第183話 アグファ AGFA のモノクロフィルム COPEX RAPID の使用感

 アグファ AGFA といえば世界で最初に内式のリバーサルフィルムを製造・販売した会社で有名ですが、いまから30年ほど前、アグファからはSCALA200というモノクロのリバーサルフィルムが販売されていました。個性的なフィルムを出す会社という印象がありました。今はADOXから若干のモデルチェンジをした製品がSCALAブランドで販売されているようです。
 実は、前々からAGFA COPEX RAPID というフィルムが気になっていたのですがなかなか使う機会がなく、ようやくそのフィルムを使って撮影が実現できましたのでご紹介します。

アグファのドキュメント用フィルム

 AGFA COPEX RAPID というフィルムはドキュメント撮影用というカテゴリーに分類されるようで、フィルムケースのラベルには「MICROFILM」と書かれています。すなわち、風景やポートレートなどを撮る一般的なモノクロフィルムではなく、本来は書類や図面などを記録するためのフィルムということのようです。
 ISO感度は50で、マイクロフィルムとしてみれば感度は高いと思いますが、一般的なフィルムからすると低感度です。

 今回使用したのはブローニーの120サイズフィルムで、通販で1本1,300円ほどで販売されていました。1本ずつプラスチックケースに入っており、そのキャップの上部には「Rollei」のロゴが入っています。
 また、ラベルには「MANUFACTURED BY AGFA GEVAERT N.V.」とあるので、フィルムの供給はドイツのマコという会社が行なっていますが、実際に製造しているのはベルギーにあるアグファ・ゲバルト社のようです。

 マイクロフィルムというとその用途から高い鮮明度と解像力が求められており、このフィルムも鮮明度や解像力は優れているようで、販売元のデータを見ると解像力は600本/mmとなっています。富士フイルムのモノクロフィルムACROSⅡの解像力はハイコントラスト時で200本/mmとのことですから、いかにCOPEX RAPIDの解像力が高いかがわかります。
 実際にウェブサイトなどに掲載されている作例を見ても、とてもハイコントラストで高解像度の写真に仕上がっていて、やはり、一般的なモノクロフィルムとは別物といった感じです。

 ドキュメント用フィルムだからといって風景が撮れないわけではないので、今回は神社仏閣と野草を対象に撮影をしてみました。

現像に関するデータ

 このフィルムの現像は専用の現像液として販売されている「シュプール Dokuspeed SL-N」が推奨となっていますが、私は持ち合わせていないので、今回はSilverSalt現像液を使うことにしました。
 SilverSaltは比較的使う頻度が高く、使いかけのボトルが手元にあるのですが、COPEX RAPIDを現像する際のデータがありません。あちこち調べてみたのですが的確な情報を得ることが出来ず、環境的にいちばん似通っているであろうと思われるデータをもとに現像条件を決めました。

 ということで、今回の現像条件は以下の通りです。

  ・現像液 : SilverSalt
  ・希釈 : 1 + 30 (原液1に対して水30)
  ・温度 : 20度
  ・現像時間 : 9分30秒
  ・撹拌 : 最初に30秒、その後60秒ごとに2回倒立撹拌

 使用した現像タンクはパターソンのPTP115というモデルなので、必要な現像液の量は約500mlです。SilverSaltの原液17mlと水510mlを合わせて527mlの現像液を調合しました。

 因みに、135フィルムの場合、撹拌は1回で大丈夫なようです。

 先日までの猛暑もひと段落して室内温度もそれほど高くないので、現像液の温度を20度に保つにはありがたい気温になっていました。いったん20度になれば、20分ほどであればそのまま放っておいても液温はほとんど変わることはありません。

 現像後の現像液はピンク色に染まっていました。
 また、フィルムベースはほぼ透明ですが、非常にカールが強い傾向にあります。乾かしてもクリップを外すとくるんと丸まってしまい、スリーブに入れてもスリーブ自体が丸まってしまうほど強力です。

 なお、停止液と定着液は富士フイルムの製品を使いました。

COPEX RAPID の作例

 現像が成功したのか、はたまたイマイチだったのか、正直なところ判断がつきませんが、まずまずの像が得られているようです。
 今回の撮影に使用したカメラはPENTAX67、使用したレンズは105mm、200mm、300mmの3本、そして一部に接写リングを使用しています。

 まず1枚目は、神社の参道の入口にある狛犬を撮ったものです。

▲PENTAX67 SMC PENTAX-M 67 300mm F5.6 1/250

 狛犬とその隣にある石灯籠などには陽が当たっていますが、背後の神社の森は日陰になっていて、コントラストの高い状態です。肉眼では背後の森もしっかりとわかる明るさなのですが、写真ではほとんど黒くつぶれています。
 こうしてみてみると、確かにハイコントラストに仕上がっているのがわかります。ローライのRPX25というフィルムもハイコントラストの傾向がありますが、それよりももっとシャープな印象があります。

 2枚目は、お寺の山門脇の草むらに置かれていた小さなお地蔵様です。

▲PENTAX67 SMC PENTAX67 200mm F5.6 1/500

 右側のお地蔵様にピントを合わせていますが、何と言ったらよいのか、お地蔵さまも着けている前掛けや帽子などの質感さえも変わってしまっているような感じを受けます。柔らかさのようなものはどこへやら失せてしまい、金属で作られたオブジェのようにも見えてきます。

 そして3枚目、神社の拝殿を撮影しました。

▲PENTAX67 smc TAKUMAR 67 105mm F16 1/8

 少しコントラストの低い被写体をということで、太陽に雲がかかっている状態で神社の拝殿を正面から写しました。画の下半分はだいぶ明るいのですが、上に行くに従って陰になっているので徐々に暗くなっています。
 前の2枚に比べると確かにコントラストは低いのですが、シャープさはしっかり残っているというか、とにかくエッジがしっかりと効いているといった感じの描写です。正面の格子戸や賽銭箱、壁板、回廊に張られた床板の木目など、まるで鋭い刃物の先で線を引いたような感じで写っています。

 次に、野草も何枚か写してみたのですが、はっきり言ってこちらの方が驚きました。

 まずは道端に咲いていた野菊、多分、柚香菊(ユウガギク)だと思います。

▲PENTAX67 smc PENTAX67 200mm F4+1/2 1/500

 順光状態での撮影なので背後の草むらももっと明るいのですが、花弁だけがひときわ白く、まるでたくさんの小さな花火が開いているようです。花の質感が失われており露出オーバー気味ですが、それを差し引いても驚くようなハイコントラストです。

 そしてこちらも野菊の仲間、野紺菊(ノコンギク)だと思われますが、数輪だけをアップにしてみました。

▲PENTAX67 smc PENTAX67 200mm F4+1/2 1/500 EX3

 前の写真に比べると光が弱いのと、こちらは露出オーバーにはなっていないのでコントラストは若干低めですが、作り物のような印象を受けます。やはり単に鮮明度が高いというだけでなく、エッジがピンと立っているという感じです。花特有の柔らかさなありませんが、これはこれで一つの表現方法かも知れません。

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 今回は120フィルム1本、10コマだけの撮影でしたが、COPEX RAPIDというフィルムの特性を垣間見るには十分すぎるくらいでした。特に花を撮った写真の描写にはびっくりといった感じです。
 確かに風景写真や花の写真には不向きなフィルムかも知れませんが、一般的なモノクロフィルムでは味わえない独特な描写はとても印象的です。
 ただし、初めて使ったフィルムなので現像の特性等もわかっておらず、希釈率や現像時間、温度などを変えて何度か試してみる必要はありそうです。

 推奨されている現像、シュプール Dokuspeed SL-Nを使えばもう少し違う描写になるかも知れませんし、普段よく使っているD-76とかID-11などを使って現像すれば全く違う感じに仕上がるかも知れません。何種類かの現像液で試してみたい気もしています。

(2024.10.5)

#AGFA #アグファ #PENTAX67 #ペンタックス67 #モノクロフィルム #COPEX_RAPID

第182話 大判カメラ タチハラフィルスタンド45 Fiel Stand 45 の蛇腹交換

 現在、私が使っている大判カメラのうち、唯一の木製カメラであるタチハラフィルスタンド45 Ⅰ型は蛇腹がだいぶくたびれてきていて腰が弱くなっており、蛇腹を伸ばすと自身の重みで下側に垂れ下がってしまいます。しかも、ピンホールの補修箇所が何ヵ所もあります。光線漏れしているわけではないので使えないことはありませんが、蛇腹の締まりがないのは見てくれも良くありません。
 そこで、思い切って蛇腹を交換することにしました。

古い蛇腹の取外し

 タチハラフィルスタンドの蛇腹は、カメラのフロント部(レンズスタンダード)の裏側と、バック部の内側に直接接着されています。金属製のフィールドカメラなどのように何らかの金具を用いているわけではなく直付けです。このため、蛇腹はベりべりと引っ剥がす感じになります。
 フロント部、バック部のどちらから剝がしても問題はありませんが、フィルスタンドのフロント部は可動範囲が大きいので、フロント部を先に剥がした方が作業がし易いです。

