第201話 アドックスADOXのモノクロフィルム CHS 100Ⅱの使用感とリバーサル現像

 アドックスADOXという会社はフィルムや印画紙、現像液などを製造するドイツの企業で、世界で初めてX線用写真乾板を開発した企業として有名ですが、現在のアドックスは「アドックス・フォトヴェルケ」という事業会社が継承しており、創業時の会社とは異なるようです。
 アドックスのフィルムを使った経験はあまり多くないのですが、ずいぶん前にCHS100というモノクロフィルムを使ったことがありました。しかし、そのフィルムも2012年ごろに製造が終了になってしまい、その後、後継となるCHS100 Ⅱというフィルムが発売されたのですが、私は使ったことがありませんでした。
 今回、比較的良好な評価が多くみられるCHS100 Ⅱを使ってみました。

アドックスのオルソパンクロマチックフィルム

 外箱はなく、黒いフィルムのケースには「MADE IN GERMANY」と書かれています。ベルリンに工場があるようで、同社のホームページを見ると、「2006年、ADOX工場は1980年代の廃墟となった軍用ランドリーの敷地内に建設を開始しました。多くの研究、生産、製菓機械は、アグファ、フォルテ、コニカなどの倒産した写真工場から救出されました。」と書かれています。日本のコニカも支援をしていたようです。

 オルソパンクロマチックということなので、フィルムとしてパンクロマチックに分類されつつも、赤色光に対する感度低減の性質を持っているということなのでしょう。
 特性について少し調べてみたところ、データシートを見るとおよそ660nmから上の赤色光には反応しないようです。
 フィルムの素材は透明なPETベースが採用されているとのこと、また、2層のハレーション防止層が設けられているなど、CHS100からはいろいろと改良がくわえられている感じです。
 ISO感度は公称値の100に忠実とのことで、現像において80~125まで適応可能なようです。解像力は100本/mmで、CHS100に比べるとずいぶんよくなっているようですが、特別高いというわけではなく標準的な解像度ではないかと思います。

 今回使用したのはブローニーの120サイズフィルムです。1本1,600円ほどで購入しました。一般的なISO-100のフィルムに比べると少しお高めです。

現像に関するデータ

 このフィルムの現像はコダックのD-76やイルフォードのD-11など一般に出回っている多くの現像液が使用可能ですが、今回はAdox Adonal現像液を使用しました。
 実際の現像条件は以下の通りです。

  ・現像液 : Adox Adonal
  ・希釈 : 1 + 50 (原液1に対して水50)
  ・温度 : 20度
  ・現像時間 : 12.5分
  ・撹拌 : 最初に30秒、その後60秒ごとに2回倒立撹拌
  ・停止 : 60秒
  ・定着 : 7分
  ・水洗 : 10分

 使用した現像タンクはパターソンのPTP115というモデルで、必要な現像液の量は約500mlです。Adox Adonalの原液10mlと水500mlを合わせて510mlの現像液を調合しました。水は精製水を使うのが望ましいのですが、いつもながら水道水を5分ほど煮沸し、冷ましたものを使っています。
 液温が下がらないように深めのバットに水を張り、その中に電熱器を入れて20℃を保つようにして、そこに現像タンクを入れておきました。
 なお、停止液は酢酸、定着液はスーパーフジックスLと、いずれも富士フイルムの製品を使いました。

 データシートによるとフィルムのベース厚みは0.1mmとのことで、イルフォードのDELTA100と比べるとわずかに薄い印象がありますが、柔らかすぎず程よい硬さといった感じです。
 ただし、乾燥後のカールを防ぐ対策が施されているとのことですが、結構カールします。

アドックス CHS 100 Ⅱの作例

 今回の撮影に使用したカメラはMamiya 6 MF、使用したレンズは75mmです。撮影した中から4枚の写真をご紹介します。いずれも哲学堂公園(東京都中野区)とその周辺で撮影したものです。

 まず1枚目は、哲学堂公園にある四聖堂と呼ばれる建物を撮影したものです。

 周囲にある木々からの木漏れ日が蔀戸のごく一部だけに差し込んでいるところを撮りました。ハイライト部分が白飛びしすぎないよう、露出はおさえ気味にしています。
 コントラストが高い感じはなくて、全体的になだらかできれいな階調で表現されているように思います。シャドー部もつぶれすぎず柔らかな感じを受けます。
 解像度も問題のないレベルだと思いますが、粒状感が目立つように思います。

 写真の中央付近、木漏れ日の差している部分を拡大したのが下の写真です。

 やはり粒状性は粗くて、ざらざらした感じがしますが、木目がしっかりと表現されていたり、蝶番の金属の質感なども良く出ていると思います。コントラストが高すぎて平面的になってしまうようなこともなく、非常に立体感のある写りではないかと思います。

 2枚目は同じく哲学堂公園に設置されている像を撮影した写真です。

 背後は日差しが当たっている雑木林ですが、手前の像には直接光が当たっていない状況です。1枚目の写真とは反対に、像のディテールがわかるように露出は多めにかけています。
 像全体がなだらかな階調で表現されていると思います。特に像の下半分、徐々に黒く落ち込んでいくあたりも綺麗で、黒い中にもわずかな色の違いが感じられます。また、このような状況だと粒状感もあまり気になることはく、綺麗なトーンが出ていると思います。

 3枚目は哲学堂公園近くにあるお寺で撮影したものです。

 入口の山門近くにたくさんのお地蔵さまが並んでいました。お地蔵様の正面から陽が差している状態で、お地蔵様の背後には黒い影がくっきりと出ています。
 ハイライト部分が多めになるように露出はオーバー気味にして撮影していますが、石の質感などが損なわれることなく表現されていると思います。掲載した写真ではわかりにくいかもしれませんが、特に中央左側のお地蔵様の石のザラザラした感じがよくわかります。解像感も申し分ない感じです。
 お地蔵様の前掛けはかなり白飛びしていますが、ペタッとした感じにはならず、布のウェーブがわかるので立体感が感じられます。

 もう一枚、同じ場所で撮影したのがこちらの写真です。

 五重塔の軒下を撮影したもので、直射日光はあたっていないので全体的にコントラストは低めの状態です。斗栱の木の質感がとてもきれいに出ていると思います。うまく表現できないのですが、エッジが効きすぎておらず、シャープさがあるにもかかわらず全体的に柔らかな感じがします。
 若干、粒状性の粗さは感じますが、このようなシチュエーションでは効果的に働いているのではないかと思います。

リバーサル現像に関するデータ

 フィルムベースに透明なPET素材を採用しておりリバーサル現像にも向いているとのことでしたので、2本目はリバーサル現像してみました。
 現像時間を少し変更した程度で、基本的にはこれまで行なってきた現像とほぼ同じ条件で行ないました。
 使用した現像液類は以下の通りです。

 ・第1現像液: シルバークロームデベロッパー 100ml + 水 400ml (希釈 1+4)
 ・漂泊液: 過マンガン酸カリウム水溶液 20ml + 水 230ml と、硫酸水溶液(10%) 25ml + 水 225ml の混合
 ・洗浄液: ピロ亜硫酸ナトリウム 12.5g を水 500mlに溶解
 ・第2現像液:第1現像液を使用
 ・定着液: スーパーフジックス定着液 170ml + 水 330ml

 第1現像時間は標準的なネガ現像時間から換算して9分(20℃)としました。
 その他の工程と時間は以下の通りです。

  ・第1現像: 9分
  ・水洗: 5分
  ・漂泊: 5分
  ・水洗: 1分
  ・洗浄: 3分
  ・水洗: 1分
  ・再露光: 片面3分
  ・第2現像: 3分
  ・水洗: 1分
  ・定着: 7分
  ・予備水洗: 1分
  ・水洗促進: 1分
  ・水洗: 20分
  ・水滴防止: 30秒

リバーサル現像した作例

 フィルムベースが透明ということもあり、とてもすっきりとしたヌケの良い綺麗なポジが得られました。黒の締まりも良く、好感の持てるポジではないかと思っています。
 こちらは東京都庁の都民広場で撮影したもので、使用したカメラは同じくMamiya 6 MF で、レンズは75mmです。都民広場にはいくつものオブジェ(像)が設置されていて、試し撮りにはありがたい場所です。

 まず1枚目、「犬の唄」というタイトルの像です。

 午前中なので像のあたりには陽が差し込んでいません。全体的にコントラストは低めな状態です。
 ネガ現像と同様、ディテールもしっかりと出ており、なだらかな階調で表現されていると思います。使用した現像液が違うので単純比較はできませんが粒状感はあまり気になりません。もしかしたら被写体や背景のせいかも知れません。像が非常に立体的に感じるのはネガ現像と同じです。

 もう一枚、同じく都民広場にある「はばたき」という像を撮ったものです。

 こちらは直射日光が差している明るいビル群や空をバックに、シルエット気味に撮っています。像が真っ黒に塗りつぶされないギリギリのところまで露出をかけています。
 髪の毛や纏っているドレスの細部が綺麗に表現されており、ハイコントラストながらカリッとした硬さは感じられません。このような状況でも描写が乱れないのは及第点だと思います。

 なお、ポジ原版はほぼ透明ですが、わずかに薄い緑色がかかっている感じです。

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 多少の粒状感はあるものの、それがかえってフィルムらしさを感じさせるフィルではないかと思います。解像力も申し分なく、何と言ってもなだらかな階調表現と立体感が持ち前のフィルムという印象です。
 ローライのRPX25やアグファのCOPEX RAPID 50のようなエッジの効いたキリっとした描写ではありませんが、とても豊かな表現をしてくれるという感じです。シャドー部もべたっとつぶれることもなく、ハイライト部も極端に白飛びすることもなく、細部にわたって表現してくれるフィルムと言ったらよいでしょうか。
 ISO感度もほぼ正確に100という値が出ていると思われ、安心して使えると思います。
 また、リバーサル現像でも非常に良い結果が得られており、いろいろな使い方ができるフィルムでもあると思います。もちろん好みもあるでしょうが、スナップやポートレートに向いているかも知れません。

 なお、別の現像液を使用すると結果も変わってくると思いますので、近いうちに試してみたいと思います。

(2025.12.21)

#Mamiya #リバーサル現像 #ADOX #CHS100II #ロジナール #Rodinal

第198話 PENTAX67 ペンタックス67用マクロレンズ「smc PENTAX67 MACRO 135mm 1:4」

 ペンタックス67用には2本のマクロレンズが販売されていました。最初のモデルは1971年に発売された「SMC Macro Takumar 6×7 135mm 1:4」で、その後、マイナーチェンジが行われて「smc PENTAX67 MACRO 135mm 1:4」となっています。もう1本は2002年に発売された「smc PENTAX67 MACRO 100mm 1:4」です
 私が持っているのは135mmマクロの後期モデル、smc PENTAX67 MACRO 135mm 1:4です。詳しいことはわからないのですが、1980年代後半ごろに製造されたものではないかと思います。

 100mmマクロに比べて135mmマクロはあまり人気がないのか、中古市場を見ても非常にたくさんの数が出回っています。しかも、PENTAX67用レンズの中でもかなり安い金額で出回っていて、中には捨て値同然のような価格設定されたものもあります。
 私もこのレンズを使う頻度は低いのですが、ご紹介したいと思います。

smc PENTAX67 MACRO 135mm 1:4 の主な仕様

 このレンズ、マイナーチェンジされているとはいえ、外観やデザインに手を加えられただけで、基本的な構成は1971年に発売された時から変わっていないようです。

 このレンズの主な仕様を記載しておきます。PENTAX67交換レンズの使用説明書からの抜粋です。

   レンズ構成枚数 : 3群5枚
   対角画角 : 36.7°(67判使用時)
   最小絞り : 22
   絞り羽根 : 8枚
   測光方式 : 開放測光
   フィルター取付ネジ : 67mm
   最短撮影距離 : 0.75m
   全長 : 95mm
   最大径 : 91.5mm
   重さ : 620g

 このレンズを67判で使ったときの画角は、35mm判カメラに換算すると焦点距離がおよそ70mm前後のレンズに相当します。画角としては35㎜判の標準と中望遠の中間あたりに相当する焦点距離です。67判の対角画角が36.7度、横位置に構えたときの水平画角が29.1度、垂直画角が23.4度ですから、中望遠よりも少し広めの画角です。

 レンズ構成が特徴的で、3群5枚のヘリアー光学系を採用しているようです。ペンタックス67用のレンズの中でこのような構成を採用しているレンズはこれだけではないかと思います。
 3群のレンズは凸凹凸のトリプレット構成になっており、前群と後群が2枚の貼り合わせレンズになっています。正確には中央(2群)のレンズを少し前に移動させたダイナ光学系と呼ばれるようですが、ヘリアー光学系でも間違いではないようです。
 下の図はPENTAX67の使用説明書をもとに作画したものですが、レンズの正確なサイズや位置を再現しているわけではありませんのでご承知おきください。

