの近接撮影は難しいと思われます。

smc PENTAX67 MACRO 135mm 1:4 のボケ具合

 このレンズのボケ具合を、以前に作成したテストチャートを用いて確認してみました。レンズの光軸に対してテストチャートを45度の角度に設置し、約2m離れた位置からの撮影です。
 下の3枚の写真は、1枚目がテストチャートにピントを合わせた状態、2枚目が後方30cmの位置にあるテストチャート(後ボケ状態)、そして3枚目が前方30cmの位置にあるテストチャート(前ボケ状態)を切り出したものです。いずれも絞りは開放(F4)です。

 次に、絞りをF8にして後方30cmの位置にあるテストチャートを撮影したもの、そして、同じく絞りF8で前方30cmの位置にあるテストチャートを撮影したものが下の2枚の写真です。

 さらに、絞りをF16にして後方30cmの位置にあるテストチャートを撮影したもの、そして、同じく絞りF16で前方30cmの位置にあるテストチャートを撮影したものが下の2枚の写真です。

 こうして見てみるととても素直なボケ方をしているという印象を持ちます。どちらかに偏ったようなボケではなく、全方位に均一にぼけている感じです。ボケ方もなだらかできれいなボケではないかと思います。
 また、後ボケと前ボケの形(ボケ方)が非常に似通っている感じもします。後ボケと前ボケはそのボケ方が異なるレンズが多いのですが、このレンズはどちらも同じようなボケ方をしていると思います。

 参考までに、ピント位置から比較的近い位置にあるテストチャートを撮影したものも掲載しておきます。
 絞りをF4(開放)にして後方10cmの位置にあるテストチャートを撮影したもの、そして、同じく絞りF4で前方10cmの位置にあるテストチャートを撮影したものが下の2枚の写真です。

 やはり、なだらかで素直なボケになっていると思いますが、後方のテストチャート(後ボケ)の方がボケ方が大きいように思います。

 ちなみに、最短撮影距離(0.75m)で絞り開放で撮影した時の被写界深度を計算してみると以下のようになります。
 被写界深度の計算式は、

  前側被写界深度 = a²・ε・F /( f² + a・ε・F)
  後側被写界深度 = a²・ε・F /( f² - a・ε・F)

 となります。

 ここで、
  a : 被写体までの距離
  f : レンズの焦点距離
  F : 絞り値
  ε : 許容錯乱円

 を表します。

 許容錯乱円をどれくらいとみるかによって結果は異なりますが、ここでは長らく使われてきた0.033mmを適用して計算してみます。
 これで計算すると、前側被写界深度は約2.37mm、後側被写界深度は約2.39mmとなり、前後を合わせると約4.78mmという結果になります。135mmという焦点距離なのでこんなものかなとは思いますが、やはり最短撮影距離ではピント幅が浅く、ピント合わせは慎重に行なう必要があります。

smc PENTAX 67 MACRO 135mm 1:4 の作例

 マクロレンズだからというわけでもありませんが、私がこのレンズで撮影したものはやはり近景のもの、特に野草を撮影したものが圧倒的に多くあります。3枚の写真を掲載しますが、いずれも使用したフィルムは富士フイルムのPROVIA 100Fです。

 まず1枚目は、夏によく見ることができる野草、オカトラノオです。

 茎の先端にたくさんの白い小さな花を総状に咲かせる野草で、花穂の先が垂れ下がることからこの名前がつけられたようです。下の方から先端に向けて徐々に咲いていくのですが、この個体はまだ咲き始めで数輪しか開いていません。開いた花の直径は1cm足らずですが、たくさん開くと結構見応えがあります。
 トップライト気味の状態なので、白い花弁の質感が損なわれないように露出を若干抑え気味にしています。絞りは開放です。

 ピントは開いている花の蕊に合わせていますが、被写界深度が浅いので他の部分はボケています。ボケ方はなだらかできれいだと思います。
 画の下側に葉っぱを1枚入れてありますが、この葉っぱが先端に向かってふわっと溶けていくようなボケ方をしていて個人的には気に入っています。
 一方、右上に斜めに白い線が見えますが、これは細い野草の葉っぱで、二線ボケの傾向が感じられます。PENTAX67のレンズは二線ボケが出やすい印象があり、そんな中でもこのレンズは二線ボケが出にくいほうなのですが、やはり被写体によっては出てしまいます。