 しかし、口で言うほど簡単には剥がれてくれず、蛇腹の端の方から少しずつ捲りあげ、ゆっくりと剥がしていくことになります。
 それでも長年の使用でへたってきている蛇腹は簡単に破れてしまい、フロント部の裏側に接着剤とともに残ってしまいますが、後で綺麗にするとして、まずはフロント側を全部剥ぎ取ってしまいます。

 フロント側を外した状態がこちらです。

 次にバック側ですが、こちらは木枠の底に貼り付けてあるような状態なので作業はしにくいですが、フロント部が外れているので蛇腹を畳んだ状態で隅のところから持ち上げていくと何とか剥がれていきます。
 取り外した蛇腹は使い道もなく廃棄ですが、こんな感じです。

 写真でもわかるように、合成ゴム系の接着剤が使われています。

 蛇腹を外したフィルスタンドはなんだかとても頼りなげな感じになってしまいます。

 次に、蛇腹が貼りついていたところに接着剤や破れた蛇腹の残骸があるので、これを綺麗にしていきます。
 カメラの素材が木なので、ドライバーの先やヘラなどの固いもので擦ると木が削れてしまう可能性があります。面倒ですが、ピンセットなどを使って残った接着剤をコツコツと取り除いていきます。剝がれにくい場合はドライヤーなどで温めると接着剤が柔らくなって剥がしやすくなります。

 こうして綺麗になったのが下の写真です。

 内側の縁が黒くなっているのは接着剤ではなく、黒い塗料が塗られていた名残です。

 バック部の内側も綺麗になりました。

新しい蛇腹の調達

 さて、新しい蛇腹ですが、いろいろと悩んだ末、今回は特注で作成していただきました。
 既製品を探してみたところ、耐久性に優れた本革製の蛇腹は非常に高額なのと、注文を受けてから作る受注生産品なので納期が2か月近くかかってしまうとのことで断念しました。私がメインで使っているリンホフマスターテヒニカは本革製の蛇腹を使用しているのですが、フィルスタンドはリンホフに比べると使用頻度が低いので本革製でなくてもいいだろうという自分なりの妥協です。
 また、ビニールのような素材のものあり、価格は安いのですが耐久性が心配で、こちらも候補から外しました。

 結局のところ、いろいろな蛇腹を専門に作っている会社に特注でお願いすることにしました。素材はウレタン系とのことで、耐久性も本革製に比べて劣ることはないだろうとのことでした。価格も本革製に比べると半額ほどで、納期も2週間ほどとのことでした。
 発注に際して指定した寸法等は以下の通りです。

  ・フロント側 : 外寸 112mm x 112mm、内寸 86㎜ x 86mm
  ・バック部  : 外寸 152mm x 152mm、内寸 126mm x 126mm
  ・縮長  : 45mm以下
  ・伸長  : 320mm
  ・山数  : 17(両端を除く)

 また、蛇腹の前後両端は合成ゴム系の接着剤で貼り付ける旨も伝えておきました。

 こうして届いた新しい蛇腹がこちらです。

 適度な厚みが感じられますが、本革性に比べるとたぶん軽いのではないかと思います。また、両端は接着剤がなじみやすいように布のような素材が貼り付けてありました。
 腰がしっかりしていて、両端に指をかけて持ち上げても重みで垂れ下がるようなこともありません。

新しい蛇腹の取り付け

 いよいよ新しい蛇腹の取り付けですが、手順としては外した時と反対、すなわち、バック部への取り付けを先に行ない、次にフロント部を取付けるという順番です。

 まずはバック部への取り付けですが、接着剤がはみ出して蛇腹どうしがくっついてしまわないように、一つ目の山の内側に保護用の紙を差し込んでおきます。

 上の写真だとわかり難いかもしれませんが、画用紙程度の厚さの紙を幅4cmほどに切り、これを蛇腹の内側に差し込んで紙どうしを糊付けしておきます。これで、もし接着剤が内側に流れ出ても、蛇腹の山と山がくっつかずに済みます。

 次に、蛇腹の位置が中央に来るように、バック部の木枠の内側に蛇腹のコーナーの位置をマーキングしておきます。
 そして、このマーキングした木枠の内側と、蛇腹の接着面に接着剤を塗布します。両方に薄く均一に塗った後、少し時間をおいてさらにもう一回塗布し、その状態で蛇腹をバック部の木枠内マーキング位置に貼り付けます。
 この時、カメラを後方に倒して、蛇腹を上から木枠内に落とす要領でやると作業がし易いです。

 この状態で蛇腹を上からぎゅっと押し付けます。すぐにくっつきますが、念のため5分ほど押さえておき、その後、蛇腹の上に重し(私は単行本を使いました)を載せて半日ほど放置しておきます。

 バック部を貼り付けた状態が下の写真です。

 次にフロント部への貼り付けですが、蛇腹のバック部が固定されているので作業がしにくいところがあります。貼り付け位置をバック部のようにマーキングだけではおぼつかないので、フロント部の裏側にマスキングテープを貼って位置がずれないようにします。
 このマスキングテープの内側と、蛇腹のフロント側接着面に接着剤を塗布して接着します。バック部と同様、2回の塗布を行ないました。
 フロント部は重しを載せて固定というわけにはいかないので、接着後は下の写真のようにクリップで挟んでおきます。

 蛇腹の角の部分はクリップで挟めないので、浮いてしまわないようにヘラなどを押し当ててしっかり接着しておきます。
 この状態でおよそ半日経てば、蛇腹はしっかりと接着されます。

 こうして新しい蛇腹になったタチハラフィルスタンドがこちらです。

 蛇腹の腰もしっかりしており、なんだか新しいカメラになったようです。
 接着面も確認してみましたが、浮いているような様子もなく、少々引っ張っても全く問題ありませんでした。
 また、暗室内にカメラを持ち込み、内部にLEDライトを入れてみましたが、光線漏れは確認できませんでした。
 今回、蛇腹の伸長を320mmにしてもらいました。このカメラのレールは約300mmまでしか繰り出せないのですが、蛇腹に約20mmの余裕を持たせることで蛇腹が伸び切ってしまわないようにという理由からです。

 蛇腹交換後、実際の撮影は行なっていませんが、たぶん、問題になるようなことはないと思われます。

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 タチハラフィルスタンドの使用頻度はあまり高くないとはいえ、くたびれた蛇腹のままにしておくことがずっと気になっていたのですが、やっと気持ちもすっきりし、気兼ねなく撮影に使えるようになりました。
 これまでウレタン系素材の蛇腹というものを使ったことがなく、今回初めての試みですが、耐久性については最低でも4~5年は使ってみないとわからないと思います。4~5年でヘタるようなことはないと思いますが、使用感など、気がついたことがあればあらためてレポートしてみたいと思います。

(2024.9.25)

#タチハラフィルスタンド #FielStand

第181話 写真用レンズの被写界深度とボケについて 

 カメラで写真を撮ったことのある方は被写界深度とかボケいうものを経験知として理解されている方も多いと思います。いまさら被写界深度について書くのもどうかと思いましたが、大判カメラで撮影していると結構気にすることが多くありますので、今回はそのあたりについて触れてみたいと思います。
 因みに写真のボケを英語では、「out of focus」と「blur」、そして「bokeh」の3通りがあるようで、out of focus はピントが合っていない状態、いわゆるピンボケで、blur は明瞭に写っていない状態、そしてbokeh はボケ味を意味するようです。今回対象としているのはout of focus 、すなわちピントの合っていないボケについてです。
 なお、3番目のbokeh は日本語のボケがそのまま英語になったらしく、もともと海外ではボケ味を鑑賞するという文化がなかったようです。ボケを味わうというのは日本独特の文化だったのかも知れません。

許容錯乱円と焦点深度

 実際のカメラ用レンズは複数枚のレンズで構成されていますが、最終的にレンズの後端から出る光路をつくり出す1枚のレンズとして考えることができます。また、レンズには収差が発生するので、厳密にはレンズから出た光が1点に収束することはありませんが、ここでは1点に収束する理想のレンズがあるとして話を進めます。

 無限遠からレンズに入ってくる平行光はレンズを通過した後、レンズの後側焦点に収束、つまり結像します。

 上の図で、無限遠からの平行光は後側焦点F’で1点に収束しますが、その前後は1点にならず、ある幅を持っており、焦点から離れるにしたがって大きくなっているのがわかります。ですので、ピントが合っているのは厳密には焦点の位置だけで、その前後はボケている状態であり、このボケている円のことを錯乱円といいます。
 ところが、この錯乱円が極めて小さい範囲においては、人間の眼にはピントが合っているように見える、つまりボケているようには見えないという状態で、ピントが合っているように見えるギリギリの位置の錯乱円のことを「許容錯乱円」とよびます。

 この許容錯乱円の大きさは長らく0.033mmという値が用いられてきました。実際にはあるところまではピントが合っているように見え、そこから先は急にボケているように見えるなどということはなく、徐々にボケ量が大きくなっていくわけですが、どこかで線引きをしなければならないのでこの値が決められたようです。
 ではなぜ、許容錯乱円径が0.033mmとされたのか詳しいことはわかりませんが、一説には視力1.0の人がある距離からある大きさ(例えば四切とか)に引き伸ばされた写真を見たとき、その中の識別できる最小の点の大きさ、つまり分解能が約0.033mmであるというところからきているようです。