 ヘリアーは言うまでもなく、フォクトレンダーが120年以上も前に製品化したレンズですが、シンプルな構成でありながら高い性能を持ったレンズと言われていて、改良はされているものの現在でも現役で活躍しているレンズです。

 マクロレンズとはいうものの、最短撮影距離が0.75m、撮影倍率が1/3.2倍という仕様ですから、今のマクロレンズの感覚からするとかなり見劣りする感があります。今のマクロレンズは等倍撮影ができて当たり前のような感じですから、ハーフマクロにも及ばないこのレンズは仕様的に物足りなかったのかも知れません。買ってはみたものの、思うように寄れないということで手放す人も多く、それが中古市場でもだぶついている原因のようにも思えます。

 ちなみに、100mmマクロは単体で1/1.9倍、ライフサイズコンバータを着けると1.12倍までの撮影ができるので、ユーザーがこちらのレンズに流れていくのはごく当たり前かも知れません。ただし、希望小売価格は190,000円という高額なレンズでした。
 私も100mmマクロは欲しいと思っていましたが、縁がなかったのか、いまだに手に入れることができておりません。

 絞りはF4~F32までの指標があり、F5.6~F22の間は1/2段ごとのクリックがありますが、F4とF5.6の間、およびF22とF32の間は中間クリックがありません。
 ピントリング(ヘリコイド)の回転角は約270度で、無限遠から最短撮影距離まで回すには、途中でリングを持ち替えないと厳しいです。最短撮影距離にした際のレンズの繰り出し量は約42mmで、通常のレンズに比べると多く繰り出せるようになっているようです。

 レンズを42mm繰り出すと、レンズと撮像面の距離は177mmになりますので、ここから露出補正値を計算すると、

  露出補正値 = (177 / 135)^2 = 1.72倍

 となります。

 これは絞り値にすると約1.3倍に相当しますので、最短撮影距離における絞りF4の実効F値は約F5.2ということになります。3/4段ほど暗くなりますので、リバーサルフィルムを使用する場合は影響が出る値です。昔ながらのマニュアルカメラで使用する場合は露出補正が必要になることがあると思います。

 素材にプラスチックが多く使われていることもあり、レンズの重さはあまり気になりませんが、手持ちでの近接撮影は難しいと思われます。

smc PENTAX67 MACRO 135mm 1:4 のボケ具合

 このレンズのボケ具合を、以前に作成したテストチャートを用いて確認してみました。レンズの光軸に対してテストチャートを45度の角度に設置し、約2m離れた位置からの撮影です。
 下の3枚の写真は、1枚目がテストチャートにピントを合わせた状態、2枚目が後方30cmの位置にあるテストチャート(後ボケ状態)、そして3枚目が前方30cmの位置にあるテストチャート(前ボケ状態)を切り出したものです。いずれも絞りは開放(F4)です。

 次に、絞りをF8にして後方30cmの位置にあるテストチャートを撮影したもの、そして、同じく絞りF8で前方30cmの位置にあるテストチャートを撮影したものが下の2枚の写真です。

 さらに、絞りをF16にして後方30cmの位置にあるテストチャートを撮影したもの、そして、同じく絞りF16で前方30cmの位置にあるテストチャートを撮影したものが下の2枚の写真です。

 こうして見てみるととても素直なボケ方をしているという印象を持ちます。どちらかに偏ったようなボケではなく、全方位に均一にぼけている感じです。ボケ方もなだらかできれいなボケではないかと思います。
 また、後ボケと前ボケの形(ボケ方)が非常に似通っている感じもします。後ボケと前ボケはそのボケ方が異なるレンズが多いのですが、このレンズはどちらも同じようなボケ方をしていると思います。

 参考までに、ピント位置から比較的近い位置にあるテストチャートを撮影したものも掲載しておきます。
 絞りをF4(開放)にして後方10cmの位置にあるテストチャートを撮影したもの、そして、同じく絞りF4で前方10cmの位置にあるテストチャートを撮影したものが下の2枚の写真です。

 やはり、なだらかで素直なボケになっていると思いますが、後方のテストチャート(後ボケ)の方がボケ方が大きいように思います。

 ちなみに、最短撮影距離(0.75m)で絞り開放で撮影した時の被写界深度を計算してみると以下のようになります。
 被写界深度の計算式は、

  前側被写界深度 = a²・ε・F /( f² + a・ε・F)
  後側被写界深度 = a²・ε・F /( f² - a・ε・F)

 となります。

 ここで、
  a : 被写体までの距離
  f : レンズの焦点距離
  F : 絞り値
  ε : 許容錯乱円

 を表します。

 許容錯乱円をどれくらいとみるかによって結果は異なりますが、ここでは長らく使われてきた0.033mmを適用して計算してみます。
 これで計算すると、前側被写界深度は約2.37mm、後側被写界深度は約2.39mmとなり、前後を合わせると約4.78mmという結果になります。135mmという焦点距離なのでこんなものかなとは思いますが、やはり最短撮影距離ではピント幅が浅く、ピント合わせは慎重に行なう必要があります。

smc PENTAX 67 MACRO 135mm 1:4 の作例

 マクロレンズだからというわけでもありませんが、私がこのレンズで撮影したものはやはり近景のもの、特に野草を撮影したものが圧倒的に多くあります。3枚の写真を掲載しますが、いずれも使用したフィルムは富士フイルムのPROVIA 100Fです。

 まず1枚目は、夏によく見ることができる野草、オカトラノオです。

 茎の先端にたくさんの白い小さな花を総状に咲かせる野草で、花穂の先が垂れ下がることからこの名前がつけられたようです。下の方から先端に向けて徐々に咲いていくのですが、この個体はまだ咲き始めで数輪しか開いていません。開いた花の直径は1cm足らずですが、たくさん開くと結構見応えがあります。
 トップライト気味の状態なので、白い花弁の質感が損なわれないように露出を若干抑え気味にしています。絞りは開放です。

 ピントは開いている花の蕊に合わせていますが、被写界深度が浅いので他の部分はボケています。ボケ方はなだらかできれいだと思います。
 画の下側に葉っぱを1枚入れてありますが、この葉っぱが先端に向かってふわっと溶けていくようなボケ方をしていて個人的には気に入っています。
 一方、右上に斜めに白い線が見えますが、これは細い野草の葉っぱで、二線ボケの傾向が感じられます。PENTAX67のレンズは二線ボケが出やすい印象があり、そんな中でもこのレンズは二線ボケが出にくいほうなのですが、やはり被写体によっては出てしまいます。

 2枚目は初夏に咲く花、ツユクサを撮影したものです。

 鮮やかな青紫色の花が特徴的で、朝に開いて昼頃にはしぼんでしまう短命の花です。花弁は2枚しかないように見えますが、下側に白い小さな花弁があって、全部で3枚あります。上側の2枚が大きくて丸っとしていて、私にはミッキーマウスのように見えてしまいます。

 陽がだいぶ高くなっていますが、少し前まで降っていた雨が残っている状態で撮影しました。
 この花は群生していることが多く、周囲にもたくさんの花が咲いていましたが、あまりたくさん入れると画がごちゃごちゃしてしまうので、背後に一輪だけいれて、後は葉っぱに着いた雨露の玉ボケを配してみました。ですが、バックがちょっとうるさい感じになってしまいました。
 1枚目の写真と比べると全体にコントラストが高めですが、ボケ方としてはきれいではないかと思います。

 このレンズで撮影した遠景の写真がほとんどなくて、中景ほどの距離で撮影したものを例として掲載します。

 長野県の富士見高原にある花の里という場所で撮影した、白樺林に咲く大輪の百合です。
 夏になると500万輪ともいわれる百合のほかにマリーゴールドなども咲き誇る、癒される場所です。特に白樺林に百合が咲いている姿は情緒的で、たくさんの人が訪れています。都会はうだるような暑さですが、ここは標高が1,250m以上あるらしく、日差しは強くても風がとても爽やかです。

 この写真は林の中ほどに咲いている一株の百合を撮ったものですが、手前にたくさん咲いている百合を前ボケに入れています。中央の百合の花までの距離は10mほどだったと思います。ボケをできるだけ大きくするために絞りは開放です。これだけ離れると大輪の百合も被写界深度内に収まってくれます。
 全体的にふわっとしたボケ味ではありますが、背後を見ると二線ボケが感じられます。それほど強烈な二線ボケではありませんが、やはり、画が汚くなってしまい気になります。
 遠景はあまり得意ではないレンズというレビューも見られますが、ひどい写りをするわけでもなく、十分実用に耐えるレベルだと思っています。

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 このレンズ、マクロレンズというにはちょっと力不足という感は否めませんが、半世紀以上も前に発売されたことを考えると素晴らしいレンズと言えるのではないかと思います。画角的には標準レンズでもなく中望遠レンズでもない、ちょっと中途半端な焦点距離ということもあって、使用する頻度はあまり高いとは言えません。ですが、ボケ味は結構気に入っていて、二線ボケの傾向はあるものの、それを注意すれば素直できれいなボケが得られるレンズではないかと思っています。
 また、解像度についても十分に及第点だと思っていて、小さな野草なども細部までしっかりと描写してくれます。

 私の持っている後期モデルの希望小売価格は90,000円(税抜き)でしたが、それが今や中古市場で数千円で手に入れることができます。マクロレンズというカテゴリーで販売しているのでちょっと損をしているように感じます。マクロではなく、通常の準中望遠レンズとしておいた方が受けが良かったのではないかと思ったりもします。

(2025.9.16)

#PENTAX #PENTAX67 #テストチャート #ペンタックス #ペンタックス67

第196話 アグファ AGFA COPEX RAPID 50 モノクロフィルムのリバーサル現像

 第183話でアグファのCOPEX RAPID 50というモノクロフィルムについて書きました。もともとはマイクロフィルムとして使われてきたというだけあって非常にコントラストの高いフィルムであり、一般の撮影用にはあまり向いていないという感想を持ちました。そのため、その後は使うこともなかったのですが、メリハリの効いた描写がとても印象的で、このフィルムをリバーサル現像したらどんな感じに仕上がるのだろうという思いがむくむくと頭を持ち上げてきました。
 ということで、アグファのモノクロフィルム、COPEX RAPID 50をリバーサル現像してみました。

COPEX RAPID 50 を使っての撮影

 今回使用したフィルムはブローニー判の120サイズです。2025年7月1日現在、1本1,600円前後で購入することができます。以前購入した時は1,300円ほどでしたから、この半年ほどの間で2割以上、値上がりしているようです。

 使用したカメラはPENTAX 67Ⅱ、使用したレンズはPENTAX 67用の75mm、105mm、200mm、300mmで、撮影時のISO感度は表記通り、ISO50としました。
 67判のカメラで使用すると10枚の撮影が可能で、被写体をいろいろ選択するほどたくさんは撮れないのですが、できるだけ異なるシチュエーションを選んでみました。

リバーサル現像のプロセス

 現像プロセスはイルフォードが推奨する手順に準拠していますが、使用する薬剤や処理時間等は適宜変更を加えています。
 実際に使用した薬剤は以下の通りです。

 【第1現像液】
  コダックのD-76に準拠して自家調合した薬剤を使用しました。
  今回の現像で使用する現像タンクはパターソンのPTP115というタイプで、これに必要な現像液の量は500mlです。したがって、調合した薬剤とその量は以下の通りです。

  無水亜硫酸ソーダ : 50g
  硼砂 : 1g
  メトールサン : 1g
  ハイドロキノン : 2.5g

  これらを500mlの水に溶解して現像液を作りました。これを希釈せずに使用します。
  なお、このD-76に準拠した現像液の調合についてご興味のある方は、下記のページをご覧ください。

  第187話 モノクロフィルム現像用「D-76準拠」現像液の自家調合

 【漂泊液】

  漂泊液は以下の薬剤を使用しています。

  過マンガン酸カリウム水溶液 20ml + 水 230ml
  硫酸水溶液(10%) 25ml + 水 225ml

  これらを混合して500mlの漂泊液を作ります。

 【洗浄液】

  洗浄液の調合は以下の通りです。

  ピロ亜硫酸ナトリウム 12.5gを500mlの水に溶解します。

 【第2現像液】

  本来、第2現像液は第1現像液よりも希釈度を高めたもの、つまり濃度の薄いものを使用するように推奨されていますが、今回は第1現像液をそのまま使用し、現像時間で調整をすることとしました。

 【定着液】

  今回使用した定着液は以下の通りです。

  フジックス定着液 170ml + 水 330ml

 こうして調合したそれぞれの薬剤は1,000ml用のビーカーに入れ、それを水温20℃に保たれたバットの中にいれ、液温が20℃になるようにしています。なお、現像液は液温が変わると現像時間に影響が出るので、できるだけ正確に20℃を保つようにしたいのですが、それ以外の薬剤は多少の温度の上下があっても問題はないと思います。