 2枚目は初夏に咲く花、ツユクサを撮影したものです。

 鮮やかな青紫色の花が特徴的で、朝に開いて昼頃にはしぼんでしまう短命の花です。花弁は2枚しかないように見えますが、下側に白い小さな花弁があって、全部で3枚あります。上側の2枚が大きくて丸っとしていて、私にはミッキーマウスのように見えてしまいます。

 陽がだいぶ高くなっていますが、少し前まで降っていた雨が残っている状態で撮影しました。
 この花は群生していることが多く、周囲にもたくさんの花が咲いていましたが、あまりたくさん入れると画がごちゃごちゃしてしまうので、背後に一輪だけいれて、後は葉っぱに着いた雨露の玉ボケを配してみました。ですが、バックがちょっとうるさい感じになってしまいました。
 1枚目の写真と比べると全体にコントラストが高めですが、ボケ方としてはきれいではないかと思います。

 このレンズで撮影した遠景の写真がほとんどなくて、中景ほどの距離で撮影したものを例として掲載します。

 長野県の富士見高原にある花の里という場所で撮影した、白樺林に咲く大輪の百合です。
 夏になると500万輪ともいわれる百合のほかにマリーゴールドなども咲き誇る、癒される場所です。特に白樺林に百合が咲いている姿は情緒的で、たくさんの人が訪れています。都会はうだるような暑さですが、ここは標高が1,250m以上あるらしく、日差しは強くても風がとても爽やかです。

 この写真は林の中ほどに咲いている一株の百合を撮ったものですが、手前にたくさん咲いている百合を前ボケに入れています。中央の百合の花までの距離は10mほどだったと思います。ボケをできるだけ大きくするために絞りは開放です。これだけ離れると大輪の百合も被写界深度内に収まってくれます。
 全体的にふわっとしたボケ味ではありますが、背後を見ると二線ボケが感じられます。それほど強烈な二線ボケではありませんが、やはり、画が汚くなってしまい気になります。
 遠景はあまり得意ではないレンズというレビューも見られますが、ひどい写りをするわけでもなく、十分実用に耐えるレベルだと思っています。

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 このレンズ、マクロレンズというにはちょっと力不足という感は否めませんが、半世紀以上も前に発売されたことを考えると素晴らしいレンズと言えるのではないかと思います。画角的には標準レンズでもなく中望遠レンズでもない、ちょっと中途半端な焦点距離ということもあって、使用する頻度はあまり高いとは言えません。ですが、ボケ味は結構気に入っていて、二線ボケの傾向はあるものの、それを注意すれば素直できれいなボケが得られるレンズではないかと思っています。
 また、解像度についても十分に及第点だと思っていて、小さな野草なども細部までしっかりと描写してくれます。

 私の持っている後期モデルの希望小売価格は90,000円(税抜き)でしたが、それが今や中古市場で数千円で手に入れることができます。マクロレンズというカテゴリーで販売しているのでちょっと損をしているように感じます。マクロではなく、通常の準中望遠レンズとしておいた方が受けが良かったのではないかと思ったりもします。

(2025.9.16)

#PENTAX #PENTAX67 #テストチャート #ペンタックス #ペンタックス67

第197話 なぜ、写真は思ったように撮れないのか?

(2025.8.27)

#写真観

第196話 アグファ AGFA COPEX RAPID 50 モノクロフィルムのリバーサル現像

 第183話でアグファのCOPEX RAPID 50というモノクロフィルムについて書きました。もともとはマイクロフィルムとして使われてきたというだけあって非常にコントラストの高いフィルムであり、一般の撮影用にはあまり向いていないという感想を持ちました。そのため、その後は使うこともなかったのですが、メリハリの効いた描写がとても印象的で、このフィルムをリバーサル現像したらどんな感じに仕上がるのだろうという思いがむくむくと頭を持ち上げてきました。
 ということで、アグファのモノクロフィルム、COPEX RAPID 50をリバーサル現像してみました。

COPEX RAPID 50 を使っての撮影

 今回使用したフィルムはブローニー判の120サイズです。2025年7月1日現在、1本1,600円前後で購入することができます。以前購入した時は1,300円ほどでしたから、この半年ほどの間で2割以上、値上がりしているようです。