 また、許容錯乱円は撮像面(フィルム面)上での大きさなので、そこから同じ大きさに引き伸ばしてプリントをした場合、撮像面が小さいほど拡大率は大きくなりますし、撮像面が大きいほど拡大率は小さくて済みます。この値が決められたころは、645版のネガなりポジからの引き伸ばしを想定しており、その場合は許容錯乱円0.033mmが妥当であったかも知れません。しかし、それよりも小さな35mm判とかハーフサイズ版、あるいは現代のAPS-C版などでは許容錯乱円をもっと小さくする必要があるし、逆に67判とか大判の場合はもっと大きくしても差し支えないということになります。
 ただし、この値がフラフラしているとややこしくなるので、便宜上、ここでは許容錯乱円を0.033mmとして進めることにします。

 上の図で後側焦点の両側にできる錯乱円ですが、この円の直径が0.033mmのところが許容錯乱円になります。そして、後側焦点の位置から前側にある許容錯乱円までの距離を「前側焦点深度」、後側にある許容錯乱円までの距離を「後側焦点深度」といい、これらを合わせた距離を「焦点深度」とよんでいます。言い換えると、焦点深度とは錯乱円径が許容錯乱円径以下になる範囲ということになります。
 この焦点深度は許容錯乱円が一定とすると、レンズのF値によって決まる値で、レンズの焦点距離が長かろうが短かろうがF値が同じであれば焦点深度も同じになります。
 例として、焦点距離50mm F2と、焦点距離100mm F2のレンズの焦点深度を表したのが下の図です。

 レンズのF値は焦点距離と有効径で決まり、式で表すと以下のようになります。

   F = f / D

 ここで、FはレンズのF値、fはレンズの焦点距離、Dはレンズの有効径を表します。
 上の式から、焦点距離50mmで有効径25mmのレンズのF値はF2、焦点距離100mmで有効径が50mmのレンズのF値もF2となります。そして、これらのレンズに入射する無限遠からの平行光はレンズを通過した後は同じ光路を通って後側焦点に収束することになります。したがって、許容錯乱円も焦点深度も同じということになります。
 これは、被写体を同じ大きさになるように写した場合、レンズの焦点距離が違ってもF値が同じであれば同じようにボケるということを意味します。

 これらのことから焦点深度は許容錯乱円径とレンズのF値によって決まることがわかります。
 焦点深度を求める式は以下のようになります。

   焦点深度 = ±εF = 2εF

 ここで、εは許容錯乱円径[mm]、FはレンズのF値を表します。
 また、±の符号がついているのは焦点深度の向きが前側と後側で反対になるからであり、絶対値としては2倍になることを示しています。

 実際に2種類の焦点距離のレンズを用いて、被写体が同じ大きさになるように撮影したものが下の写真です。
 使用したのは焦点距離55mm(左)と105mm(右)のレンズで、いずれもF4で撮影しています。2本のレンズの焦点距離が2倍になっている方が望ましいのですが、そのようにぴったりのレンズがなかったのでできるだけ近い焦点距離のものを採用しました。

 レンズの焦点距離が約2倍の違いがあるので、被写体までの距離も約2倍の差がありますが、ボケ方はほぼ同じことがわかると思います。
 ただし、撮影距離が違うのでパースペクティブに差が出ています。短焦点レンズ(55mm)の方は手前のものが大きく、奥のものが小さく写っているのに対して、長焦点レンズ(105mm)の方は大きさの差が少なくなっています。主被写体を同じ大きさになるように写しても、短焦点レンズの方が画角が大きいので背景が広く、そして小さく写るというレンズの特性です。

焦点深度と被写界深度

 上で説明したように焦点深度は撮像面での振る舞いであり、普段あまり使うことはない用語かも知れません。一方、被写界深度という用語は使う頻度が結構高く、感覚的にもわかりやすいと思いますが、この焦点深度と被写界深度の関係について少し触れておきたいと思います。

 下の図はレンズの基本的な光路を描いたものです。

 まず、レンズの前方の任意の位置にある被写体S (緑色の矢印)を、比較的焦点距離の長いレンズを想定して撮像面に結像した状態を表したのが図3の①です。右側にある下向きの緑色の矢印S’の位置が撮像面になります。
 いま、この下向きの緑色矢印の位置を基準に前側焦点深度と後側焦点深度の位置に緑色点線で矢印を書き入れます(図3の② S1’、および S2′)。ここはピントが合っているとみなされるギリギリの位置ということになります(実際に焦点深度はもっと浅いのですが、わかり易くするために大きめにとっています)。
 次に、前側、後側焦点深度の位置にある緑色点線の矢印から、そこに結像するための被写体の位置を描き入れます。図3の②の左側に示した緑色点線の矢印S1、およびS2 がその位置になります。
 つまり、撮像面の焦点深度両端が、被写体ではどの位置になるかを示しており、これが被写界深度になります。

 この図で分かるように、焦点深度は前側も後側も同じ距離ですが、被写界深度は前側が小さく(浅く)、後側が大きい(深い)ことがわかると思います。被写界深度は手前に浅く、奥に深いと言われている所以です。

 次に、これよりも焦点距離の短いレンズを想定して同じように作図をしてみます。
 下の図の赤色の線が短い焦点距離のレンズの場合で、図3で用いたレンズの半分の焦点距離としています。なお、いずれも同じF値という想定で描いています。

 レンズから被写体までの距離が同じ場合、焦点距離が短いほど撮像面に写る被写体の像は小さくなるのは言うまでもありません。
 そして、この結像の位置から前後に、許容錯乱円の大きさとなる場所に赤色点線の矢印(S1’、およびS2′)を描き入れます。許容錯乱円の大きさは図3②の青色矢印と青色点線矢印の高さの差になるので、これと等しい差分になる位置が焦点深度の両端になります。
 次に赤色点線の矢印からそれぞれの被写体の位置に線を引き、そこに結像するための被写体の位置を赤色点線の矢印(S1、およびS2)で描き入れます。この図の左側にある赤色点線の矢印間(S1~S2)がこのレンズの場合の被写界深度になります。

 この図からも明らかなように、同じ距離の被写体を写した場合、焦点距離の短いレンズの方が被写界深度が深くなるのがわかると思います。
 また、被写体までの距離が大きくなれば焦点深度が深くなり、逆に被写体までの距離が短くなれば焦点深度が浅くなるので、被写界深度にも同様の影響が出ます。

 一眼レフ用のレンズなどはピントリングのところに被写界深度目盛りがついているものがほとんどですが、同じF値でも広角レンズの方が広範囲まで被写界深度内に入っていることと一致します。
 参考までにPENTAX67用の焦点距離55mm(左)と200mm(右)のレンズの被写界深度目盛りの写真を掲載します。

 上の写真でもわかるように、被写体までの距離を3mに合わせた場合、焦点距離55mmのレンズでは絞りF22で約1.5mから無限遠までが被写界深度内に入っています。一方、焦点距離200mmのレンズでは絞りF22で約2.8mから約3.2mまでしか入っていません。
 レンズの焦点距離によって被写界深度は大きく異なりますが、あくまでも被写体までの距離が同じという前提があることに注意してください。

被写界深度とボケ

 ここまでの内容から、被写界深度を決める要素は次の4つになります。

  1) レンズの焦点距離:f
  2) レンズのF値:F
  3) 被写体までの距離(撮影距離):a
  4) 許容錯乱円径:ε

 これらの要素から被写界深度を求める近似式は以下のようになります。

  前側被写界深度 = ( a²・ε・F ) / ( f² + a・ε・F )

  後側被写界深度 = ( a²・ε・F ) / ( f² - a・ε・F )

 上の2つの式から、分子の値を大きく、分母の値を小さくすれば被写界深度が大きくなることがわかります。アバウトな表現をすると、許容錯乱円径を一定とした場合、被写体までの距離aを大きく、F値を大きく、レンズの焦点距離を短くすれば被写界深度が深くなるということになり、撮影の際に感覚的に理解している内容と一致すると思います。

 数式だけではわかり難いので、撮影距離と被写界深度の関係をグラフにしてみました。
 わかりやすいように焦点距離50mmと100mmのレンズを対象に、絞りをF4、F8、F16にしたときのグラフで、縦軸に被写界深度、横軸に撮影距離をとっています。縦軸の被写界深度は上側が後側被写界深度、下側が前側被写界深度です。なお、横軸、縦軸とも対数目盛を用いています。

 これら2つのレンズで被写体を同じ大きさに写そうとした場合、言うまでもなく、被写体までの距離(撮影距離)は焦点距離50mmのレンズに対して100mmのレンズでは2倍になります。この時、F値が同じであればそれぞれの焦点深度も同じになりますが、被写界深度は被写体距離がさほど大きくないときは比較的近い値をとります。

 被写界深度はピントが合っているように見える範囲であり、厳密にはピントを合わせた位置から前後に変位すればするほどボケ量が大きくなっていくというのは前で述べたとおりですが、では、ボケ量がどれくらい変化するのかを近似式で求めてみます。

 任意の位置に被写体を置き、レンズから被写体までの距離をaとします。
 そして、この被写体の位置から前後に、ある相対量だけ変位した位置の点光源が撮像面上でどれくらいのボケ径になるかを計算してみます。
 レンズから被写体後方にある点光源までの距離をc、また、レンズから被写体前方にある点光源までの距離をc’とします。
 これを図で表すとこのようになります。