 次に、実際の現像プロセスですが、以下のような手順で行ないました。

  ・第1現像: 5分20秒 最初の1分は連続倒立撹拌、以後、1分ごとに5秒の倒立撹拌
  ・水洗: 流水で5分
  ・漂泊: 5分 連続撹拌
  ・水洗: 流水で1分 漂泊液の紫色が消えればOK
  ・洗浄: 3分 連続攪拌
  ・水洗: 流水で1分
  ・再露光: 片面4分 (2分ずつ2回)
  ・第2現像: 3分 最初の1分は連続倒立撹拌、以後、1分ごとに5秒の倒立撹拌
  ・水洗: 流水で1分
  ・定着: 3分 最初の30秒は連続撹拌、以後、30秒ごとに5秒の撹拌
  ・予備水洗: 流水で1分
  ・水洗促進: 1分 連続撹拌
  ・水洗: 流水で20分
  ・水滴防止: 30秒

 第1現像、第2現像ともに倒立撹拌を行なっていますが、必ずしも倒立撹拌である必要はないと思います。ただし、倒立撹拌の方が現像液の濃度のムラはできにくいのではないかと思われます。
 漂泊と洗浄はあまり強い水流を起こし過ぎると銀粒子が剥離してしまう可能性があるので、倒立撹拌は避けた方が良いかもしれません。
 第2露光は一般的な家庭用の蛍光灯(40~60W)を使用した場合、ISO100フィルムで片面1~2分程度です。今回使用したフィルムはISO50なので片面4分としました。この時間が短すぎると残ったハロゲン化銀が完全に露光しきれず、モヤっとしたような仕上がりになってしまうことがありますので、多少長めに露光した方が無難です。
 また、最後の水洗時間が短すぎるとフィルムが黄変してしまうことがあるので、長めに確実に行なうことが望ましいと思います。

 水滴防止液にくぐらせた後は埃の少ない場所につるして自然乾燥させます。フィルムの水滴をスポンジなどでふき取る方もいらっしゃいますが、私はほったらかし乾燥です。

COPEX RAPID 50 リバーサル現像した作例

 このフィルムをリバーサル現像したのは初めてですが、仕上がったポジ原版を見ての第一印象は見事に引き締まった黒が出ているということです。ネガ原版を見ても黒が引き締まっているであろうことは容易に想像できるのですが、実際にポジを見てみるとそれを視覚で確認することができます。
 ポジ原版をライトボックスに乗せた状態はこんな感じです。

 フィルムのカールが強くてクルンとなってしまうのでスリーブに入れての撮影です。そのため、若干画質が悪いですが、締まりの良い感じがわかると思います。

 まず1枚目は、空き地に放置された農機具のようなものを撮ってみました。

 この日は薄曇りでそれほどコントラストが高い状態ではないのですが、やはり、このフィルムで撮ると高コントラストな仕上がりになります。画下側のシロツメクサの葉っぱや上側の杉のような樹の葉っぱなどは比較的中間調として表現されていますが、農機具のボディの白い部分などは真っ白になっています。一方、右上の建物の窓や農機具の下で陰になっているところなどは黒くつぶれていて、全体として目がちかちかするような高コントラストな画像です。
 掲載した写真は解像度を落としてあるのでわかりにくいと思いますが、細かなところまでくっきりと描写されていて解像度の高さを感じます。

 右下のあたりを切り出したのが下の写真です。

 シロツメクサの葉脈や農機具のパーツに刻印された文字などもくっきりと認識できるので、十分な解像度が出ていると思います。また、粒状感もあまり感じられません。

 2枚目は、神社の参道にあった石灯篭です。

 1枚目の写真よりもさらにコントラスが低い状態です。実際にはこの写真で見るよりもはるかに暗い感じの場所でしたが、それでもコントラストが高く表現されています。石灯篭の明るい部分は飛び気味ですが、石の質感はしっかりと表現されていて、やはりこのフィルムの解像度の高さがうかがえます。

 次は桜の葉っぱを曇り空に抜いて撮影したものです。

 中間調がほとんどない状態ですが、それでも枝の先の方で重なりのない葉っぱは中間調が残っています。葉脈もしっかりと確認することができます。
 虫に食べられて葉っぱに空いた穴が面白いパターンを作り出していました。
 このようなシチュエーションでも、一般的なモノクロフィルムを用いればもっと中間調が豊かに出て柔らかな感じに仕上がると思われます。

 最後はテーブルフォトとして、室内でシーサーの置物を撮った写真です。

 余計なものが入り込まないように黒い背景紙を使っており、写真の左方向から照明を当てていますが、ちょっと照明が強すぎたようです。シーサーの体の部分の質感が損なわれており、露出ミスといったところです。
 その分、彫りが深く見えるかもしれませんが、間接照明にすべきだったと思います。

 前回、ネガ現像した際に用いた現像液はSilverSaltでしたが、今回はD-76準拠の現像液で、しかもリバーサル現像なので単純に比較することはできませんが、やはりSilverSalt現像液の方が綺麗な描写をしていると感じます。
 また、撮影時の露光条件は前回と同じですが、ハイライト部の飛び具合が今回の方が明らかに強い感じです。これは撮影時の条件の差ではなく、現像の違いではないかと思われます。
 白が強く出過ぎているということは、第1現像の時間が長すぎたことが考えられます。つまり、第1現像ではネガ画像が生成されますがこれが強く出過ぎてしまい、漂泊で洗い流されてしまったため、白飛びが強く出たと思われます。第1現像の時間を5分20秒と設定しましたが、4分50秒ぐらいが妥当だったかもしれません。

 ただし、リバーサル現像してもこのフィルムらしい高コントラストの像は十分に保たれており、大きな品質の低下も感じられませんでした。
 黒と白だけで構成されたパターン的な描写を狙うのであれば効果的なフィルムではあると思いますが、やはり景色という視点からすると扱いの難しいフィルムです。

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 今回使用したCOPEX RAPID 50に限らず、モノクロフィルムをリバーサル現像するとポジ原版が得られるので、ライトボックスなどでそのまま鑑賞することができます。ネガを見るのとは全く違った感覚です。
 しかし、リバーサル現像してしまうと通常の紙焼き(プリント)はできなくなってしまいます。スキャナなどで読み取ってデータ化する分には問題ありませんが、紙焼きするのであれば通常のネガ現像にしておくべきで、私も時々、テスト的にリバーサル現像する程度です。
 また、スライドプロジェクターのような機器で大きく投影するにはポジ原版が必要ですが、残念ながら私はそのような機器を持ち合わせていません。スクリーンに大きく投影されれば、昔のモノクロ映画を見ているような感じで感動するかもしれません。

 なお、機会があればSilverSaltを使ってリバーサル現像してみたいと思います。

(2025.7.5)

#AGFA #COPEX_RAPID #D76 #アグファ #モノクロフィルム #リバーサル現像

第192話 ローライ Rollei のモノクロフィルム SUPER PAN 200(120) の使用感

 ローライブランドではたくさんのフィルムが販売されていますが、このSUPER PAN 200フィルムはずいぶん前に数回使っただけで、それ以降は使うことがありませんでした。どこが気に入らないというような理由があったわけではありませんが、使い慣れていたフィルムを使い続けていたというだけのことです。
 しかし、数年前によく使っていた富士フイルムのACROSもACROSⅡになり、驚くほど価格が高騰してしまったので、その代替となるフィルムを物色し始めました。
 そんなわけで、久しぶりにローライのSUPER PAN 200を使ってみました。

ローライのスーパーパンクロマチックフィルム

 このフィルムはもともとアグファが出していたフィルムのようで、それを新たにローライのブランドとして発売しているようです。箱には、「 Made in Belgium」と書かれていますので、製造はアグファ・ゲバルト社で行なっているようです。
 大きな分類ではパンクロマチックのモノクロフィルムに属するのでしょうが、750nm付近の光まで反応するとのことで、赤外線フィルターを用いることで赤外線写真の撮影も可能なようです。パンクロマチックに「スーパー」が冠されているのはそのような理由によるものなのでしょう。そのためか、フィルムはかなり遮光性の高そうな、そして、なんの愛想もないパッケージに入っています。
 ISO感度は200なので使いやすいフィルムではないかと思います。

 今回使用したのはブローニーの120サイズフィルムです。1本1,500円ほどで購入しました。一般的なISO-100のフィルムに比べると少しお高めといった感じです。

 ローライから出されているデータシートを見てみると、ISO 125~250まで適応可能で、解像力は180本/mmとなっています。データ上は富士フイルムのACROSⅡとほぼ同じ解像力のようです。
 そして、「高感度の白黒ネガフィルム。多彩でコントラストの高い被写体の撮影に最適です。特に低照度条件で威力を発揮します。頼りになる万能フィルムです。」と書かれています。自信満々のようです。

現像に関するデータ

 このフィルムの現像は一般的に出回っている多くの現像液で問題なくできるようで、今回はSilverSalt現像液を使用しました。
 実際の現像条件は以下の通りです。

  ・現像液 : SilverSalt
  ・希釈 : 1 + 25 (原液1に対して水25)
  ・温度 : 20度
  ・現像時間 : 12分
  ・撹拌 : 最初に30秒、その後60秒ごとに2回倒立撹拌
  ・停止 : 60秒
  ・定着 : 7分
  ・水洗 : 10分

 使用した現像タンクはパターソンのPTP115というモデルで、必要な現像液の量は約500mlです。SilverSaltの原液20mlと水500mlを合わせて520mlの現像液を調合しました。

 液温が下がらないようにバットに20℃の水を張り、その中に電熱器を入れて20℃を保つようにして、そこに現像タンクを入れておきました。

 なお、停止液と定着液は富士フイルムの製品を使いました。

ローライ SUPER PAN 200 の作例

 今回の撮影に使用したカメラはMamiya 6 MF、使用したレンズは55mmと75mmの2本です。撮影した中から5枚の写真をご紹介します。

 まず1枚目は、都庁の都民広場で撮影したものです。

 右側から日差しが差し込んでいるので画の中央部分と右端の部分がかなり明るくなっています。地面に貼られているタイルの様子がかろうじてわかりますが、この画の中ではいちばんのハイライト箇所でしょう。
 一方、極端なアンダーという箇所はなく、全体的には比較的中間調で構成されていると言えると思います。確かに解像力は高いという印象を受け、特に柱の石の質感は良く出ているのではないかと思います。
 また、白から黒へのグラデーションも滑らかで、高い解像度を持ちながらも硬すぎることのない描写といった感じです。掲載した写真ではわかりにくいと思いますが、粒状感もほとんど気になりません。
 
 2枚目は近所の公園で撮影した写真です。

Created with GIMP

 だいぶ日が傾いてきている時間帯で、木々の影も落ちていて、薄暗いというほどではありませんが光量の少ないシチュエーションです。
 この写真は明らかに露出不足です。作画意図を持ってアンダー気味にしたのではなく、もう少し明るく撮影したつもりだったのですが、結果的にはだいぶ暗い仕上がりになってしまいました。たぶん、意図した露出よりも1/2~2/3段ほどアンダーだと思います。1枚目の写真に比べるとディテールの描写が明らかに甘い感じですが、黒くつぶれてしまうほどではなく、写真全体の雰囲気はこの方が良かったかも知れません。

 そして3枚目ですが、公園内の雑木林を撮ってみました。

 この季節は木々に葉っぱがないので林の中まで光が差し込んでおり、結構明るい感じがします。日の当たっていない木の幹とのコントラストがかなり高い状態です。
 木の根元にある枯草が鮮明に写っているので解像度の高さは感じますが、画の上半分、折り重なる枝で白と黒のメッシュのようなパターンが構成されているあたりを見ると、何となく描写が甘い感じです。解像度が低いというわけではなさそうで、白く輝いている細い枝の部分のディテールがうまく表現されていないように見えます。
 また、左側の2本の大きな木の幹は黒くつぶれてしまっており、幹の質感はほとんどわからない状態です。コントラストが高い状態はあまり得意ではないのかもしれません。

 それでは、さらにコントラストの高い状態をということで4枚目の写真がこちらです。

Created with GIMP

 これは、公園内の池の中に自生している葦の仲間だと思います。もちろん、この時期なのですっかり枯れています。そこに光があたっているのですが、背後の林や池は日陰になっているのでコントラストの高い状態です。
 光があたっている枯れた葦の茎は白く輝き、かなり硬い感じの描写になっています。白飛びしすぎないようにと露出を抑え気味にしているのですが、それでもこの状態で、金属の棒でも写したのではないかと思えるほどです。
 一方、背後はかなり暗く落ち込んでおり、かろうじて木があることはわかりますが、それ以上の細部は判別不能といった感じです。

 最後、5枚目はコントラストの低い状態をということで、海岸から突き出ているごつごつした岩場を撮影したものです。

 この日は曇り空で、まんべんなく光が回っているという状況です。海も何となくさえない色をしていて、岩場も黒い岩と白い岩が層をなしているような場所ですが、コントラストは低めです。
 解像力も申し分のない状態で、全体としてなだらかな階調の変化が見られます。
 また、白飛びしている箇所や極端に黒くつぶれているところもなく、豊かな再現性という印象です。