 使用したカメラはPENTAX 67Ⅱ、使用したレンズはPENTAX 67用の75mm、105mm、200mm、300mmで、撮影時のISO感度は表記通り、ISO50としました。
 67判のカメラで使用すると10枚の撮影が可能で、被写体をいろいろ選択するほどたくさんは撮れないのですが、できるだけ異なるシチュエーションを選んでみました。

リバーサル現像のプロセス

 現像プロセスはイルフォードが推奨する手順に準拠していますが、使用する薬剤や処理時間等は適宜変更を加えています。
 実際に使用した薬剤は以下の通りです。

 【第1現像液】
  コダックのD-76に準拠して自家調合した薬剤を使用しました。
  今回の現像で使用する現像タンクはパターソンのPTP115というタイプで、これに必要な現像液の量は500mlです。したがって、調合した薬剤とその量は以下の通りです。

  無水亜硫酸ソーダ : 50g
  硼砂 : 1g
  メトールサン : 1g
  ハイドロキノン : 2.5g

  これらを500mlの水に溶解して現像液を作りました。これを希釈せずに使用します。
  なお、このD-76に準拠した現像液の調合についてご興味のある方は、下記のページをご覧ください。

  第187話 モノクロフィルム現像用「D-76準拠」現像液の自家調合

 【漂泊液】

  漂泊液は以下の薬剤を使用しています。

  過マンガン酸カリウム水溶液 20ml + 水 230ml
  硫酸水溶液(10%) 25ml + 水 225ml

  これらを混合して500mlの漂泊液を作ります。

 【洗浄液】

  洗浄液の調合は以下の通りです。

  ピロ亜硫酸ナトリウム 12.5gを500mlの水に溶解します。

 【第2現像液】

  本来、第2現像液は第1現像液よりも希釈度を高めたもの、つまり濃度の薄いものを使用するように推奨されていますが、今回は第1現像液をそのまま使用し、現像時間で調整をすることとしました。

 【定着液】

  今回使用した定着液は以下の通りです。

  フジックス定着液 170ml + 水 330ml

 こうして調合したそれぞれの薬剤は1,000ml用のビーカーに入れ、それを水温20℃に保たれたバットの中にいれ、液温が20℃になるようにしています。なお、現像液は液温が変わると現像時間に影響が出るので、できるだけ正確に20℃を保つようにしたいのですが、それ以外の薬剤は多少の温度の上下があっても問題はないと思います。

 次に、実際の現像プロセスですが、以下のような手順で行ないました。

  ・第1現像: 5分20秒 最初の1分は連続倒立撹拌、以後、1分ごとに5秒の倒立撹拌
  ・水洗: 流水で5分
  ・漂泊: 5分 連続撹拌
  ・水洗: 流水で1分 漂泊液の紫色が消えればOK
  ・洗浄: 3分 連続攪拌
  ・水洗: 流水で1分
  ・再露光: 片面4分 (2分ずつ2回)
  ・第2現像: 3分 最初の1分は連続倒立撹拌、以後、1分ごとに5秒の倒立撹拌
  ・水洗: 流水で1分
  ・定着: 3分 最初の30秒は連続撹拌、以後、30秒ごとに5秒の撹拌
  ・予備水洗: 流水で1分
  ・水洗促進: 1分 連続撹拌
  ・水洗: 流水で20分
  ・水滴防止: 30秒

 第1現像、第2現像ともに倒立撹拌を行なっていますが、必ずしも倒立撹拌である必要はないと思います。ただし、倒立撹拌の方が現像液の濃度のムラはできにくいのではないかと思われます。
 漂泊と洗浄はあまり強い水流を起こし過ぎると銀粒子が剥離してしまう可能性があるので、倒立撹拌は避けた方が良いかもしれません。
 第2露光は一般的な家庭用の蛍光灯(40~60W)を使用した場合、ISO100フィルムで片面1~2分程度です。今回使用したフィルムはISO50なので片面4分としました。この時間が短すぎると残ったハロゲン化銀が完全に露光しきれず、モヤっとしたような仕上がりになってしまうことがありますので、多少長めに露光した方が無難です。
 また、最後の水洗時間が短すぎるとフィルムが黄変してしまうことがあるので、長めに確実に行なうことが望ましいと思います。