 ここで、被写体の位置にピントを合わせた状態で、後方に変位した位置にある点光源のボケ径(いわゆる後ボケ)b₁、前方に変位した位置にある点光源のボケ径(いわゆる前ボケ)b₂ を求める近似式は以下の通りです。

  b₁ = ( f/F ) ・ ( f (c-a)/c(a-f))

  b₂ = ( f/F ) ・ ( f (a-c’)/c'(a-f))

 上の式をもとに、焦点距離100mmのレンズについて計算した結果をグラフにしてみるとこんな感じになります。なお、被写体までの距離は5mとして計算しています。

 このグラフでのボケ径とは撮像面における錯乱円の大きさを意味します。つまり、このボケ径が許容錯乱円(0.033mm)以下であれば被写界深度の範囲内にあることを示しています。
 グラフの目盛りの範囲が大きすぎるので、被写体距離周辺部だけを拡大したのがこちらのグラフです。

 焦点距離100mmのレンズで絞りF4、被写体距離5mで撮影した時の被写界深度を近似式で計算すると、

   前側被写界深度 : 283.0mm
   後側被写界深度 : 319.1mm

 となります。
 このグラフでボケ径が約0.03mmのところを見ると、被写界深度の位置が被写体の後方が5.3m付近、前方が4.7m付近となっており、被写界深度との関係が一致しているのがわかると思います。

 ここまで述べてきたように、ボケの大きさや被写界深度を決定づける要素として、レンズの焦点距離、F値、被写体距離、背景や前景との距離などがありますが、それぞれが密接に関係し合っていて、単純にどれか一つの要素だけで被写界深度やボケ径が決まるわけではありません。例えば、焦点距離が長い方がボケる、というのは間違いではありませんが、それより短い焦点距離のレンズでも絞りを開いた方がボケは大きくなることもあるわけですから、それぞれの要素に前提条件をつけておかないと全く違った結果になってしまうなどということが起こり得ます。
 複雑な計算式を覚えておく必要はありませんが、要素の相互関係とそれによる振る舞いを理解しておくというのは大事なことだと思います。

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 撮影したい被写体を前にした時、どの範囲を撮るか(フレーミング)、パンフォーカスにするか、あるいはどこをぼかしたいか等々、自分の作画意図に合わせて出来上がるであろう写真を頭の中で想像しながらレンズの選択や撮影位置、露出などを決めています。
 被写界深度やボケ具合はカメラのファインダーを覗けばある程度確認はできますが、それが作画意図に合わなかった場合はレンズを変えたり場所を変えたりと、とても非効率です。
 露出も重要なことですが、被写界深度やボケというものも同じくらい写真の出来に影響を与える重要な構図の要素の一つだと思います。

(2024.9.10)

#ボケ #絞り #被写界深度 #焦点深度

第180話 野草撮影にあると便利な小物のあれこれ

 私が撮影対象としていちばん多いのは自然風景ですが、次いで多い対象物(被写体)が野草です。
 野草は背丈が低く、しかも、草むらの中などにひっそりと咲いていることが多いので、どうしてもローポジションでの撮影になりますし、マクロ撮影とまではいかなくてもかなりの近接撮影になるとこが多いです。また、光の具合を調整したりすることも多く、そのための小物類もいくつか持ち歩いています。
 私が野草撮影に使っているカメラは主にPENTAX67、およびPENTAX67Ⅱですが、今回はこれらのカメラでの撮影の際に用いている小物類をご紹介します。

クランプヘッド

 野草撮影で最も苦労するのが、カメラをいかに低いポジションに構えられるかということです。
 PENTAX67は言わずと知れた中判のフィルムカメラで、レンズも含めるとかなりの重量級となるため、三脚も大型のものを使っています。大型の三脚は、脚を目一杯広げて低くなるようにしても、カメラの位置は地上から40~50cmほどが精一杯という状況です。
 そこで、三脚の脚の部分にカメラを設置できるようなクランプヘッドを使用しています。

 私が使用しているこのクランプヘッドは改造品で、もともとはスリック製の「クランプヘッド38N」という製品と、マンフロット製の「スーパークランプ」という製品を組み合わせて作ったものです。これについては下記のページで紹介しています。

  「スリッククランプヘッドと超ローアングル撮影」

 この自作クランプヘッドを三脚の脚の最下部に取り付けると、最低地上高が数cmという高さでの撮影が可能になります。背丈が数cmしかないような小さな野草でも、ほぼ同じ目線で撮影することができます。
 このスリックのクランプヘッドの難点は、チルトとサイドチルトはできるのですがパンができないということです。つまり、カメラを上下に振ったり水平を調節したりはできるのですが、左右に振ることができません。
 これを解決するにはここに自由雲台のようなものを取付けるしかないのですが、そうすると最低地上高が高くなってしまい、地面すれすれでの撮影ができなくなってしまいます。

アングルファインダー

 クランプヘッドを用いることで低いポジションでの撮影が可能になりますが、そうすると、地面に腹ばいにでもならない限り、カメラのファインダーを覗くのがとても難儀になってしまいます。
 そこでカメラのファインダーを上から覗くことができるアングルファインダーを使用しています。

 ファインダーからの光を直角に曲げてくれるものですが、カメラのファインダーを中心に360°回転するようになっているので、上からも横からも覗くことができます。また、視度調整機能が備わっているので、自分の視力に合わせてくっきりとした像を見ることができます。
 カメラを地面すれすれに構えた状態であっても、しゃがみ込めばファインダー内を見ることができるのでとても便利です。
 私が使っているPENTAX67用のアングルファインダーは、カメラ背面のファインダー窓に嵌まっている視度調整レンズを外し、そこにアングルファインダーをねじ込むという方式なので、取り付け取外しが少々面倒です。野草を撮るときは付けっ放しにすることが多いのですが、そうするとアイレベルでの撮影の時に不便を感じます。取り付け取外しがもっと簡単だといいのですが。

接写リング

 レンズの最短撮影距離を更に短くして近接撮影を行なうためのものです。
 これについても下記のページで紹介しているので、詳細はこちらをご覧ください。

  「PENTAX67用 オート接写リング(エクステンションチューブ)」

 私が接写リングを使う理由は、近接撮影をするということもありますが、いちばんはボケを大きくしたいということです。なので、近くによってマクロ的な撮影をするというよりも、比較的焦点距離の長いレンズに接写リングを取り付けて、少し離れた位置から撮影するというスタイルが多いです。もちろん、3個の接写リングすべてを取付ければ、長焦点レンズでもその撮影距離はかなり短くなりますが、3個も同時に使うことはほとんどなく、なだらかできれいなボケが得られる範囲での使い方が多いです。

 接写リングを使用すると、レンズ側のピント調整リングで合わせることのできる範囲が非常に狭くなってしまうので、接写リングをとっかえひっかえしたり、三脚ごと撮影位置を前後したりしなくて済むように、あらかじめ撮影位置や撮影倍率のアタリをつけておくことが望ましいです。

レフ板

 前にも書いたように野草は背丈の低いものが多いので、うまい具合に光が回ってくれないことも多々あります。小さいがゆえに、光の状態が良くないと出来上がった写真はどことなく精彩を欠いてしまうことも少なくありません。
 光を調整するといっても限界があるのですが、比較的よく使うのがレフ板です。

 ポートレート撮影などでは畳半分くらいもあるような大きなレフ板を使うこともありますが、野草撮影ではそんな大きなものは必要なく、私が使っているのは25cmx40cmほどの大きさで、二つに折りたためば半分の大きさになります。
 このレフ板も自作品で、ボール紙にアルミホイルを張り付けただけのものです。できるだけコンパクトになるよう、真ん中から半分に折りたためるようにしています。
 アルミホイルは光沢のある表と光沢の少ない裏側とがあるので、反射率で使い分けられるようにレフ板の半分に表側、もう半分に裏側を出して貼っています。また、光が拡散(乱反射)するように、アルミホイルをしわくちゃに揉んだものを使用しています。

 草むらなどで光が十分に回っていないときなど、柔らかな光をあてて全体的に明るくするという目的で使用します。

 また、二つ折りにできるレフ板をくの字に折ることで地面に自立させることができます。レフ板を手で持っていなくても済むということと、本来のレフ板の使い方ではありませんが、被写体の脇に立てることで風よけにもなります。野外で撮影していると風で花が揺れてしまうということもよくありますが、この小さなレフ板でも被写体ブレを防ぐことに大いに役立ってくれます。

手鏡(ミラー)とストロボスポット光アダプタ

 レフ板は全体的に柔らかな光を回すために使いますが、部分的に強めの光を当てたいということもあります。周囲は暗めにして、花のところなど部分的に明るくしたいというような場合です。
 レフ板に比べると使う頻度は低いのですが、お目当ての野草を引きたたせるために、私は手鏡とストロボを使うことがります。