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 解像力も高く粒状感も気になることもなく、描写性能としては高いフィルムだと思うのですが、シャドー部の描写はあまり得意ではないように感じます。ハイライト基準で露出を決めるとシャドー部は本当に黒くつぶれてしまいます。確かに黒はきれいに出ていますが、ディテールがほとんどわからなという状態です。
 また、ISO-200となっていますが、実効感度は125~160くらいではないかと思われ、特に低照度状態で撮影する場合はさらに実効感度は下がる(たぶん、100とか80)感じです。
 逆に露出をかけすぎるとハイライト部がとても硬調な感じになってしまい、写真全体の印象が変わってしまいます。
 極端にコントラストの高い状態を避け、1/2~2/3段ほど露出を多めにかけると、なだらかできれいな描写が得られるように思います。

 なお、今回はsilverSalt現像液を使いましたが、別の現像液だと様子も変わってくるかも知れません。

(2025.3.30)

#モノクロフィルム #ローライ #Rollei

第188話 PENTAX67 ペンタックス67用 リアコンバータ2X

 PENTAX67用には2種類のコンバージョンレンズが用意されていました。いずれもレンズとボディの間に挿入するタイプで、「リアコンバータ REAR CONVERTER」という商品名で、1.4倍(1.4X)用と2倍(2X)用がありました。
 ズームレンズが主流になってからコンバージョンレンズが使われる頻度は急激に下がったように思いますが、これ1本でレンズの焦点距離を伸ばすことができるわけですから、結構重宝された時代もあったと思います。特にPENTAX67用にズームレンズが出たのは1990年代の後半で、それまでは単焦点レンズのみだったので、それなりの需要はあったのではないかと思います。
 私も2本のリアコンバータを持っていましたが、実のところ使用頻度はかなり低く、今でも新品のようにきれいな状態を保っています。

PENTAX67用リアコンバータ2Xの主な仕様

 最初のPENTAX67用リアコンバータは「T6-2X」という製品だったらしいのですが、私はそれを使ったことはもちろん、現物を見たこともありません。私の持っているリアコンバータは2代目ということだと思います。当時の製品カタログを見ると、110,000円(税別)という価格が記載されています。結構なお値段だと思います。
 取扱説明書等を放り込んである箱をあさったところ、リアコンバータの取説が出てきたので、そこから主な仕様を転載しておきます。

  ・倍率 : 2倍(2X)
  ・レンズ構成 : 4群6枚
  ・絞り方式 : 自動
  ・測光方式 : 開放
  ・大きさ : φ91 x 71.5mm
  ・重さ : 560g

 使用できるレンズはフィッシュアイ35mmから400mmまでで、500mm以上のレンズやシフト75mm、レンズシャッター内蔵のレンズ等は使用不可、もしくは推奨しないとなっています。レンズの構造上、取り付けができなかったり、画面周辺部で光量不足が生じることが理由のようです。
 PENTAX67用レンズのほとんどは外観が黒色に塗られていますが、リアコンバータはグレー(灰色)に塗装されています。
 コンバージョンレンズなので操作するような箇所はありませんが、レンズの絞りや開放測光に連動するための機構が組み込まれています。

リアコンバータの基本的なふるまいとレンズ構成

 コンバージョンレンズには大きく分けて倍率を下げるワイドコンバージョンレンズと倍率を上げるテレコンバージョンレンズ、そして、レンズの前に取り付けるフロントコンバージョンレンズとレンズ後端に取り付けるリアコンバージョンレンズがあります。
 PENTAX67用のコンバージョンレンズはテレタイプ、そしてリアタイプということになります。

 テレタイプのコンバージョンレンズの基本的なふるまいは、マスターレンズからの光を凹レンズで広げて、撮像面(フィルム)に入る光の範囲を狭く(小さく)するというものです。したがって、テレタイプのコンバージョンレンズは全体が凹レンズ、すなわちマイナスのパワーを持ったレンズということになります。

 下の図はテレコンバージョンレンズのふるまいを模式図にあらわしたものです。

 左側のマスターレンズからの光を凹レンズによっていったん広げることで、合焦面をマスターレンズよりもさらに後方に伸ばしています。
 マスターレンズからの光を広げるだけであれば凹レンズだけでも可能ですが、像面平坦性を確保するために凸群と凹群の組み合わせになっているものがほとんどのようです。

 PENTAX67用の2Xリアコンバータも同様の構成を採用していることは知っていたのですが、実際のレンズ構成が不明だったので分解してみました。
 その結果、上図の下側の図に示すようなレンズ構成であることがわかりました。

 取扱説明書には4群6枚構成となっているので、てっきり2群3枚構成のユニットが2つ存在しているものとばかり思っていましたが、実際には前側ユニットが1群3枚構成の凸群、後側ユニットが3群3枚構成の凹群となっていました。

 鏡胴から取り出したレンズユニットが下の写真です。

 写真の上側がマスターレンズ側、下側がボディ側になります。

 ここからレンズを取り出したのが下の写真です。

▲左から凹群の凸レンズ、凹レンズ、凹レンズ、右端が凸群のレンズ

 左から3枚が後側ユニット(凹群)のレンズ、いちばん右側が前側ユニット(凸群)のレンズです。
 後側ユニット(凹群)の3枚のレンズのうち、いちばん外側の1枚は凸レンズで残りの2枚は凹レンズです。そして、前側ユニット(凸群)は3枚のレンズが張り合わせてあるので詳しい構成は不明です。
 メーカーによっては前群ユニットを凹群、後群ユニットを凸群としているコンバージョンレンズもあるようで、それぞれ長所短所があるのかもしれませんが、詳しいことは私にはわかりません。いずれにしてもマスターレンズの特性を損なわないようにしながら倍率だけを変化させるということが求められるのだろうと思います。
 あらためて言うまでもありませんが、倍率が上がった分、暗くなるので露出の補正が必要になります。2倍のコンバージョンレンズの場合、露出は4倍(2段)にする必要があります。

 余談ですが、レンズユニットを分解していて思ったのですが、極めて高精度に加工されている感じです。冬場で室内の温度も若干低いことも影響しているのかも知れませんが、レンズを押さえているリングを外してもレンズがぴったりとはまっていて出てきません。ドライヤーで温めてようやく取り出せるといった状態です。
 レンズをはめる時もしかりで、ドライヤーで温めて枠を膨張させておかないとレンズがはまってくれません。

リアコンバータ2Xの写りについて

 では、リアコンバータ2Xを装着することで、マスターレンズの写りに影響があるのかどうかということで、いくつかのテストチャートを使って撮影をしてみました。
 実際に使ったレンズは「SMC TAKUMAR 6×7 105mm F2.4」という67判では標準レンズといわれている焦点距離のものです。

 まずは、自作のテストチャート用の目盛り板を撮影したものです。

▲左:105mm単体 右:105mm+リアコンバータ

 左側が105mmレンズ単体で撮影したもの、右側がリアコンバータを装着して焦点距離を210mm相当にして撮影したものです。いずれも約5mの距離から撮影しており、そこからほぼ同じ範囲を切り出して並べたものです。
 厳密にはわずかな違いがありますが、目盛り0を中心にして前後のボケ方はほとんど変わらないといってよいと思います。

 ちなみに、105mmレンズにリアコンバータを装着した場合とほぼ同じ焦点距離の200mmのレンズで撮影したものと比較したのが下の写真です。

▲左:105mm+リアコンバータ 右:200mm

 左側が105mmレンズにリアコンバータを装着して撮影、右側が200mmレンズ単体で撮影したもので、撮影距離は同じく約5mです。
 明らかに右側の200mmレンズで撮影した方がボケ方が大きくなっています。

 次に、ボケの具合を見るためにテストチャートを撮影・比較してみます。
 比較用に使用するテストチャートはこちらです。

 これを105mmレンズ単体とリアコンバータを装着した場合について、それぞれ前ボケ、後ボケになるような位置で撮影したのが以下の写真です。
 まず、105mmレンズ単体で、絞りF2.4(開放)で撮影した前ボケ、後ボケ状態のテストパターンです。

▲105mm単体 F2.4 前ボケ
▲105mm単体 F2.4 後ボケ

 1枚目が前ボケ状態、2枚目が後ボケ状態で、レンズからピント位置までの距離は約5m、そこから前後に30cmずらした状態で撮影したものです。

 そしてこちらが105mmレンズにリアコンバータを装着して撮影したものです。撮影条件は同じです。

▲105mm+リアコンバータ F2.4 前ボケ
▲105mm+リアコンバータ F2.4 後ボケ

 同様に1枚目が前ボケ状態、2枚目が後ボケ状態です。

 レンズ単体の方がボケの中にわずかに芯が残っているような印象を受けますが、極端に大きな違いは感じらません。

 次に絞りをF8にして撮影した写真の比較です。
 1枚目が105mmレンズ単体の前ボケ状態、2枚目が後ボケ状態、3枚目が105mmにリアコンバータを装着しての前ボケ状態、4枚目が後ボケ状態の写真です。

▲105mm単体 F8 前ボケ
▲105mm単体 F8 後ボケ
▲105mm+リアコンバータ F8 前ボケ
▲105mm+リアコンバータ F8 後ボケ

 こちらは絞り開放時よりもさらに似通っている感じで、ほとんど差がわかりません。
 リアコンバータは倍率を変えるだけでマスターレンズの特性を極力保持するという点からすると、それに十分に応えているように思います。倍率が上がったのは良いけれど、写りが大きく変わってしまったというのでは有難くありません。

 最後に、解像度用のテストチャートを撮影してみましたので、それも掲載しておきます。
 1枚目が105mmレンズ単体で撮影、2枚目がリアコンバータを装着しての撮影です。いずれも絞りはF4、撮影距離は約5mです。撮影範囲が異なるので、ほぼ同じ範囲を切り出しています。

▲105mm単体 F4
▲105mm+リアコンバータ F4

 コンバージョンレンズを入れると多少なりとも画質が落ちるというイメージがあったのですが、ほとんど影響がないのではないかと感じました。もっと厳密に計測すれば差は出るのでしょうが、実用上はほとんど問題のない範囲ではないかと思います。
 コンバージョンレンズとはいいながら6枚ものレンズで構成されていて、今回、マスターレンズとして使用したSMC TAKUMAR 6×7 105mm も5群6枚構成ですから、それと同等の枚数で構成されているということになります。性能が高くてもうなずける気がします。

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 冒頭でも書いたように、私はリアコンバータを使うことが非常に少なく、そのいちばんの理由は面倒くさいからということです。
 確かに、リアコンバータを1本持っていけばレンズの焦点距離のラインナップが2倍になるわけですから便利ではあります。しかし、リアコンバータをはめたり外したりという面倒くささが優先してしまい、つい敬遠しがちになってしまいます。
 なお、2倍のリアコンバータを使用する場合、露出を4倍かけなければなりませんが、私の場合、風景が主な被写体なのであまり気になることはありません。

 また、マスターレンズの画質を落としたり特性を変えたりしたくないという思いもあり、レンズはできるだけ素のままで使いたいという思いもあります。
 しかし、今回、非常に簡易的ではありますが比較撮影をしてみて、画質に関しては危惧するほどではないというのが実感です。あとは面倒くさいという気持ちが払しょくできれば、リアコンバータの活躍頻度も上がるかもしれません。

(2025.1.16)

#PENTAX67 #テストチャート #ペンタックス67 #ボケ #レンズ描写

第183話 アグファ AGFA のモノクロフィルム COPEX RAPID の使用感

 アグファ AGFA といえば世界で最初に内式のリバーサルフィルムを製造・販売した会社で有名ですが、いまから30年ほど前、アグファからはSCALA200というモノクロのリバーサルフィルムが販売されていました。個性的なフィルムを出す会社という印象がありました。今はADOXから若干のモデルチェンジをした製品がSCALAブランドで販売されているようです。
 実は、前々からAGFA COPEX RAPID というフィルムが気になっていたのですがなかなか使う機会がなく、ようやくそのフィルムを使って撮影が実現できましたのでご紹介します。

アグファのドキュメント用フィルム

 AGFA COPEX RAPID というフィルムはドキュメント撮影用というカテゴリーに分類されるようで、フィルムケースのラベルには「MICROFILM」と書かれています。すなわち、風景やポートレートなどを撮る一般的なモノクロフィルムではなく、本来は書類や図面などを記録するためのフィルムということのようです。
 ISO感度は50で、マイクロフィルムとしてみれば感度は高いと思いますが、一般的なフィルムからすると低感度です。

 今回使用したのはブローニーの120サイズフィルムで、通販で1本1,300円ほどで販売されていました。1本ずつプラスチックケースに入っており、そのキャップの上部には「Rollei」のロゴが入っています。
 また、ラベルには「MANUFACTURED BY AGFA GEVAERT N.V.」とあるので、フィルムの供給はドイツのマコという会社が行なっていますが、実際に製造しているのはベルギーにあるアグファ・ゲバルト社のようです。