 水滴防止液にくぐらせた後は埃の少ない場所につるして自然乾燥させます。フィルムの水滴をスポンジなどでふき取る方もいらっしゃいますが、私はほったらかし乾燥です。

COPEX RAPID 50 リバーサル現像した作例

 このフィルムをリバーサル現像したのは初めてですが、仕上がったポジ原版を見ての第一印象は見事に引き締まった黒が出ているということです。ネガ原版を見ても黒が引き締まっているであろうことは容易に想像できるのですが、実際にポジを見てみるとそれを視覚で確認することができます。
 ポジ原版をライトボックスに乗せた状態はこんな感じです。

 フィルムのカールが強くてクルンとなってしまうのでスリーブに入れての撮影です。そのため、若干画質が悪いですが、締まりの良い感じがわかると思います。

 まず1枚目は、空き地に放置された農機具のようなものを撮ってみました。

 この日は薄曇りでそれほどコントラストが高い状態ではないのですが、やはり、このフィルムで撮ると高コントラストな仕上がりになります。画下側のシロツメクサの葉っぱや上側の杉のような樹の葉っぱなどは比較的中間調として表現されていますが、農機具のボディの白い部分などは真っ白になっています。一方、右上の建物の窓や農機具の下で陰になっているところなどは黒くつぶれていて、全体として目がちかちかするような高コントラストな画像です。
 掲載した写真は解像度を落としてあるのでわかりにくいと思いますが、細かなところまでくっきりと描写されていて解像度の高さを感じます。

 右下のあたりを切り出したのが下の写真です。

 シロツメクサの葉脈や農機具のパーツに刻印された文字などもくっきりと認識できるので、十分な解像度が出ていると思います。また、粒状感もあまり感じられません。

 2枚目は、神社の参道にあった石灯篭です。

 1枚目の写真よりもさらにコントラスが低い状態です。実際にはこの写真で見るよりもはるかに暗い感じの場所でしたが、それでもコントラストが高く表現されています。石灯篭の明るい部分は飛び気味ですが、石の質感はしっかりと表現されていて、やはりこのフィルムの解像度の高さがうかがえます。

 次は桜の葉っぱを曇り空に抜いて撮影したものです。

 中間調がほとんどない状態ですが、それでも枝の先の方で重なりのない葉っぱは中間調が残っています。葉脈もしっかりと確認することができます。
 虫に食べられて葉っぱに空いた穴が面白いパターンを作り出していました。
 このようなシチュエーションでも、一般的なモノクロフィルムを用いればもっと中間調が豊かに出て柔らかな感じに仕上がると思われます。

 最後はテーブルフォトとして、室内でシーサーの置物を撮った写真です。

 余計なものが入り込まないように黒い背景紙を使っており、写真の左方向から照明を当てていますが、ちょっと照明が強すぎたようです。シーサーの体の部分の質感が損なわれており、露出ミスといったところです。
 その分、彫りが深く見えるかもしれませんが、間接照明にすべきだったと思います。

 前回、ネガ現像した際に用いた現像液はSilverSaltでしたが、今回はD-76準拠の現像液で、しかもリバーサル現像なので単純に比較することはできませんが、やはりSilverSalt現像液の方が綺麗な描写をしていると感じます。
 また、撮影時の露光条件は前回と同じですが、ハイライト部の飛び具合が今回の方が明らかに強い感じです。これは撮影時の条件の差ではなく、現像の違いではないかと思われます。
 白が強く出過ぎているということは、第1現像の時間が長すぎたことが考えられます。つまり、第1現像ではネガ画像が生成されますがこれが強く出過ぎてしまい、漂泊で洗い流されてしまったため、白飛びが強く出たと思われます。第1現像の時間を5分20秒と設定しましたが、4分50秒ぐらいが妥当だったかもしれません。

 ただし、リバーサル現像してもこのフィルムらしい高コントラストの像は十分に保たれており、大きな品質の低下も感じられませんでした。
 黒と白だけで構成されたパターン的な描写を狙うのであれば効果的なフィルムではあると思いますが、やはり景色という視点からすると扱いの難しいフィルムです。

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 今回使用したCOPEX RAPID 50に限らず、モノクロフィルムをリバーサル現像するとポジ原版が得られるので、ライトボックスなどでそのまま鑑賞することができます。ネガを見るのとは全く違った感覚です。
 しかし、リバーサル現像してしまうと通常の紙焼き(プリント)はできなくなってしまいます。スキャナなどで読み取ってデータ化する分には問題ありませんが、紙焼きするのであれば通常のネガ現像にしておくべきで、私も時々、テスト的にリバーサル現像する程度です。
 また、スライドプロジェクターのような機器で大きく投影するにはポジ原版が必要ですが、残念ながら私はそのような機器を持ち合わせていません。スクリーンに大きく投影されれば、昔のモノクロ映画を見ているような感じで感動するかもしれません。