 まず手鏡ですが、カードサイズの小さな手鏡の中央部分だけを出して、周囲は黒い紙でマスクしたものを使います。

 カードサイズと言えども、そんな大きな反射光は必要なく、直径3~4cmほどの大きさの反射面があればほぼ用が足ります。
 手鏡と同じ大きさの黒い紙の中央をくり抜き、これを鏡に重ねて使うだけです。くり抜く大きさのものを数種類用意しておけば便利かもしれません。
 手鏡程度であれば荷物にもならなく便利ではありますが、光の調整ができません。太陽の光をもろに反射させるので、結構強い光が当たります。周囲が影になっているときだとコントラストがとても高くなってしまうので、使い方を誤ると失敗作をつくり出しかねません。

 手鏡に比べると荷物としてはかさばりますが、光の調整ができるのがストロボです。
 マクロ撮影などで影ができないリングストロボを使う方も多いと思いますが、全体を明るくするのではなく、あくまでもスポット光を手に入れたいということなので、私はごく普通のクリップオンストロボ(しかもかなり昔の製品)を使っています。
 ただし、ストロボそのままでは照射される光がかなり広範囲に広がってしまうので、ごく狭い範囲だけに照射できるようなアダプタを自作して使っています。

 アダプタというほど大層なものではないのですが、100均のお店で黒色のストローを買ってきて、これを半分の長さに切って束ねただけのものです。これをストロボの発光窓の前に被せて使います。
 ストローの直径が約5mm、長さが約90mmで、ストロボから発せられた光はここを通ることでほぼ直進成分の光だけに絞られます。斜め成分の光はストローの中を通る際に減衰してしまうので、照射される光は絞られたスポット光になります。

 正面から見るとこんな感じになります。

 これでもストロボの発光窓と同じくらいの大きさの照射光になってしまうので、さらに小さくするためにアダプタの先端に黒い紙で作ったマスクを取付けます。これで、直径3~4cmほどのスポット光になります。
 ストロボ側で光量を調整できるので、作画意図に合わせた光を得ることができます。

半透明ポリ袋

 手鏡やストロボとは反対に、光を拡散させて弱める目的で使用します。
 使っているのはスーパーなどのレジ近くに置いてあるタイミーパック、いわゆる半透明のポリ袋です。このポリ袋をボール紙で作った四角い枠に張り付けただけのものです。

 非常に薄い素材でできていて、光の透過率はかなり高いと思われるのですが、きれいに拡散されるので影になることなく柔らかな光にすることができます。ちょうど雲を通り抜けてきた光と同じような状態になります。
 直射日光が当たっていてコントラストが高すぎるときは、雲がかかってくれないかなぁと空を仰ぎ見ることがありますが、そういときに限って青空が広がっているものです。そんな時にこのポリ袋を被写体の上の方に置くだけで、雲がかかった時のような光の状態になります。

 サイズは大きい方が使い勝手は良いと思うのですが、大きすぎるとカメラバッグに入らなくなってしまうので、スーパーのレジに置いてある程度の大きさが手ごろではないかと思います。

洗濯ばさみ

 屋外で野草撮影していて以外に重宝するのが洗濯ばさみです。
 洗濯ばさみをそのまま使うのではなく、私は洗濯ばさみどうしを紐でつないだものと、菜箸の先端に洗濯ばさみを括り付けたものの2種類をカメラバッグに入れて持ち歩いています。

 これらをどう使うかというと、まず、洗濯ばさみどうしを紐でつないだ方ですが、これは撮影に際に邪魔になる枝や草などをちょっと脇に避けてもらうときなどに使います。枝を折ったり草を切ってしまうわけにはいかないので、これを洗濯ばさみでつまんで引っ張って、もう一方の洗濯ばさみをほかの木の枝なり三脚なりに挟みます。これで、撮影が終わるまでの暫時、邪魔になるものに避けてもらうことができます。

 菜箸の先端に括り付けたほうも目的は似たようなものですが、こちらは地面に刺して使うことが多いです。紐でつないだ洗濯ばさみの一方を止める場所がないときに、この菜箸を地面に刺してここに止めるとか、あるいは菜箸の先端の洗濯ばさみで避けたいものを挟み、菜箸を地面に刺すなどといった使い方です。もちろん、手で持っていることもできますが、地面に刺しておいた方が楽です。
 また、上で紹介した半透明のポリ袋の枠をこれで保持するといった使い方もします。
 なお、洗濯ばさみは挟む力が強すぎない木製のものを使用しています。

 自然のものはあるがままの状態で写すべきとも思いますが、時にはどうしてもフレームの中に入ってほしくないものがあるのも事実で、そういったときに使っています。

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 フィールドでの野草撮影は結構手間がかかります。被写体が小さいというのもありますが、光の状態などによって全く雰囲気が変わってしまうので、気に入った光、気に入ったアングルなどを決めるのに時間がかかります。その間にも状況はどんどん変わっていってしまいます。自然の状態にできるだけ手は加えたくないと思うのですが、最低限の処理で撮影をするようにしています。
 野草撮影といってもそうそう珍しい花に出会えるわけではありませんが、植物図鑑やネット上の記事でしか見たことのない野草に出会ったりするとやはり嬉しいものです。
 一方で、昨年ここに咲いていたはずなのに、今年はなくなっていたなんていうこともあり、環境の変化で生きていけなくなったのか、盗掘によるものなのかはわかりませんが、寂しい思いをすることもあります。
 どちらかというと華やかさはなく地味なものが多い野草ですが、野生で生きていく力強さも相まって何とも魅力のある存在です。

(2024.8.23)

#PENTAX67 #クランプ #ペンタックス67 #小道具 #接写リング

第179話 夏の野外撮影 暑さ対策グッズのあれこれ

 昨年(2023年)は記録的な暑い夏でしたが、今年(2024年)はそれに輪をかけて暑い日が続いています。たぶん、昨年の記録を上回る暑い夏になるのではないかと確信をしています。体温に匹敵する、時には体温を上回るような暑い日が続くと撮影意欲も減退します。
 私が主に撮影する被写体は自然風景や野生の花などなので、撮影となると暑くても野外に出かけなければなりません。できるだけ気温の低い早朝や夕方の撮影をと思ってはいますが、時には日中に出かけることもあり、容赦ない太陽の光と熱を浴びながら歩いていると気が遠くなるような気がします。
 撮影中に熱中症などでぶっ倒れでもしたら大変なので、自分自身の暑さ対策もあれこれやっていますが、同じくらい、カメラやフィルムの暑さ対策も必要になります。できるだけ日陰を選んで歩いたり撮影したりはしていますが、特に大判カメラの場合、撮影の準備や撮影そのものに時間がかかるので、どうしても日にさらされる時間が長くなります。

 ということで、今回は私がやっている暑さ対策についてご紹介します。

日傘ホルダー&日傘

 夏の撮影でいちばん苦労するのは、いかに直射日光を浴びないようにするかということです。森の中などのように木が生い茂っているところは有難いのですが、自然相手の撮影なのでなかなか都合よくはいきません。
 そこで、人工的に日陰を作ろうということで、三脚に日傘を取付けて撮影に臨んでいます。

 私が使っているのは、エツミの「傘ホルダーレインブラケット DXⅡ」という製品で、これに日傘を取付けて使っています。もともとは雨降りの日の撮影用にということで用意したものですが、夏の日除け対策にも役立っています。
 この製品を購入したのは10年以上前になると思います。かなり以前から販売されていたもので、まるでメタルベンダーを使って手作業で作ったような手作り感満載の風貌です。
 最近はクランプ型の傘ホルダーの類いがたくさん販売されていますが、ちょっと力がかかると壊れてしまいそうな気がして食指が動きません。その点、この傘ホルダーはハンマーで力いっぱいたたいてもびくともしなさそうです。

 この製品は2つのパーツに分かれているのですが、L型に曲がっているパーツ(固定プレート)は三脚の雲台を固定するネジに差し込み、そのまま運台を締めつけて使用します。取り付けたり外したりが面倒なので、私は取り付けたままにしています。ここに、もう一つのパーツ(ブラケット)を取付けて使用します。こちらは取り付けたままにしておくと三脚の持ち運びの際にとても邪魔になるので、使用するときに取り付けるようにしています。

 何ともシンプルな構造ですが結構しっかりしていて、大きめの傘でもぐらつくことがありません。傘の取り付け角度は前後にそれぞれ30度ほど調整ができるので、撮影アングルや日差しの向きなどに合わせて動かすことができます。 
 傘の柄の直径が概ね10mm以下であればどんな傘でも問題なく取り付けることができますが、私は撮影の際は折りたたみ傘を持ち歩いているので、それを使用しています。

 人工的な小さな日陰ですが、この日陰があると無いとでは夏の撮影時にかかる負担は雲泥の差です。

カメラ用の日除けカバー

 日除けの傘があれば自分自身だけでなくカメラも日差しから守ることができるのですが、太陽の位置や角度によってはどうしてもカメラに直射日光が当たってしまうという場合もあります。真夏の強烈な日差しにさらしておくとカメラの筐体や蛇腹がものすごく熱くなります。このような状態を長時間続けておくと、カメラへのダメージも大きいだろうと思われ、その対策用にカメラカバーを持ち歩いています。

 これは、100均で購入した保冷袋を切り開いて、カメラにかぶせるようにしたものです。これだけだと腰がなくてフニャフニャしてしまうので、内側に薄手の段ボール紙を貼っています。
 これをカメラの上にかぶせ、左右両側に取り付けたゴム紐をカメラの下側に回しかけて固定するだけという単純なものです。
 使用するレンズによってレンズ自体の長さや繰り出す蛇腹の長さが異なるので、あまりピッタリとした寸法にするのではなく、若干大きめにしておいて、前後に自由に動かせるようにしています。