 マイクロフィルムというとその用途から高い鮮明度と解像力が求められており、このフィルムも鮮明度や解像力は優れているようで、販売元のデータを見ると解像力は600本/mmとなっています。富士フイルムのモノクロフィルムACROSⅡの解像力はハイコントラスト時で200本/mmとのことですから、いかにCOPEX RAPIDの解像力が高いかがわかります。
 実際にウェブサイトなどに掲載されている作例を見ても、とてもハイコントラストで高解像度の写真に仕上がっていて、やはり、一般的なモノクロフィルムとは別物といった感じです。

 ドキュメント用フィルムだからといって風景が撮れないわけではないので、今回は神社仏閣と野草を対象に撮影をしてみました。

現像に関するデータ

 このフィルムの現像は専用の現像液として販売されている「シュプール Dokuspeed SL-N」が推奨となっていますが、私は持ち合わせていないので、今回はSilverSalt現像液を使うことにしました。
 SilverSaltは比較的使う頻度が高く、使いかけのボトルが手元にあるのですが、COPEX RAPIDを現像する際のデータがありません。あちこち調べてみたのですが的確な情報を得ることが出来ず、環境的にいちばん似通っているであろうと思われるデータをもとに現像条件を決めました。

 ということで、今回の現像条件は以下の通りです。

  ・現像液 : SilverSalt
  ・希釈 : 1 + 30 (原液1に対して水30)
  ・温度 : 20度
  ・現像時間 : 9分30秒
  ・撹拌 : 最初に30秒、その後60秒ごとに2回倒立撹拌

 使用した現像タンクはパターソンのPTP115というモデルなので、必要な現像液の量は約500mlです。SilverSaltの原液17mlと水510mlを合わせて527mlの現像液を調合しました。

 因みに、135フィルムの場合、撹拌は1回で大丈夫なようです。

 先日までの猛暑もひと段落して室内温度もそれほど高くないので、現像液の温度を20度に保つにはありがたい気温になっていました。いったん20度になれば、20分ほどであればそのまま放っておいても液温はほとんど変わることはありません。

 現像後の現像液はピンク色に染まっていました。
 また、フィルムベースはほぼ透明ですが、非常にカールが強い傾向にあります。乾かしてもクリップを外すとくるんと丸まってしまい、スリーブに入れてもスリーブ自体が丸まってしまうほど強力です。

 なお、停止液と定着液は富士フイルムの製品を使いました。

COPEX RAPID の作例

 現像が成功したのか、はたまたイマイチだったのか、正直なところ判断がつきませんが、まずまずの像が得られているようです。
 今回の撮影に使用したカメラはPENTAX67、使用したレンズは105mm、200mm、300mmの3本、そして一部に接写リングを使用しています。

 まず1枚目は、神社の参道の入口にある狛犬を撮ったものです。

▲PENTAX67 SMC PENTAX-M 67 300mm F5.6 1/250

 狛犬とその隣にある石灯籠などには陽が当たっていますが、背後の神社の森は日陰になっていて、コントラストの高い状態です。肉眼では背後の森もしっかりとわかる明るさなのですが、写真ではほとんど黒くつぶれています。
 こうしてみてみると、確かにハイコントラストに仕上がっているのがわかります。ローライのRPX25というフィルムもハイコントラストの傾向がありますが、それよりももっとシャープな印象があります。

 2枚目は、お寺の山門脇の草むらに置かれていた小さなお地蔵様です。

▲PENTAX67 SMC PENTAX67 200mm F5.6 1/500

 右側のお地蔵様にピントを合わせていますが、何と言ったらよいのか、お地蔵さまも着けている前掛けや帽子などの質感さえも変わってしまっているような感じを受けます。柔らかさのようなものはどこへやら失せてしまい、金属で作られたオブジェのようにも見えてきます。

 そして3枚目、神社の拝殿を撮影しました。

▲PENTAX67 smc TAKUMAR 67 105mm F16 1/8

 少しコントラストの低い被写体をということで、太陽に雲がかかっている状態で神社の拝殿を正面から写しました。画の下半分はだいぶ明るいのですが、上に行くに従って陰になっているので徐々に暗くなっています。
 前の2枚に比べると確かにコントラストは低いのですが、シャープさはしっかり残っているというか、とにかくエッジがしっかりと効いているといった感じの描写です。正面の格子戸や賽銭箱、壁板、回廊に張られた床板の木目など、まるで鋭い刃物の先で線を引いたような感じで写っています。

 次に、野草も何枚か写してみたのですが、はっきり言ってこちらの方が驚きました。

 まずは道端に咲いていた野菊、多分、柚香菊(ユウガギク)だと思います。

▲PENTAX67 smc PENTAX67 200mm F4+1/2 1/500

 順光状態での撮影なので背後の草むらももっと明るいのですが、花弁だけがひときわ白く、まるでたくさんの小さな花火が開いているようです。花の質感が失われており露出オーバー気味ですが、それを差し引いても驚くようなハイコントラストです。

 そしてこちらも野菊の仲間、野紺菊(ノコンギク)だと思われますが、数輪だけをアップにしてみました。

▲PENTAX67 smc PENTAX67 200mm F4+1/2 1/500 EX3

 前の写真に比べると光が弱いのと、こちらは露出オーバーにはなっていないのでコントラストは若干低めですが、作り物のような印象を受けます。やはり単に鮮明度が高いというだけでなく、エッジがピンと立っているという感じです。花特有の柔らかさなありませんが、これはこれで一つの表現方法かも知れません。

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 今回は120フィルム1本、10コマだけの撮影でしたが、COPEX RAPIDというフィルムの特性を垣間見るには十分すぎるくらいでした。特に花を撮った写真の描写にはびっくりといった感じです。
 確かに風景写真や花の写真には不向きなフィルムかも知れませんが、一般的なモノクロフィルムでは味わえない独特な描写はとても印象的です。
 ただし、初めて使ったフィルムなので現像の特性等もわかっておらず、希釈率や現像時間、温度などを変えて何度か試してみる必要はありそうです。

 推奨されている現像、シュプール Dokuspeed SL-Nを使えばもう少し違う描写になるかも知れませんし、普段よく使っているD-76とかID-11などを使って現像すれば全く違う感じに仕上がるかも知れません。何種類かの現像液で試してみたい気もしています。

(2024.10.5)

#AGFA #アグファ #PENTAX67 #ペンタックス67 #モノクロフィルム #COPEX_RAPID

第180話 野草撮影にあると便利な小物のあれこれ

 私が撮影対象としていちばん多いのは自然風景ですが、次いで多い対象物(被写体)が野草です。
 野草は背丈が低く、しかも、草むらの中などにひっそりと咲いていることが多いので、どうしてもローポジションでの撮影になりますし、マクロ撮影とまではいかなくてもかなりの近接撮影になるとこが多いです。また、光の具合を調整したりすることも多く、そのための小物類もいくつか持ち歩いています。
 私が野草撮影に使っているカメラは主にPENTAX67、およびPENTAX67Ⅱですが、今回はこれらのカメラでの撮影の際に用いている小物類をご紹介します。

クランプヘッド

 野草撮影で最も苦労するのが、カメラをいかに低いポジションに構えられるかということです。
 PENTAX67は言わずと知れた中判のフィルムカメラで、レンズも含めるとかなりの重量級となるため、三脚も大型のものを使っています。大型の三脚は、脚を目一杯広げて低くなるようにしても、カメラの位置は地上から40~50cmほどが精一杯という状況です。
 そこで、三脚の脚の部分にカメラを設置できるようなクランプヘッドを使用しています。

 私が使用しているこのクランプヘッドは改造品で、もともとはスリック製の「クランプヘッド38N」という製品と、マンフロット製の「スーパークランプ」という製品を組み合わせて作ったものです。これについては下記のページで紹介しています。

  「スリッククランプヘッドと超ローアングル撮影」

 この自作クランプヘッドを三脚の脚の最下部に取り付けると、最低地上高が数cmという高さでの撮影が可能になります。背丈が数cmしかないような小さな野草でも、ほぼ同じ目線で撮影することができます。
 このスリックのクランプヘッドの難点は、チルトとサイドチルトはできるのですがパンができないということです。つまり、カメラを上下に振ったり水平を調節したりはできるのですが、左右に振ることができません。
 これを解決するにはここに自由雲台のようなものを取付けるしかないのですが、そうすると最低地上高が高くなってしまい、地面すれすれでの撮影ができなくなってしまいます。

アングルファインダー

 クランプヘッドを用いることで低いポジションでの撮影が可能になりますが、そうすると、地面に腹ばいにでもならない限り、カメラのファインダーを覗くのがとても難儀になってしまいます。
 そこでカメラのファインダーを上から覗くことができるアングルファインダーを使用しています。

 ファインダーからの光を直角に曲げてくれるものですが、カメラのファインダーを中心に360°回転するようになっているので、上からも横からも覗くことができます。また、視度調整機能が備わっているので、自分の視力に合わせてくっきりとした像を見ることができます。
 カメラを地面すれすれに構えた状態であっても、しゃがみ込めばファインダー内を見ることができるのでとても便利です。
 私が使っているPENTAX67用のアングルファインダーは、カメラ背面のファインダー窓に嵌まっている視度調整レンズを外し、そこにアングルファインダーをねじ込むという方式なので、取り付け取外しが少々面倒です。野草を撮るときは付けっ放しにすることが多いのですが、そうするとアイレベルでの撮影の時に不便を感じます。取り付け取外しがもっと簡単だといいのですが。

接写リング

 レンズの最短撮影距離を更に短くして近接撮影を行なうためのものです。
 これについても下記のページで紹介しているので、詳細はこちらをご覧ください。

  「PENTAX67用 オート接写リング(エクステンションチューブ)」

 私が接写リングを使う理由は、近接撮影をするということもありますが、いちばんはボケを大きくしたいということです。なので、近くによってマクロ的な撮影をするというよりも、比較的焦点距離の長いレンズに接写リングを取り付けて、少し離れた位置から撮影するというスタイルが多いです。もちろん、3個の接写リングすべてを取付ければ、長焦点レンズでもその撮影距離はかなり短くなりますが、3個も同時に使うことはほとんどなく、なだらかできれいなボケが得られる範囲での使い方が多いです。

 接写リングを使用すると、レンズ側のピント調整リングで合わせることのできる範囲が非常に狭くなってしまうので、接写リングをとっかえひっかえしたり、三脚ごと撮影位置を前後したりしなくて済むように、あらかじめ撮影位置や撮影倍率のアタリをつけておくことが望ましいです。

レフ板

 前にも書いたように野草は背丈の低いものが多いので、うまい具合に光が回ってくれないことも多々あります。小さいがゆえに、光の状態が良くないと出来上がった写真はどことなく精彩を欠いてしまうことも少なくありません。
 光を調整するといっても限界があるのですが、比較的よく使うのがレフ板です。

 ポートレート撮影などでは畳半分くらいもあるような大きなレフ板を使うこともありますが、野草撮影ではそんな大きなものは必要なく、私が使っているのは25cmx40cmほどの大きさで、二つに折りたためば半分の大きさになります。
 このレフ板も自作品で、ボール紙にアルミホイルを張り付けただけのものです。できるだけコンパクトになるよう、真ん中から半分に折りたためるようにしています。
 アルミホイルは光沢のある表と光沢の少ない裏側とがあるので、反射率で使い分けられるようにレフ板の半分に表側、もう半分に裏側を出して貼っています。また、光が拡散(乱反射)するように、アルミホイルをしわくちゃに揉んだものを使用しています。

 草むらなどで光が十分に回っていないときなど、柔らかな光をあてて全体的に明るくするという目的で使用します。

 また、二つ折りにできるレフ板をくの字に折ることで地面に自立させることができます。レフ板を手で持っていなくても済むということと、本来のレフ板の使い方ではありませんが、被写体の脇に立てることで風よけにもなります。野外で撮影していると風で花が揺れてしまうということもよくありますが、この小さなレフ板でも被写体ブレを防ぐことに大いに役立ってくれます。

手鏡(ミラー)とストロボスポット光アダプタ

 レフ板は全体的に柔らかな光を回すために使いますが、部分的に強めの光を当てたいということもあります。周囲は暗めにして、花のところなど部分的に明るくしたいというような場合です。
 レフ板に比べると使う頻度は低いのですが、お目当ての野草を引きたたせるために、私は手鏡とストロボを使うことがります。

 まず手鏡ですが、カードサイズの小さな手鏡の中央部分だけを出して、周囲は黒い紙でマスクしたものを使います。

 カードサイズと言えども、そんな大きな反射光は必要なく、直径3~4cmほどの大きさの反射面があればほぼ用が足ります。
 手鏡と同じ大きさの黒い紙の中央をくり抜き、これを鏡に重ねて使うだけです。くり抜く大きさのものを数種類用意しておけば便利かもしれません。
 手鏡程度であれば荷物にもならなく便利ではありますが、光の調整ができません。太陽の光をもろに反射させるので、結構強い光が当たります。周囲が影になっているときだとコントラストがとても高くなってしまうので、使い方を誤ると失敗作をつくり出しかねません。