 なお、機会があればSilverSaltを使ってリバーサル現像してみたいと思います。

(2025.7.5)

#AGFA #COPEX_RAPID #D76 #アグファ #モノクロフィルム #リバーサル現像

第195話 リバーサルフィルムの価格高騰で、撮影のスタイルに変化が…

(2025.6.25)

#リバーサルフィルム #富士フイルム

第194話 Wollensak ウォーレンサックの軟焦点レンズ VERITO ベリートの絞り羽清掃

 私はバレルレンズを数本持っていますが、いずれも100年以上前に製造されたレンズで、すべて中古品で購入したものです。その中の1本がウォーレンサックのベリート VERITO 8.3/4インチという軟焦点(ソフトフォーカス)レンズです。
 少し調べてみたところ、このレンズが製造されたのは1913年頃らしく、日本では後のコニカ株式会社となる小西商店が1914年(大正3年)から輸入販売を始めたらしいです。今から110年以上も前のことです。
 私がこのレンズを手に入れたのが15年ほど前です。このレンズが何処で誰によってどのような使い方をされてきたのかはわかりませんが、110年も経過しているので鏡胴の塗装も剥げかけていたり、汚れや傷があったりしていますが、特に絞り羽が非常に汚れていて、しかも動きもぎこちない感じです。経過年数を考慮すれば仕方がない気もしますが、分解して絞り羽を清掃することにしました。

レンズの分解

 ベリートにもいろいろなモデルがあるようですが、私の持っているレンズは下の写真のようなタイプです。

 全身金属製でずしっと重いレンズですが構造はとてもシンプルで、絞り機構を挟んで前玉と後玉がはめ込まれているだけです。いずれもねじ込み式なので、少し力を入れて回すと簡単に外すことができます。

 前玉を外したのが下の写真です。

 絞り羽は20枚です。最小絞りまで絞り込んだ状態ですが、羽に何やら白い粉のようなものがたくさんついているのがわかると思います。これが何なのかよくわかりませんが、絞りを動かすと時々剥がれ落ちてレンズに付着したりします。ですが、綿棒などでそっと擦ったくらいでは取れないくらいしっかりと張り付いています。
 油の滲みのようなものは全く見られませんが、もしかしたら100年の歳月の間に油分が劣化したものなのかも知れません。絞り羽が擦られることで削れているわけではないようです。

 次に後玉を外した状態の写真です。

 こちらも同様に、絞り羽に白い付着物が見られます。
 写真ではわかりにくいかもしれませんが、それぞれの羽の真ん中あたりから半分だけに白い粉のようなものが付着しています。この位置は絞りをF8に絞り込んだ状態に相当しています。その状態で何十年も放置されていた証のようにも思えます。

 これで絞り機構部分だけになったわけですが、ここからさらに分解をしていきます。

 まず、絞りリングについている小さなネジを外します。
 下の写真の赤丸の中にあるネジです。

 このネジは絞りリングの内側にある溝に勘合していて、絞りリングがF4からF45の範囲だけ動くようにするためのものです。

 そして、絞りリングを回すとこれを外すことができます(下の写真)。

 絞りリングが嵌っていたところに細い溝が切ってあるのがわかると思いますが、ここに先ほどのネジの先端が勘合して絞りリングの可動範囲を制限しているわけです。

 次に、絞り羽を上から押さえながら回転させるためのパーツを外すのですが、まず、絞りリングが嵌っていたところにある小さなイモネジを外します。

 上の写真のほぼ中央に小さなネジがあると思いますが、このネジを外します。非常に小さなネジなので、なくさないように注意が必要です。
 このイモネジを外すと、いちばん内側にあるリングを回すことができるようになります。

 このリングを外した状態が下の写真です。

 上の写真で、右側の絞り羽の上にある黒いリング状のものが絞り羽を開いたり閉じたりさせているパーツです。
 このパーツは絞り羽の上に乗っているだけなので、ピンセットなどでつまんで簡単に持ち上げることができます。