 以前は白っぽい色のタオルをカメラにかけて日除けをしていたのですが、タオルをかけてしまうとカメラの操作がしにくくなるのと、タオルがカメラに密着してしまうので、以外と熱が伝わってしまうということがあり、このカバーを使うようになりました。
 とても軽く、畳んでカメラバッグに入れておけば邪魔にもならないので思いのほか重宝しています。

フィルム用保冷バッグ

 暑い夏の撮影でもっとも神経を使うのがフィルムです。フィルムは冷凍保存ができるくらいですから寒さには強いのですが、高温のところに長時間さらされると乳剤が変質してしまいます。なので、暑い季節に野外撮影に行くときは、フィルムをできるだけ涼しいところに保管するようにしています。
 本来は保冷剤を入れた保冷バッグを使うのが望ましいのですが、かさばってしまうので現実的ではありません。
 そこで、小さな保冷袋にフィルムを入れて携行するようにしています。

 この保冷袋はフィルム用というわけではありませんが、ちょうど4×5判のフィルムホルダーが入る大きさのものを見つけたので購入したものです。4×5判フィルムホルダーが6枚と、ブローニーフィルムが5~6本入ります。
 保冷剤を入れているわけではないので冷やすことはできませんが、フィルムの温度が上がるのを極力抑えることはできます。この保冷袋ごとカメラバッグに入れています。
 4×5判フィルムホルダーが6枚だと両面で12枚のフィルムを携行することができるので、手ごろな大きさだと思います。

クールタオル

 野外撮影の際にタオルは汗を拭くだけでなく様々な用途に使えるので傾向は必須ですが、暑い時期に普通のコットンタオルを首にかけていると熱がこもってさらに暑く感じます。吸水性には優れているので何かと便利ではありますが、暑さ対策という点からするとイマイチといったところです。
 私は少しでも涼しさを感じられるようにということで、暑いときの野外撮影にはクールタオルを用いています。

 この類いの商品はたくさん販売されていて、どれが良いのやら判断に迷いますが、私が使っているのは特別なものではなく、薄い生地のクールタオルです。水で濡らした後、絞ったりブンブン振ったりするとひんやり感のあるタオルになります。暑いときは20分もすれば水分は抜けてしまいますが、それでも肌触りがサラサラした素材なので気持ちが良いです。乾いた状態で首にかけていても、熱がこもるような感じはありません。

冷却スプレー

 渓流沿いを歩いて撮影しているときのように、常に手が届くところに水がある場合は、タオルが乾けばすぐに濡らすことができますが、山や森に入るとなかなかそういうわけにはいきません。携行している飲み水でタオルを濡らすということもできますが、大量の水を持ち歩いているわけではないので、飲用以外の用途に使うことはほとんどありません。
 そこで、濡れタオルの代用として重宝するのが冷却スプレーです。

 あまり容量の大きなものは重いしかさばるので、ほどほどの大きさのものをカメラバッグに入れています。タオルに吹きかけるとすぐにキンキンに冷えるし、薄手のTシャツなどの上から吹きかけるととてもひんやりとします。
 ただし、ひんやり感はそう長くは続かないので、一時的に冷やすだけの効果です。それでも、暑さに火照った体にはありがたい存在です。
 直接肌に吹きかけると冷たさを通り越して痛みを感じるので要注意です。

瞬間冷却材

 冷却スプレーは局所的、かつ、短時間しか冷えないのに対して、もう少し長い時間、体を冷やしたいというときのために瞬間冷却材を携行しています。
 外袋を叩いて中の袋を破ると、中に入っている硝酸アンモニウムと水が反応して瞬時に冷たくなる仕組みのようです。

 外気温によっても違うのでしょうが、暑いときでも20分くらいは冷たい状態を保ってくれます。これを手ぬぐいなどにくるんで首筋や額に巻いておくと体全体が冷える感じがします。
 軽いので5~6個持ち歩いてもそれほど負担にはなりませんが、私は3個ほどを携行して、本当に暑いときにだけ使うようにしています。
 とても便利なアイテムですが、使い終わった後、ゴミになってしまうのが難点です。

防虫スプレー

 防虫スプレーは暑さ対策というわけではありませんが、特に初夏から秋口にかけては虫に刺されるリスクも高いので、防虫スプレーは常に携行しています。
 これもいろいろな商品が販売されているので自分に合ったものを使えばよいのですが、私は天然由来成分配合と書かれたものを使っています。これまでたくさんの種類の防虫スプレーを使ってみましたが、臭いがきつかったり、スプレーすると肌がべたついたりするものも多くあり、適度な香りとサラサラ感のあるものということで、今はこれを使っています。

 携行するので、できるだけ小さなボトルのものを購入しています。

 防虫スプレーはその名の通り虫よけで、いちばんなじみ(?)があるのが蚊だと思います。確かに蚊はどこにでもいるし、刺されると痒くて撮影の集中力が低減するし、防御したい虫の代表格ではありますが、実は私がいちばん避けたいのはアカウシアブです。蚊に比べると出会う頻度は格段に少ないのですが、どこにでも生息しているらしいので、どこで遭遇しても不思議ではありません。
 このアカウシアブ、見た目の大きさも姿かたちもスズメバチにそっくりです。ハチの場合、こちらが何かしなけば刺すことはないですし、追い払えば逃げていきますが、アカウシアブは動物の血液を吸うことが目的なのでしつこくつきまとい、追い払っても逃げません。刺すといういうよりは血液を吸うために肌を噛み切るらしいのですが、そうすると大きく腫れて痛みもあり、それが何日も続いて大変なことになるようです。
 私もアカウシアブには何度もつきまとわられたことがあります。幸いにもまだ噛まれた経験はありませんが。
 防虫スプレーがアカウシアブにどの程度の効果があるかわかりませんが、虫が嫌がる臭いであれば寄ってこないのではないかと思い使っています。

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 年々、夏の暑さが厳しくなる気がしており、夏の野外撮影は本当にしんどいと感じることが増えたように思います。毎年、自分が歳をとっていることも影響しているかもしれませんが...
 このような暑いときに撮影に行かなくてもよいではないかと思ったりもしますが、やはり、この時期でなければ撮れないものもあるわけで、暑い々々と言いながらもカメラを背負って出かけていきたくなります。
 20年くらい前まではこのような暑さ対策グッズなど持たずに出かけていたと思うのですが、年齢を重ねたことを差し引いても、近年は急速に暑さが増していると思います。
 いろいろなものを携行すればそれだけ荷物が重くなるわけで、本来は暑いときは荷物を軽くしたいのに、それに逆行している現実があります。

 そういえば、最近、水冷式のベストが脚光を浴びているようで、鳥肌が立つほど涼しいというレポートを見たことがあります。そんなに効果があるのかとだいぶ気になっているのですが、大量の水を背負った状態でさらにカメラバックを背負うことは困難だと思われ、今のところ購入に至っていません。

(2024.8.8)

#大判フィルム #小道具

第178話 ニコン Nikonの大判レンズ ニッコール NIKKOR-M 300mm 1:9

 日頃、私が使っている大判レンズはシュナイダー Schneider とフジノン FUJINON がほとんどで、現在、私の手元にあるニコン Nikon のレンズはNIKKOR-M 300mm だけです。かつてはもう1本持っていたのですが手放してしまい、いまは1本だけになってしまいました。
 少し調べてみたところ、初代の300mm F9 レンズは1965年ごろに発売されたようですが、レンズ名の後に「M」がついたNIKKOR-M 300mm の発売は1977年とのことです。私の持っているレンズがいつ頃製造されたものか詳しくわかりませんが、ニコンの製品カタログなどを見てみると1980年代半ばごろではないかと思われます。

 このレンズ、ずいぶんと人気があるようで、中古市場や大手ネットオークションサイトでは安くても9万円ほど、高いものだと16万円とか18万円というものもあり、かなりの高額が設定されているようですが、実際にこのような金額で取引されているのかどうかは不明です。メーカーの希望小売価格が74,000円(税別)ですから、プレミアがついているという状態かも知れません。

ニッコール NIKKOR-M 300mm 1:9 の主な仕様

 いわゆるテッサータイプのレンズです。焦点距離300mmとは思えない小ぶりなレンズです。
 オルソメター型のNIKKOR-W シリーズにも焦点距離300mmのレンズがありますが、こちらは全長が94.5mm、重さが1,250gもあるヘビー級のレンズです。それに比べるとM300mmがいかに小さいかがわかります。
 また、当時のカタログには、「色収差は高度に補正されており、優れたパフォーマンスを発揮する」と書かれています。
 前玉をのぞき込むとマルチコーティングらしい色をしていますが、フジノンのレンズと比べるとわずかにあっさりした色合いのようにも思えます。

 このレンズの主な仕様を記載しておきます。ニコンのサイトに掲載されてる情報から抜粋したものです。

   イメージサークル : Φ325mm(f22)
   レンズ構成枚数 : 3群4枚
   最小絞り : 128
   包括角度 : 55度(f9) 57度(f22)
   シャッター  : COPAL No.1
   シャッター速度 : T.B.1~1/400秒
   フランジバック : 約290mm
   フィルター取付ネジ : 52mm
   前枠外径寸法 : Φ54mm
   後枠外径寸法 : Φ42mm
   全長  : 43mm
   重量  : 290g