 手鏡に比べると荷物としてはかさばりますが、光の調整ができるのがストロボです。
 マクロ撮影などで影ができないリングストロボを使う方も多いと思いますが、全体を明るくするのではなく、あくまでもスポット光を手に入れたいということなので、私はごく普通のクリップオンストロボ(しかもかなり昔の製品)を使っています。
 ただし、ストロボそのままでは照射される光がかなり広範囲に広がってしまうので、ごく狭い範囲だけに照射できるようなアダプタを自作して使っています。

 アダプタというほど大層なものではないのですが、100均のお店で黒色のストローを買ってきて、これを半分の長さに切って束ねただけのものです。これをストロボの発光窓の前に被せて使います。
 ストローの直径が約5mm、長さが約90mmで、ストロボから発せられた光はここを通ることでほぼ直進成分の光だけに絞られます。斜め成分の光はストローの中を通る際に減衰してしまうので、照射される光は絞られたスポット光になります。

 正面から見るとこんな感じになります。

 これでもストロボの発光窓と同じくらいの大きさの照射光になってしまうので、さらに小さくするためにアダプタの先端に黒い紙で作ったマスクを取付けます。これで、直径3~4cmほどのスポット光になります。
 ストロボ側で光量を調整できるので、作画意図に合わせた光を得ることができます。

半透明ポリ袋

 手鏡やストロボとは反対に、光を拡散させて弱める目的で使用します。
 使っているのはスーパーなどのレジ近くに置いてあるタイミーパック、いわゆる半透明のポリ袋です。このポリ袋をボール紙で作った四角い枠に張り付けただけのものです。

 非常に薄い素材でできていて、光の透過率はかなり高いと思われるのですが、きれいに拡散されるので影になることなく柔らかな光にすることができます。ちょうど雲を通り抜けてきた光と同じような状態になります。
 直射日光が当たっていてコントラストが高すぎるときは、雲がかかってくれないかなぁと空を仰ぎ見ることがありますが、そういときに限って青空が広がっているものです。そんな時にこのポリ袋を被写体の上の方に置くだけで、雲がかかった時のような光の状態になります。

 サイズは大きい方が使い勝手は良いと思うのですが、大きすぎるとカメラバッグに入らなくなってしまうので、スーパーのレジに置いてある程度の大きさが手ごろではないかと思います。

洗濯ばさみ

 屋外で野草撮影していて以外に重宝するのが洗濯ばさみです。
 洗濯ばさみをそのまま使うのではなく、私は洗濯ばさみどうしを紐でつないだものと、菜箸の先端に洗濯ばさみを括り付けたものの2種類をカメラバッグに入れて持ち歩いています。

 これらをどう使うかというと、まず、洗濯ばさみどうしを紐でつないだ方ですが、これは撮影に際に邪魔になる枝や草などをちょっと脇に避けてもらうときなどに使います。枝を折ったり草を切ってしまうわけにはいかないので、これを洗濯ばさみでつまんで引っ張って、もう一方の洗濯ばさみをほかの木の枝なり三脚なりに挟みます。これで、撮影が終わるまでの暫時、邪魔になるものに避けてもらうことができます。

 菜箸の先端に括り付けたほうも目的は似たようなものですが、こちらは地面に刺して使うことが多いです。紐でつないだ洗濯ばさみの一方を止める場所がないときに、この菜箸を地面に刺してここに止めるとか、あるいは菜箸の先端の洗濯ばさみで避けたいものを挟み、菜箸を地面に刺すなどといった使い方です。もちろん、手で持っていることもできますが、地面に刺しておいた方が楽です。
 また、上で紹介した半透明のポリ袋の枠をこれで保持するといった使い方もします。
 なお、洗濯ばさみは挟む力が強すぎない木製のものを使用しています。

 自然のものはあるがままの状態で写すべきとも思いますが、時にはどうしてもフレームの中に入ってほしくないものがあるのも事実で、そういったときに使っています。

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 フィールドでの野草撮影は結構手間がかかります。被写体が小さいというのもありますが、光の状態などによって全く雰囲気が変わってしまうので、気に入った光、気に入ったアングルなどを決めるのに時間がかかります。その間にも状況はどんどん変わっていってしまいます。自然の状態にできるだけ手は加えたくないと思うのですが、最低限の処理で撮影をするようにしています。
 野草撮影といってもそうそう珍しい花に出会えるわけではありませんが、植物図鑑やネット上の記事でしか見たことのない野草に出会ったりするとやはり嬉しいものです。
 一方で、昨年ここに咲いていたはずなのに、今年はなくなっていたなんていうこともあり、環境の変化で生きていけなくなったのか、盗掘によるものなのかはわかりませんが、寂しい思いをすることもあります。
 どちらかというと華やかさはなく地味なものが多い野草ですが、野生で生きていく力強さも相まって何とも魅力のある存在です。

(2024.8.23)

#PENTAX67 #クランプ #ペンタックス67 #小道具 #接写リング

第172話 ホースマンの69判ロールフィルムホルダーを使ったピンホールカメラ ~撮影編~

 昨年(2023年)の暮れから今年の年始にかけ、思いついたようにピンホールカメラ(針穴写真機)を作成しましたが、そのカメラを使って実際に撮影をしてみました。ホースマンの69判ロールフィルムホルダーを使用した広角系固定焦点ピンホールカメラです。
 ピンホールレンズ自体は以前につくったものを若干改良しているだけなので、概ね問題なく撮影はできるだろうと思っていますが、今回、新たに作成したカメラ本体との相性も含めて試し撮りをしてみました。

 なお、ピンホールカメラの製作に関しては以下のページをご覧ください。

  「ホースマンの69判ロールフィルムホルダーを使ったピンホールカメラの製作

モノクロフィルムでの試し撮り

 ホースマンの69判ロールフィルムホルダーにDELTA 100(120)フィルムを入れ、近所の公園で試し撮りをしました。天気は晴れ、撮影した時間帯は午前10時~11時です。

 1枚目は、木立に囲まれた公園の広場を撮影したものです。

 カメラから中央の立木までの距離は3mほど、右端に少しだけ写っている立木までは50~60cmほどだったと思います。また、立木の影でわかるように、太陽はほぼ右側にある撮影ポジションです。
 単体露出計での計測値はEV13(ISO100)だったので、露光時間は4秒としました(ちなみに、このピンホールレンズのF値は180になるように作ったつもりです)。露出に関しては概ね良好、ほぼ予定通りのF値になっている感じです。
 木立の枝の先端もおぼろげながら認識できるので、解像度もピンホールとしてはまずまずといったところでしょう。

 この写真のように近距離を写した場合、周辺部が引っ張られて、見るからに広角系の写真という感じがします。

 2枚目は、立木の枝の広がりを逆光で撮影したものです。

 太陽は中央の立木の幹に隠してありますが、全体にわたり逆光状態なので、立木はすべてシルエットになっています。ピンホールカメラは逆光に弱いのですが、太陽からの光を直接入れなければ、結構クリアな写真になるようです。さすがに太陽を隠している幹の辺りは滲んでいますが、それ以外は比較的綺麗なシルエットになっていると思います。
 1枚目の写真ではあまり気にならなかったのですが、こちらの写真では周辺部の光量不足が感じられます。多少、周辺光量の落ち込みがあった方がピンホール写真らしさがあるという見方もありますが、個人的にはこれ以上の落ち込みがあると失敗作となってしまうので、ギリギリ許容範囲といった感じです。

リバーサルフィルムでの試し撮り

 常々、ピンホール写真はモノクロが似合っていると思っているのですが、せっかくなのでカラーリバーサルフィルムでも撮影をしてみました。使用したフィルムは富士フイルムのVelvia 100(120)です。
 撮影日は異なりますが、撮影場所はモノクロと同じ近くの公園です。

 まず1枚目は紅梅の写真です。

 この日も晴天で、澄んだ青空と梅の花のコントラストがとても綺麗でした。
 中央の梅の花の位置まではおよそ1m。まだ咲き初めで花の数がそれほど多くないので、できるだけ花に近づいての撮影です。
 全体的な露出はほぼ適正な状態だと思われますが、やはり、周辺光量の落ち込みが目立ちます。周辺部が極端に暗くなっているわけではないのでそれほど違和感はありませんが、周辺部が引っ張られるのと相まって、若干気になります。
 ピンホール写真として見れば解像度は悪くはないと思うのですが、梅の花の鮮鋭度となると、正直、厳しいといった感じです。

 2枚目は同じ公園にある白梅を撮影したものです。

 いちばん手前の花まで50cmほどに近づいて撮影しています。上の方は切れてしまいましたが、左右に関しては8割方、フレーム内に収まっています。
 ピンホール写真は全体のピントが合うパンフォーカス写真になりますが、この写真のようにたくさんの花が重なった状態の被写体の場合、ボケた部分がないので雑然とした感じに仕上がってしまいます。撮影の仕方によるところが大きいのでしょうが、この写真ではピンホールらしさがあまり感じられません。ボケた梅の写真、といった方が適切かも知れません。

 もう一枚は、近くの神社の境内で撮影したものです。

 周囲が大きな木立に囲まれているため、ほとんど日陰で暗く落ち込んでいますが、中央の社殿だけは日が差し込んでいて、全体にコントラストが大きくなっている状態です。普通のカメラで撮れば固い感じになってしまいますが、ピンホール写真特有のボケでふわっとした感じに仕上がっています。どうってことのない風景も、ちょっとばかり雰囲気のある写真になっています。
 左側の赤い奉納のぼりに書かれている文字や、社殿の軒下にある注連縄、社殿の後ろにある消火器などのはっきりと認識できるくらいの解像度があります。

カメラの仕様と使い勝手

 今回製作したピンホールカメラは、焦点距離が54mm、F値が180ということで寸法取りをしたのですが、仕上がった写真を見る限り、ほぼ予定通りの仕様になっている感じです。もっとも、焦点距離が3mm長かったり短かったりしたところで、F値は190、もしくは170になる程度なので、実際の露出に与える影響はほとんど誤差の範囲です。つまり、F値が大きいので、多少の寸法の違いは影響がないということです。

 また、上で掲載した写真からも、周辺部がかなり引っ張られているのがわかると思います。これは短焦点になればなるほど顕著に現れますが、このカメラの場合、横位置に置いた時の左右両端で、およそ17%伸びる計算になります。この値は被写体によってはかなり影響が大きく、遠景ではあまり気になりませんが、近景を撮影した場合ははっきりとわかります。それに伴って光量の落ち込みも発生するので、うまく使えば味わいのある写真になるかも知れません。

 一般的に、写真は解像度が高くてくっきりと写っていた方が好ましいと思いますが、ピンホール写真に関しては必ずしもそうとは言えません。むしろ、ボヤっとしていた方が好ましいと感じる場合が多々あります。
 そういった視点からすると、今回使った直径0.3mm(にしたつもり)のピンホールは、解像度が少し高すぎるようにも思えます。ピンホール径をもう少し大きくして、全体的なボケを大きくした方がピンホール写真っぽくなるかも知れません。

 カメラの使い勝手という点では、二眼レフカメラを横にしたくらいの大きさなのでこじんまりとしていて持ち運びも苦にならいのですが、難点はホールド性がよろしくないということです。三脚に取り付けてしまえば何ら問題はないのですが、三脚に着けたり外したりする際、落としてしまいそうでちょっと不安になります。ストラップかグリップのようなものがあると安心感が高まるというのが率直な感想です。

 簡易的なスピードファインダーに関しては、もちろん、精度は良くありませんが、フレーミングした範囲と実際に写る範囲にそれほど大きな乖離はなく、実用レベルであると思います。
 ただし、スピードファインダーのフィルム側のアクリル板の取り付け位置が、フィルムホルダーの後端よりも前にあるため、のぞきにくいという欠点があります。前方のアクリル板との間隔を保ちながら、取り付け位置を全体的に30mmほど、後ろにずらした方が使いやすいことがわかりました。今から改造するのは大変なので、次回、また製作することがあれば反映したいと思います。

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 ピンホール写真というのはノスタルジックでもあり、また、そのボケ具合から独特な印象を持った写真になり、シンプルな仕組みでありながらなかなか奥の深いものだと思っています。
 しかしながら、何でもかんでもピンホールカメラで撮れば雰囲気のある写真になるかというとそうではなく、やはり、作品作りということを意識することも大事だと思います。
 普通のカメラでもいろいろとレンズが欲しくなるのと同じで、ピンホールカメラでもピンホール径や焦点距離の異なるもので撮影してみたくなります。何種類ものピンホールカメラを作って、自分のイメージにぴったりと合うものを見つけるのもピンホールカメラの面白さかも知れません。
 今年の年末にでも、仕様の違ったピンホールカメラを作ってみたいと思います。