 下の写真がこのパーツを外した状態です。外したパーツを裏返して撮影してあります。

 左側のパーツに放射状に切ってある溝に絞り羽の先端のピンが嵌っていて、これを回転させることで絞り羽が開いたり閉じたりします。

 ちなみに、絞り羽を全開にした状態が下の写真です。

 絞り羽がかなり汚れているのがわかると思います。

 絞り羽を全部取り出してみました。、それぞれの羽の状態はこんな感じです。

絞り羽と各部の清掃

 このレンズの絞り羽は20枚あって、すべてが同じ形状をしていると思われるのですが、念のため、取り付けられていた順番が変わらないように並べておきます。
 今回、絞り羽はベンジンで清掃しました。無水アルコールでも大丈夫だとは思いますが、油分を取り除くにはベンジンの方が効果的かと思い、ベンジンを使用しました。
 羽の表面についている白い粉のようなものはきれいに除去できましたが、絞り羽が重なってできたと思われる痕は取り除くことができませんでした。あまり強力に擦って羽を傷めてしまっては元も子もないのでほどほどの状態で妥協です。

 その他、各パーツは無水アルコールと綿棒を使って落とせる汚れはできるだけ落としたという感じです。正直なところ、見違えるほどきれいになったという印象ではありませんが、良しとしましょう。

絞り羽の組み上げ

 各部の清掃が終わったところで、いよいよ組み上げです。これは分解したのと逆の順序で行なえば問題はないのですが、絞り羽をはめ込んでいくのは少々根気がいります。
 20枚のうち、最初の10枚ほどは順番に重ねていくだけなのでどうってことはありませんが、後半になると、最初にはめた羽の下に潜り込ませて嵌め込んでいかなければなりません。注意しないと、せっかくそれまでに嵌めた羽が外れてしまうなんていうことが生じるので、慎重に行ないます。

 20枚すべての羽を嵌め終えたら、羽の先端のピンと穴がうまく勘合せずに浮いているところがないか確認し、大丈夫なようであれば羽を稼動させるリング状のパーツをそっと乗せます。
 なお、このパーツは嵌める位置がずれると絞り値の指標通りに稼動しなくなってしまうので注意が必要です。下の写真でわかるように小さな切り欠きがあるので、これを絞りリングの可動範囲を決める溝の端に合わせて嵌めるようにします。

 次に絞りリングの取り付けですが、まず、絞りを全開の状態にします。その状態で絞りリングをいちばん奥までねじ込んでいきます。これ以上ねじ込めないなったところで、絞りリングのF4の指標と絞り値を指すマークが一致するところまで絞りリングを戻します。
 その状態を保持しつつ、絞りリングの可動範囲を制限するネジをはめ込みます。絞りリングを取り付けた後、これを回してみてスムーズに動くかどうかの確認を行います。硬すぎたり緩すぎたりせずにスムーズに動けば問題ないと思います。

 絞りリングを取り付けた後の状態がこちらの写真です。

 清掃前と比べると絞り羽はだいぶ綺麗になったと思います。どうしても落とせない汚れ等が若干残っていますがまずまずの状態ではないかと思います。
 ぎこちない動きをしていた絞りリングもスムーズに動くようになりました。個人的にはもう少し動きが重いほうが好みですが、使用上は支障のないレベルだと思います。

 あとは前玉、後玉を取り付ければ組み上げは完了です。

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 100年以上も前に作られたレンズということで清掃にも限界がありますが、ずっと気になっていた絞り羽が綺麗になったので、喉につかえていた魚の小骨がとれたような感じです。
 鏡胴の塗装なども塗り直しをすればきれいになるのでしょうが、オリジナルをあまり変えてしまうのもどうかと思い、手をつけずにいます。やはり、100年経ったらそれなりの風格のようなものがあった方が自然かなと思います。

 今回、このレンズを分解・清掃してみて思ったのですが、鏡胴にはスレや細かな傷はあるものの、レンズはかなり綺麗な状態を保っています(レンズは購入後に清掃をしてあります)。実際に撮影に使用された時間というのはあまり長くなく、大半は使われずに保管されたままだったのではないかと思います。
 一方で、前玉の鏡胴の外周は全周に渡って塗装が削られたような状態になっていて、これはソロントンシャッターを取り付けた際の傷ではないかと思われます。
 このレンズでどんな写真を撮っていたのかと想像すると、ちょっと楽しくなります。

(2025.5.26)

#VERITO #バレルレンズ #ベリート

第193話 桜の追っかけに行って思うこと...なぜ、これほどまでに桜に心がときめくのか?

(2025.4.29)

#さくら