 このレンズを4×5判で使ったときの画角は、35mm判カメラに換算すると焦点距離がおよそ85mm前後のレンズに相当します。画角としては35㎜判の中望遠にあたる焦点距離です。
 4×5判の対角画角が約30度、横位置に構えたときの水平画角が約24度ですから、風景撮影などでは広く取り込むというよりは比較的狭い範囲を切り取るといった撮り方に向いています。ディスタンスを大きくとればそれなりに広い範囲を写し込むことができますが、とはいえ、やはり強調したい部分を切り取るという使い方の方がしっくりきます。

 絞りは128までありますが、そんなに絞って使ったことはありませんし、そこまで絞り込むと回折現象の影響が出過ぎてしまうのではないかと思います。絞り羽根は7枚で、最小絞りまで絞り込んでも綺麗な7角形を保っています。
 シャッターはコパルの1番で、後期モデルの黒いタイプのものが採用されています。
 同じコパルのシャッターでも、私が主に使っているシュナイダーやフジノンに採用されているものはシャッター速度指標が固定されていて、そこを差す矢印が回転するのですが、ニコンに採用されているものは矢印が固定されていて、シャッター速度指標が回転するようになっています。どちらもレンズを正面から見たときに、リングを反時計回りに回転させるとシャッター速度が速くなるのは同じなのですが、シュナイダーやフジノンに慣れているので、ニコンのレンズを使うときは戸惑ってしまいます。

 イメージサークルは325mm(F22)もあり、8×10をカバーする大きさですので、4×5判で使う分にはどんなにあおってもケラレることはありません。
 フランジバックは約300mmなので、私が使ってるリンホフマスターテヒニカ45や2000では問題ありませんが、ウイスタ45SPだと無限遠の撮影はギリギリできますが、少し近いところの撮影ではレンズの繰り出しが限界でピントを合わせることができません。ウイスタで使う場合は延長レールや延長蛇腹が必要になります。
 しかし、何といってもレンズがコンパクトなのが最大のメリットで、ワイドタイプやテレタイプのレンズを持っていくと思えば、小ぶりなレンズであればもう1~2本持てるわけですから、フィールドに出るときにはとてもありがたい存在です。しかもレンズが軽いので、蛇腹を伸ばしても風などの影響を受けにくく、ブレの心配も軽減されます。

ニッコール NIKKOR-M 300mm のボケ具合

 このレンズのボケ具合を、以前に作成したテストチャートを用いて確認してみました。レンズの光軸に対してテストチャートを45度の角度に設置し、レンズの焦点距離の約10倍、約3m離れた位置からの撮影です。
 まずは絞りはF9(開放)で撮影したものです。1枚目がピントを合わせた位置、2枚目が後方30cmの位置にあるテストチャート、そして3枚目が前方30cmの位置にあるテストチャートを切り出したのが下の3枚の写真です。

 2枚目写真、後方30cmの位置にあるテストチャートを撮影したもの、つまり、後ボケ状態のものですが、全体的に癖のない素直なボケ方ではないかと思います。ボケの中にわずかに芯が残っているようなボケ方をしています。ボケの周辺に行くにしたがってなだらかなグラデーションになっているので、後ボケが騒がしくなることはなく、柔らかな背景を作ってくれる感じのボケ方です。
 一方、テストチャートの3枚目の写真は前ボケの状態です。全体的に素直なボケ方は同じですが、後ボケに比べて芯の残り方が薄い感じがします。そのせいかどうかわかりませんが、後ボケよりも厚みがないというか、平面的な感じを受けます。
 また、後ボケも前ボケも二線ボケや年輪ボケのようなものは感じられません。

 参考までに、F22まで絞り込んで撮影したテストチャートの写真も掲載しておきます。
 1枚目が後方30cmの位置にあるテストチャート(後ボケ)、2枚目が前方30cmの位置にあるテストチャート(前ボケ)を写したものです。

 F22というと、絞り開放(F9)から約2・2/3段絞り込んだ状態ですが、焦点距離が300mmなのでボケ量は結構大きく残っています。
 ちなみに、焦点距離300mmのレンズで3m先の被写体を撮る際、このテストチャートの前後30cmの範囲を被写界深度内におさめるためには、およそF120まで絞る必要があります。
 参考までに被写界深度の計算式は以下の通りです。

  前側被写界深度 = a²・ε・F /( f² + a・ε・F)
  後側被写界深度 = a²・ε・F /( f² - a・ε・F)

 ここで、
  a : 被写体までの距離
  f : レンズの焦点距離
  F : 絞り値
  ε : 許容錯乱円

 を表します。

 許容錯乱円を0.025mmとしてF値を逆算すると、およそ120となります。
 アオリを使わずに前後合わせて約60cmの範囲にピントを合わせようとすると、このレンズの最小絞りまで絞り込む必要があることになります。
 画角としては35㎜判の焦点距離85㎜のレンズ相当ですが、やはり焦点距離は長いので被写界深度はずいぶんと浅くなります。その分、ボケを生かした写真にすることができると言えます。
 ただし、この値は被写体まで3mというかなり近い距離での撮影の場合ですので、実際にこのレンズを使うようなシチュエーションではここまで絞り込まなければならないということは多くないと思います。

 蛇足ですが、テッサータイプのレンズは絞り込むと焦点の位置が移動するという話しを耳にすることがあります。このような現象はテッサーに限らず起こりうる可能性はあるのかもしれませんが、私はこのレンズを長年使っていても、そのようなことが気になったことは一度もありません。
 焦点の移動がどのような原因によるものか詳しくはわかりませんが、例えば、レンズの周辺部で発生する球面収差が絞ることにより補正がかかって、焦点が移動したように見えるのかも知れません。だとすると、このレンズのように大きなイメージサークルを持っている場合、ほとんど影響がないのでは、と思われます。

ニッコール NIKKOR-M 300mm の作例

 私は4×5判でいうところの広角系から標準系のレンズ、焦点距離でいうと75mm~210mmあたりのレンズを使うことが多く、300mmという焦点距離のレンズを使う頻度は高くありません。ですので、このレンズの特徴がわかりやすいような写真がなかなか見当たらないのですが、とりあえず3枚を選んでみました。

 まず1枚目は、今年5月に青森県の奥入瀬で撮影したものです。

▲Linhof MasterTechnika 45 NIKKOR-M 300mm 1:9 F22 4s Velvia50

 ここは、石ヶ戸休憩所から上流に30分ほど歩いたところにある「馬門岩」のすぐ近くです。
 道路のすぐ脇に垂直に切り立った岩があり、そこにたくさんの植物が根を下ろしていて、幽玄さを感じる景色がつくり出されています。曇り空のため一帯は薄暗いのですが、そのしっとりとした感じがこの景色にはぴったりです。時折、木漏れ日が差し込んだりすると岩肌が白く輝き、違った表情を見せてくれます。この写真も、中央右寄りあたりに日が差し込んだところを写しました。
 露光時間は4秒なので風で揺れてしまっている葉っぱも多くありますが、解像度としては申し分のない写りをしていると思います。掲載している写真は解像度を落としてあるのでわかり難いと思いますが、被写体ブレを起こしていない岩に張りついた小さな葉っぱなどはとてもシャープに写っていて、たった4枚のレンズでここまで写るのは本当にすごいと、あらためて思います。

 100メートル以上にわたってこのような岩壁が続いており、もう少し焦点距離の短いレンズを使うと広範囲を取り込めるのですが、そうすると周囲の木々などが入りすぎてしまい、岩の迫力が薄れてしまいます。いろいろな撮り方ができますが、ある程度離れた位置から歪みのない作画をしようとすると、画角が30度前後のレンズは向いていると思います。

 2枚目も同じく奥入瀬で撮影しました。

▲Linhof MasterTechnika 45 NIKKOR-M 300mm 1:9 F9 1s Velvia50

 川中の石の上に根を下ろした植物をアップで写しました。
 もっと広い範囲を景色として写す時は露光時間も長めにすることが多いのですが、ここでは背後の流れを雲のようにしたくなかったので、絞り開放(F9)で露光時間は1秒です。露光時間を4秒くらいにすると流れが白くなり、全体に柔らかな感じに仕上がりますが、流れている様子を表現するにはこれくらいが良い感じです。
 また、フロントティルトのアオリをかけるとパンフォーカスにすることもできるのですが、前後をある程度ぼかしたかったのでアオリは使っていません。そのため、右端の草にはピントが合っていません。大きくボケているわけではありませんが、とても素直なボケ方をしていると思います。

 被写体までの距離は10数メートルだったと思うのですが、できるだけ余計なものは入れたくなかったのでこのレンズを使いました。左右と下側をもう一回りくらい切り詰めた方が植物の力強さが表現できたかも知れません。当日持って行ったレンズの中で、焦点距離がいちばん長いのがこのレンズだったのですが、360mmくらいのレンズで撮りたかったという気持ちがちょっとありました。