(2024.2.29)

#Horseman #ピンホール写真 #ホースマン #白梅 #紅梅

第169話 ホースマンの69判ロールフィルムホルダーを使ったピンホールカメラの製作

 年末にジャンク箱の中を漁っていたところ、下の方からホースマンの69判のロールフィルムホルダーが出てきました。しかも、大判(4×5判)用ではなく、中判カメラ用のホルダーです。私がこれを取付けられるような中判カメラを持っていたのは20年以上も前のことですから、多分、そのころに手に入れたものだと思うのですが全く記憶にありません。
 外観はそこそこ綺麗で、確認してみたところ、動作にも問題はなさそうでした。しかし、これが使えるカメラがないので、またジャンク箱の中に戻そうと思ったのですが、ふと、これを使ってピンホールカメラを作ってみたくなりました。なぜか、時々ピンホールカメラを作ってみたくなることがあります。
 ということで、69判のピンホールカメラを製作しました。

焦点距離54mm、絞り値 F180の広角系ピンホールカメラ

 以前、大判カメラを使ったピンホール写真を撮ろうと思い立ち、それ用のピンホールレンズを作ったことがありました。興味のある方は下のページをご覧ください。

  「ピンホールカメラ(針穴写真機)をつくる

 ただし、大判カメラを使ったピンホールカメラなので焦点距離などの自由度も大きいのですが機材が大げさになってしまい、気軽にピンホール写真を撮りに行くという感じではなありませんでした。最初のうちこそ結構使っていましたが、徐々にその頻度も減り、最近ではほとんど持ち出すことはなくなってしまいました。
 そんな経緯もあり、今回はもっとお手軽なピンホールカメラをつくることにしました。焦点距離なども固定にし、できるだけ小型軽量にするということを第一に、下の図のような仕様にすることにしました。

 ピンホールレンズは前回作ったものを使うこととし、それ以外は新規に作成します。
 ピンホールカメラなので広角系の方が使い勝手が良いだろうということで、画角は80度前後、35mm判のカメラにすると焦点距離28mmくらいのレンズに相当するカメラとします。
 厳密な焦点距離や画角は必要ありませんが、露出値の換算をする際にやり易いよう、F値は切れの良い数字にする必要があります。前回作ったピンホール径は0.3mmなので、これをベースに焦点距離が50~60mmで切れの良いF値ということで計算した結果、焦点距離54mmの時にF値が180になるので、これを採用することにしました。欲を言えば、F値は128、もしくは256の方が換算しやすいのですが、そうすると焦点距離が短すぎたり長すぎたりしてしまうので、F180で妥協することにしました。

 なお、今回作成するピンホールカメラに使用する部材等はすべて身近にある端材などを流用し、新規に購入せずに行なうこととします。

ピンホールレンズの改造

 まずはピンホールレンズの改造からです。
 前回作ったのは、シャッターNo.1の大判レンズから前玉と後玉を外し、シャッターの前面に自作のピンホールをはめ込むというものでしたが、これだとシャッター位置よりもだいぶ前にピンホールレンズがくることになります。そのため、焦点距離が長くなってしまい、画角を大きくすることができないという欠点がありました。
 そこで、今回はピンホールレンズをシャッター幕のすぐ前に設置することにしました。これを、前玉のレンズを全部外した枠だけを使ってシャッター幕の直前のピンホールレンズを固定するという方法をとります。

 シャッターにピンホールレンズを取付けたのが下の写真です。

 以前のものと比べ、これ単体でも焦点距離を15mmほど短くすることができました。
 また、前玉の枠がフードの役目をしてくれるので、直接ピンホールレンズに太陽光があたるのをある程度防ぐことができ、フレアのようなものが生じるのを軽減することができます。

ピンホールカメラ筐体の製作

 カメラの筐体はアクリル板か木板で作ろうと考えていたのですが、アクリル板だとなんとなく味気がないので、木板を使うことにしました。適当な端材がないか探したところ、厚さ9mmの合板があったのでこれを使用します。
 各部の寸法はホースマンのロールフィルムホルダーに合うようにしなければならないので、必要個所を採寸して筐体のサイズを算出します。

 実際に筐体の図面を引くとこのようになります。

 上の図で分かるように、端材で作った四角な枠の中にロールフィルムホルダーがすっぽりと嵌まり込む構造になります。光線漏れがないよう、内寸は正確にする必要があります。
 また、シャッターを取付けるフロントパネルは厚さ5mmの合板を使用しました。この板の中央に直径48mmの穴をあけ、ここにシャッターを取付けます。

 これを組み上げたのが下の写真です。

 木工用の接着剤で貼り付けているのでそのままでも強度的には問題ありませんが、デザイン性を考慮して真鍮製の釘を打ってみました。

 ピンホールカメラは長時間露光が必要なので、三脚使用が前提となります。そこで、筐体の底面に三脚用の台座を取付けます。
 厚さ9mmの合板を適当な大きさ(ここでは35mmx70mm)にカットし、その中央にメネジを埋め込みます。直径8.5mmの下穴をあけ、そこにねじ込めば完成です。ネジの径の方が若干大きいので、ねじ込むにはかなり力が要りますが、雲台プレートのネジを締め付けるときに動いてしまうと使い物にならないので、固いくらいが丁度良いです。もし、緩いようであれば、メネジの周囲に瞬間接着剤を少し流し込んでおけば心配ありません。

 この三脚台座を筐体の底板に接着します。

 次に、筐体天板の加工を行います。
 後ほど触れますが、今回は簡易型のスピードファインダーのようなものを取付けられるようにするのと、フィルムホルダーを固定するため、天板に若干の加工を施します。

 加工内容は下の図の通りです。

 まず、スピードファインダーを取付けるための磁石を埋め込みます。これは、レンズ側に2個、フィルムホルダー側に1個です。
 今回使用した磁石は、約9mmx14mm、厚さが約2mmのネオジム磁石です。小さいですがとても強力な磁石です。これを天板につけるのですが、天板の表面が平らになるように磁石を埋める穴を掘ります。

 こんな感じです。

 この穴に接着剤を流し込み、磁石をしっかりと固定します。

 さてもう一つ、ロールフィルムホルダーを筐体に固定しなければならないのですが、固定ピンを筐体側から差し込み、フィルムホルダーの溝に嵌合させるという簡単な方法です。
 固定ピンは大型のゼムクリップを利用して自作しました。サイズは適当で構いませんが、ピンの長さはある程度、正確にする必要があります。今回、筐体に使用した端材の板厚が9mmなので、この板を貫通してフィルムホルダーの溝に届かせるには13mmの長さが必要です。短すぎるとフィルムホルダーがしっかり固定できませんし、長すぎると固定ピンが浮いてしまいます。
 この固定ピンは筐体の底板にも取り付けます。

 これで筐体の組み立ては完了ですので、内側に反射防止のため、艶消し黒で塗装をします。
 外側はそのままでも問題はありませんが、少しでも見栄えをよくするため、透明のラッカーを数回塗りました。
 なお、隙間からの光線漏れはないと思いますが、もし心配なようであればモルトを貼っておけば心配ないと思います。

 ちなみに、ロールフィルムホルダーを取り付ける際は、固定ピンを浮かせた状態でフィルムホルダーを筐体にはめ込み、その後、固定ピンを奥まで押し込みます。これで、フィルムホルダーが外れることはありません。

簡易型スピードファインダーの製作

 ピンホールカメラの撮影でいちばん苦労するのがフレーミングです。ピンホールはその名の通りとても小さいので、フォーカシングスクリーンのようなものに投影しても暗くてほとんど像を認識することができません。
 そこで今回は、簡易型のスピードファインダーなるものを取付けることにしました。

 仕組みはいたって簡単です。

 上の図でお分かりいただけると思いますが、フィルム面と同じ大きさのブライトフレームを書き込んだ透明の板を焦点距離と同じだけ離れた位置から見ることで、フィルムに写る範囲を確認するというものです。

 レンズ側に取り付けるのは、フィルム面よりも一回り大きな透明の板です。今回は、厚さ1.8mmの透明のアクリル板を使いました。これをL字型に曲げ、そこにブライトフレームを書き込みます。使用するフィルムのサイズが69判で実寸が56mmx83mmなので、それに合わせて白いペンキで線を引いています。
 もう一つ、フィルム側に取り付けるものも同じように透明のアクリル板をL字型に曲げますが、こちらはずっと小さなもので大丈夫です。

 そして、レンズ側のブライトフレームの中心に小さなマーキングをします。私は、同じように白のペンキを使いましたが、何でも構いません。
 一方、フィルム側に取り付けるファインダーには、レンズ側フレームの中心のマーキングと同じ高さのところに小さな穴をあけます。

 次に、スピードファインダーをカメラの筐体に取り付けるため、L字型に曲げたところに磁石を取付けます。
 これは、両面テープや接着剤などで貼り付けても良いのですが、私はアクリル板に磁石がはまるサイズの穴をあけ、そこに円形の磁石をはめ込み、瞬間接着剤で固定しました。
 ここで重要なのが磁石の向きと固定する位置です。
 まず磁石の向き(極性)ですが、筐体の天板につけた磁石とくっつくようにしなければなりません。これを間違えると磁石の反発力でファインダーがぶっ飛んでしまいます。
 次に磁石を固定する位置ですが、レンズ側のファインダー面が、概ねレンズの位置に来るように磁石を固定すること、フィルム側のファインダー面が、概ねフィルムの位置に来るように磁石を固定することです。つまり、2枚のファインダーの間隔が、焦点距離にほぼ等しくなるようにします。

 こうして出来上がった簡易型スピードファインダーが下の写真です。

 使い方は簡単で、フィルム側のファインダーの小さな穴からレンズ側ファインダーの中心点が重なるように覗きます。その時のブライトフレームの内側がフィルムに写り込む範囲になります。それほど精度の高いものではありませんが、フレーミングをする上ではまずまず使い物になるレベルだと思います。
 後は、これをカメラに取り付けるだけです。強力な磁石を使用しているため、取り付け位置を気にしなくても2枚の磁石がほぼ中心でくっつきます。
 取り外す時もファインダーの上の方を持って、前後どちらかに押せば簡単に外すことができます。使わないときは取り外しておけば、よりコンパクトなカメラになります。

 磁石を固定するための瞬間接着剤の量が多すぎたようで、アクリル板が白くなってしまいました。後日、白いペンキか何かを吹き付けて綺麗にしてやろうと思います。

 実際にカメラに取り付けるとこのようになります。

 フィルムホルダー側(後側)から見た写真がこちらです。

作例...は、まだありません。

 まだ撮影に行っていないので、残念ながら作例はご紹介できません。近いうちに実際に撮影をしてみようと思います。

 このカメラを実際に操作した時の感触ですが、剛性はそこそこ保たれているようで、三脚に固定すれば安定しています。フィルムの巻き上げやシャッターチャージなどの際にもぐらついたりきしんだりすることがありません。ここで使用したシャッターはSEIKO製ですが、シャッターチャージレバーがとても重く、動かすのに力が要るのですが、特に問題なく使用に耐えられます。
 また、ストラップは着けてありませんが、やはりストラップがあった方が扱い易いように思います。適当な金具があれば、筐体の両サイドに取り付けてみたいと思います。

 なお、撮影の際にはフィルムホルダーの引き蓋を外すのを忘れないようにする必要があります。シャッターがついているので、フィルムホルダーの引き蓋は外したままでも問題ないと思いますが、万が一のため、引き蓋は着けておく方が安心です。

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 20年以上も暗いジャンク箱の中で眠っていた69判のロールフィルムホルダーですが、やっと日の当たる場所に出ることができたという感じです。
 また、今回は家にあった端材や部材などを利用して作ったので見てくれはイマイチですが、ちゃんとした材料を使えばもっときれいなカメラに仕上がると思います。

 ピンホールカメラは簡単に作ることができるということも手伝ってか、根強い人気があるようです。世界に1台しかない自分だけのカメラということにも愛着が湧くのかも知れません。銘板なんぞを取付ければ、一層カメラらしくなると思います。

(2024.1.5)

#ピンホール写真 #Horseman #ホースマン

第164話 花を撮る(7) 晩秋に咲く花を撮る

 花が圧倒的に多いのは春から夏にかけてであり、秋になると咲く花の種類はぐっと減り、さらに晩秋ともなると園芸品種を除けばとても少なくなってしまいます。しかも、春や夏の花のようにエネルギーに満ち溢れているという感じではなく、どことなくうら寂しさが漂っているように思えてなりません。
 とはいえ、種類は少ないながらも晩秋ならではの魅力があるのも事実で、そんな花を探すのも楽しみの一つではあります。
 なお、今回掲載の写真はすべてPENTAX67Ⅱで撮影をしています。

キク(菊)

 菊というと春に咲く桜と同じくらい日本人にはなじみのある花ですが、いわゆる「菊」というのは、その昔、中国から入ってきたものらしく、日本には自生種の菊という植物は存在していないらしいです。皇室の御紋にも使われているので日本古来の花かと思っていましたが、どうもそうではないようです。
 キク科の植物には野菊と呼ばれるものがありますが、これらの多くは日本の在来種のようで、我々が「菊」と呼んでいるのものに比べるととても控えめな花です。
 外来種と言えども菊はすっかり日本の風景になじんでいて、栽培されている大輪の菊をはじめ、庭先や畑の隅の方で見かけることが多くあります。

 下の写真は農作物の収穫がすっかり終わり、さっぱりとした畑の隅の方に咲いていた菊です。

▲PENTAX67Ⅱ smc PENTAX67 200mm F4 1/30 PROVIA100F

 正式な名前はわかりませんが、山形県などで良く食べられている食用菊にも似ています。
 そぼ降る雨の中で健気に咲いてはいますが、何度か霜が降りたのか、一部の葉っぱや周囲の草もすっかり茶色くなっていて、哀愁を感じる景色です。キクというと上を向いて咲くイメージがありますが、この写真の花はすっかり俯いてしまっています。

 半円形のアーチのように並んでいる形が綺麗だったので、これらの花がいちばんきれいに見えるアングルを探して撮影しました。背景は紅葉している山ですが、キクの花が埋もれてしまわないように大きくぼかしました。
 雲が垂れ込めていて雨も降っているので薄暗いような状態でしたが、花を引き立てるために露出はオーバー気味にしています。

 そういえば、もともとは白っぽい色をした花弁が霜にあたって紫色に変わっていくキクを「移菊(うつろいぎく)」というらしいですが、もしかしたらこのキクもそうかもしれません。何とも風情のある呼び名です。

ノコンギク(野紺菊)

 秋も深まり、何度か霜が降りると野草の葉も赤く染まっていきます。木々の葉っぱが紅葉するのと同じ現象なのかどうかはわかりませんが、草も霜焼けになるという話しを聞いたことがあります。同じ辺りに生えていても赤く染まる葉っぱと染まらない葉っぱがあるのですが、専門的なことはともかく、一面に赤く染まった光景は何とも言えない美しさがあります。

 そんな草むらの中に、かろうじて咲いているノコンギクを見つけました。

▲PENTAX67Ⅱ smc PENTAX67 200mm F4 1/15 EX2 PROVIA100F

 ノコンギクは日本にたくさんある野菊の仲間です。秋口になると薄紫の可憐な花を咲かせます。葉っぱはすっかり茶色になってしまっていますが、まだ数輪の花が残っています。しかし、花弁が落ちてしまったのか、ずいぶんを花が縮んでいる感じです。周囲に他の花は見当たらず、エノコログサの穂も茶色に変色しているような中で咲いている姿には心引きつけられるものがあります。
 ノコンギクの背丈は40~50cmほど。周囲の草と同じくらいの高さなのでそれらの草と重ならないように、バックに比較的広い空間がある場所で撮りました。

 二線ボケが出やすい状況なので接写リングをつけて撮影していますが、やはり二線ボケが少し気になります。もう少し長めのレンズで、離れた位置から撮影したほうが全体にすっきりした描写になったと思いますが、ぼかし過ぎると周囲にあるスーッと伸びた細い葉っぱの印象が薄れてしまうので悩ましいところです。

キバナコスモス(黄花秋桜)

 コスモスもすっかり日本の景色になじんだ外来種の一つですが、近年、キバナコスモスがとても増えてきたように感じています。もともとは園芸品種だったようですが、野生化してしまったものも多いと聞きます。コスモスという名前がついていますが、赤紫やピンク、白色をした一般的なコスモスとは同属ではあるが別種のようです。
 また、キバナコスモスは開花している期間がとても長い印象があり、普通のコスモスがすっかり枯れてしまった後でも咲き続けています。公園の花壇や道端などでもよく見かける花の一つです。

 近所の公園に行った際、キバナコスモスを撮ったのが下の写真です。

▲PENTAX67Ⅱ smc PENTAX67 Macro 135mm F4 1/30 EX1+3 PROVIA100F

 さすがに花の数はずいぶんと少なくなっていますが、わずかに残っている花に蝶がとまったところを撮りました。蝶のことは詳しくないのですが、シジミチョウだと思われます。もう、花に蜜も残っていないのではないかと思うのですが、小春日和の中、数少ない花をめぐって蜜を吸っていました。

 135mmのマクロレンズに接写リングをつけての撮影です。キバナコスモスの花芯の辺りに置きピンをして、蝶の頭部がそこに来た時にシャッターを切っています。
 逆光に近い状態で撮っているのでキバナコスモスの花弁は硬調な感じになってしまいました。背後にある白っぽい大きな玉ボケのようなものは、公園の遊歩道に設置されたステンレス製の柵の反射です。この玉ボケの中に蝶が入ってくれる瞬間を待ち続けたのですが、時間の経過とともに太陽が動き、玉ボケも移動していってしまうのでなかなか思うようにいきません。

エゾリンドウ(蝦夷竜胆)

 エゾリンドウは日本原産の野草で、山地の湿ったところでよく見掛けることができる秋の花のひとつです。背丈は50cmくらいから、大きいものでは1m近くになるものもあり、大ぶりの花をつけるので見応えがあります。日本の伝統色(和色)に「竜胆色」というのがありますが、色の名前に採用されるほど親しまれてきた花なのかも知れません。

 下の写真は長野県で見つけたエゾリンドウです。

▲PENTAX67Ⅱ smc PENTAX67 200mm F4 1/60 PROVIA100F

 群落というほどたくさんは咲いていませんが、ポツポツと点在しているといった感じです。周辺は茶色くなった葉っぱが目立っていますが、エゾリンドウの花はまだしっかりとしており、鮮やかな竜胆色が健在です。
 春に咲くハルリンドウやフデリンドウの花はラッパのように開きますが、このエゾリンドウの花は開くことはないらしく、この写真のような状態を開花していると言うようです。

 この写真を撮影した日は曇りだったのでコントラストが高くなりすぎず、花の色が綺麗に出ていると思います。秋の花は柔らかめの光が似合っていると思います。
 ちなみに、右側に写っている丸い玉のようなものはエゾリンドウではなく、ユウスゲかキスゲの種子ではないかと思われます。愛嬌があったので入れてみました。

セイタカアワダチソウ(背高泡立草)

 北アメリカ原産のセイタカアワダチソウは、切り花としての観賞用に導入されたらしいのですが、今では嫌われ者の代表格のようになっています。関東では9月ごろから咲き始め、あちこちで大群落をつくっています。花が咲いている時期は長く、12月になってもまだまだ咲いています。観賞用ということだけあって咲きはじめの頃は綺麗な黄色をしていますが、徐々に黒っぽく薄汚れたような花色になり、そうなるとお世辞にも綺麗とは言い難い状態になります。
 背丈は2mを超えるほど大きくなりますが、それほど大きくならない群落もあって、どういう違いなのかはわかりません。

 秋も深まった頃、背丈がさほど大きくない群落があったので撮ってみました。

▲PENTAX67Ⅱ smc PENTAX-M 67 300mm F4 1/60 PROVIA100F

 この写真は、上で紹介した菊を撮った場所に近いところで撮影したものです。霜が降りるほど冷え込む時期であるにもかかわらず花の色は鮮やかで、葉っぱも青々としています。セイタカアワダチソウだけを見ればとても晩秋の景色とは思えません。
 根もとのごちゃごちゃした部分を隠すために鮮やかに赤く染まった草を配し、バックに紅葉した山を入れて晩秋の雰囲気を出してみました。また、前景と遠景をぼかし、セイタカアワダチソウだけにピントが来るよう、離れたところから300mmのレンズでの撮影です。

 嫌われ者のセイタカアワダチソウですが、このような鮮やかな色合いで、これくらい控えめに咲いているのであれば、観賞用として持ち込まれたのも頷けなくもないといったところでしょうか。

ボタンヅル(牡丹蔓)

 ボタンヅルは8月から9月頃にかけて花が咲きます。名前の通り蔓性の植物で、薄いクリーム色の可愛らしい花をたくさんつけますが、有毒植物で家畜も近寄らないと言われています。杉林などに入ると杉の幹に絡まりついて咲いている光景を目にすることができます。杉の木の茶褐色とのコントラストも綺麗で、写欲をそそられる被写体ではあります。
 このボタンヅルは花が終わった後に実をつけるのですが、晩秋になると真っ白な綿毛に覆われて、花とはまた違った美しさがあります。

 下の写真はボタンヅルの綿毛を撮ったものです。

▲PENTAX67Ⅱ smc PENTAX67 200mm F4 1/30 EX3 PROVIA100F

 ボタンヅルはたくさんの花をつけるので、ここにつけた実が綿毛に包まれるとかなり見応えがあるのですが、この写真では数個の実だけをクローズアップしてみました。被写界深度を浅くするために接写リングをつけ、綿毛以外のところは極力ぼかすようにしています。
 画の右端が黒くなっていますが、撮影位置をもう少し左側に移動し、背景を真っ黒にすることで綿毛の白さを引き立てることも出来ます。しかし、そうすると晩秋の雰囲気がなくなってしまうので、秋色の占める比率を多くしてみました。
 真っ白な綿毛は逆光で見るとキラキラと輝いてとても綺麗なのですが、少しの風でも揺れてしまうため、撮影は無風かそれに近い状態の時が望ましいです。

フユザクラ(冬桜)

 正式名称はコバザクラ(小葉桜)というらしいのですが、10月後半から12月頃に咲くのでフユザクラと呼ばれています。しかも、冬だけでなく春、4月頃にも花をつける二季咲きというとても珍しい桜です。ソメイヨシノなどは開花してから1週間ほどで散ってしまいますが、このフユザクラは1ヶ月以上の長い間、咲き続けます。
 関東では群馬県藤岡市にある桜山公園が有名で、今の時期に訪れると紅葉とフユザクラのコラボレーションを見ることができます。

 この写真も桜山公園で撮影したものです。

▲PENTAX67Ⅱ smc PENTAX-M 67 300mm F8 1/60 PROVIA100F

 桜山公園は小高い山になっていて、そこにおよそ7,000本ものフユザクラがあるそうです。花はとても小ぶりで、ソメイヨシノの半分くらいしかないと思えるような可愛らしい花です。
 紅葉とのコラボレーションもちょっとした違和感があって面白いですが、日陰になって暗く落ち込んだ山肌(たぶん、秩父の山並みと思われます)をバックに、真っ白な花だけを逆光で撮ってみました。ちょっと絞り過ぎた感じです。
 桜の撮影というと多くの場合は下から見上げるアングルが多くなってしまいますが、この桜山公園は斜面にたくさんの桜の木があるので、上から見下ろすようなアングルや高いところの枝先を目線のアングルで撮ることができます。

シオン(紫苑)

 この写真は道端で偶然に見つけたもので、たぶん、シオンの仲間、もしくはアスターの仲間、俗にいう宿根アスターではないかと思うのですが定かではありません。自生種なのか園芸種なのかもわかりません。シオンの仲間だとするともとは自生種だった可能性もありますが、シオンの自生種は絶滅危惧種らしいので、やはり園芸種の可能性が大でしょう。いずれにしろ、道祖神のような月待塔のような石塔の脇に植えられていましたので、毎年ここで花を咲かせるのだろうと思います。

▲PENTAX67Ⅱ smc PENTAX67 165mm F2.8 1/60 EX1 PROVIA100F

 葉っぱはだいぶ枯れてきていますが花はまだ元気に咲いています。花の色のせいなのか、葉っぱが茶色いせいなのか、写真では花がカサカサしたように感じられますが、実際にはみずみずしさを保っています。シオンの仲間は花の数が多いので見栄えがしますが、それだけを撮っても面白みに欠けてしまいます。傍らの石塔を入れることで里山のような感じが出せればとの想いで撮ってみました。
 実際にはもっと明るい感じだったのですが、明るすぎると晩秋の感じが出ないので露出は若干アンダー気味にしています。
 バックは畑ですが人工物などもあったため、大きくぼかして色だけがわかるようにしてみました。もう少しバックが暗くなってくれるとありがたかったのですが。

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 晩秋から冬にかけて元気に咲く花というとサザンカ(山茶花)やツバキ(椿)を思い浮かべますが、それらの花とは対極にある寂しさや侘しささえ感じるような花もたくさんあります。その多くは最後の輝きを放っている花かも知れませんが、そういう花たちの持つ美しさというものも確かにあります。この時期は木々の葉っぱも落ちて殺風景な感じになってしまいますが、そんな時期だからこその被写体といえるのかも知れません。
 春や初夏のように積極的に花を撮りに行こうという思いになり難いのも事実ですが、晩秋の色合いというのもなかなか味わい深いものだと思います。

(2023.11.20)

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