 もっと近接撮影をしたサンプルをということで探したのですが見つからなかったので、3枚目は家の中でテーブルフォト的に撮影したものを掲載します。

▲Linhof MasterTechnika 45 NIKKOR-M 300mm 1:9 F9 2s PROVIA100F

 モデルは私が愛用している二眼レフカメラの PRIMOFLEX と minolta AUTOCORD です。
 向かって右側のミノルタAUTOCORDの「A」のところにピントを合わせ、ボケ具合を見たかったので絞りは開放にしています。黒いバックシートの上にカメラを置き、向かって左側からスポットライトを当てて撮影しました。
 被写界深度はとても浅く、ピントが合っているのは銘板の「AU」のあたりと、ビューレンズ左側の張り革のごく一部だけです。あとはすべてボケていますが、ボケ方は結構きれいだと思います。
 この写真では前ボケがほとんどなく、何とか前ボケの様子がわかるのがレンズに取り付けてあるフィルターの辺りですが、癖のないボケ方だと思います。
 後ボケは、PRIMOFLEX の側面にあるノブやストラップがわかりやすいと思うのですが、厚みが感じられるフワッとした感じのボケになっています。

 使用したスポットライトは何年か前に自作したものですが、少々、光が強すぎたようです。もう少し光量を落として露出をかけた方が良かったと思うのですが、とりあえず、ボケ具合はある程度写せたのではないかと思います。
 テーブルフォトを撮ることはほとんどありませんが、ボケ具合を見るためには効果的かも知れません。

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 冒頭でも書いたように、私はニコンのレンズを使った経験が非常に少ないので、ニコンのレンズの特性などについてはほとんど知りません。ですので、ニコン云々とかテッサーだからということではなく、純粋にニッコールM 300mm というレンズが気に入っているということでこのレンズを手放さずにいます。シャープな写り、素直なボケ、小さいながらもいい仕事をしてくれるレンズだと思います。
 ニッコールMシリーズには200mmというレンズもあり、私は使ったことはありませんがちょっとそそられるレンズです。

 テッサータイプのレンズは世の中にたくさんあって、どちらかというと廉価版というイメージもあるのですが、シンプルな構成であるがゆえにほかのレンズとはちょっと違う魅力を感じます。といっても、私はテッサータイプのレンズを何本も持っているわけではありませんが、あらためて手元にあるテッサータイプのレンズを使ってみると、世の中にテッサー好きの人が多いのも頷ける気がします。

(2024.7.14)

#ニコン #ニッコール #NIKON #NIKKOR #奥入瀬渓流 #テストチャート #レンズ描写

第177話 Wollensak VERITO ウォーレンサック ベリート 8・3/4 inchで撮る遠野(岩手県)

 ウォーレンサック Wollensak はアメリカのロチェスターにあった映像機器メーカーで、ベリート VERITO は高級軟焦点レンズとして有名です。私も今から15年くらい前に、ベリート8・3/4 inch(約220mm) F4 の中古品を購入しました。ベリートにもいくつかのモデルがあるようですが、私が持っているレンズはいわゆるバレルレンズと呼ばれるもので、その名の通り、樽のような寸胴鍋のような形状をしています。詳しいことはわかりませんが、多分、今から100年くらい前のレンズだと思われます。

 記憶があいまいなのですが、当時、10,000円くらいで購入したと思います。買ってはみたものの、このレンズを持ち出すのは年に1回程度といったところです。
 久しぶりにベリートを使ってみようと思い立ち、このレンズ1本だけを持って岩手県の遠野に行ってきました。遠野というと遠野物語のイメージが強いせいか、ノスタルジックな風景を思い浮かべてしまいます。ソフトフォーカス向きではないかと思い、遠野の地を選んでみました。

 このレンズにはシャッター機構が組み込まれていないので、今回は大判(4×5判)カメラに取付け、カメラ後部に中判カメラのPENTAX 67を取付けての撮影となりました。

荒神神社

 遠野の市街地から車で5分ほどのところにある神社で、田んぼの中にポツンと立っている姿が何とも風情があります。周囲は田んぼに囲まれていて、このお社にはどうやって行くのだろうと思ってしまいます。車道から数10mの距離で見ることができ、しかも道路の反対側には狭いながら駐車スペースがあります。この駐車スペースはこの農地の持ち主の方のご厚意で設置いただいているのではないかと思います。

 到着したのが早朝だったせいか、辺りは濃い霧がかかっていました。霧の影響で全体が柔らかく見えるところを更にソフトフォーカスで写すのもどうかと思いましたが、せっかくなので何枚か撮影をしました。

 背後には民家やガードレールなどが見えるのですが、うまい具合に濃い霧が隠してくれました。
 コントラストは高くありませんが、暗部の周囲にはやはりきれいなフレアがかかっています。霧との相乗効果でボケ過ぎてしまうかとも思いましたが、なかなかいい感じになっていると思います。田植えがされて間もない稲の苗のディテールもでているので、平面的になり過ぎずにいる感じです。

 日中になって日差しがあるときに、同じ場所を写したのが下の写真です。

 1枚目の写真よりもだいぶ右側に回り込んで写しています。じつは、早朝は霧で分からなかったのですが、近くで大規模な工事をやっているらしく、背後に巨大なクレーンが何基も林立していました。これが見事に入り込んでしまうので撮影位置をずらしたというわけです。
 やはり日差しがあると色の出方も違いますし、雰囲気も随分異なります。

卯子酉神社

 遠野ICを降りて車で走っていて偶然見つけた神社で、「うねどりじんじゃ」と読むようです。隣に公営の駐車場があるものの、民家に囲まれたような場所にある小さな神社です。卯年、子年、酉年の守り神である文殊菩薩、千手観音、不動明王を祀っているとかで、縁結びの神社として有名らしいです。
 何といってもこの神社は縄に結びつけられたたくさんの真っ赤な布が目を引きます。あちこちの神社で普通にみられる絵馬のようなものだと思うのですが、色が真っ赤なのでとてもインパクトがあります。

 境内はとても狭く、しかも大きな杉の木に囲まれているので薄暗いのですが、神社の背後は畑になっていて開けています。この明るい畑に赤い布を重ねる位置から撮影してみました。布の周囲に生じるフレアがとてもきれいだと思います。
 また、広く取り入れようとすると雑多なものが写り込んでしまうので、中望遠くらいで狭い範囲を切り取る方が作画しやすいと思います。
 普通のレンズで撮るとおどろおどろした感じがしてしまいますが、ソフトフォーカスだとそういった感じが消されるので適した被写体といえるかも知れません。

山口の水車小屋

 遠野というと何といってもカッパ渕が有名ですが、この山口の水車小屋も知名度という点ではカッパ渕に引けを取らないと思います。
 もうずいぶん昔になりますが、以前訪れたときは小屋もかなり傷んでいて水車も動いていませんでしたが、今回行ってみるとずいぶんきれいな小屋に生まれ変わっており、水車も軽快に回っていました。案内板には2015年に修理を行ったと書かれていました。

 この水車小屋自体はとてもレトロな感じなのですが、周囲には民家などの新しい建物がたくさんあったり、水車小屋のすぐ上を電線が通っていたりしており、それらを入れないようにしようとすると結構苦労します。小屋の背後には田んぼがあり、これを入れてある程度広く撮りたいのですが、そうすると入れたくないものがたくさん入り込んできてしまいます。
 一方、67判に220mmという焦点距離は中望遠になってしまい、広い範囲は取り込めず、窮屈な感じになってしまいます。
 小屋の周りをぐるぐると歩き回りながら、結局、このアングルからの撮影になりました。

 窮屈さはあるものの、ベリートらしい芯の残った描写はこの風景にぴったりという感じです。明るい部分と暗い部分の境界に生じるフレアに立体感があり、個人的には気に入っている描写です。明暗差がないと平面的になりがちなので、そのあたりに気をつけた方がより雰囲気のある仕上がりになると思います。

薬師堂近くの小さな祠

 山口の水車小屋のすぐ近くに薬師堂があり、道路に面したところに鳥居が立っています。この鳥居もなかなか風情があるのですが、その鳥居をくぐり、薬師堂に向かう途中でとても小さな祠を見つけました。高さは80cmほどでしょうか。

 よく晴れており、太陽もだいぶ高い位置にある時間帯なので、周囲の草むらの輝度はかなり高い状態です。背後は林になっているのですが、ここには日差しが当たっていないのでかなり暗く落ち込んでおり、ぼんやりと木々が写っている程度です。
 日差しが強く、露出をかけすぎると祠の質感が損なわれてしまうと思ったのですが、全体を明るめにしたかったのでオーバー目の露出にしました。
 個人的には、背後の土手の上部のフレアの出方が綺麗だと思っています。

田尻の石碑群

 遠野にはたくさんの石碑群があります。昔から神様や仏さまに対する信仰心が強かったのかもしれませんが、道しるべとなる石碑もたくさんあります。今のように地図やナビなどの便利なものがなかった時代、街道の分岐点に来た時にその先を示してくれる道しるべは旅人にとっては心強い存在であったであろうと想像できます。

 下の写真は田尻の石碑群と呼ばれている場所で、たくさんの石碑が存在しています。

 設置されている案内板には、ここは山口の街道と大槌街道の分岐点であったと記されています。ほとんどの石碑は傾いたり倒れたりしていますが、それでもその昔、ここを旅人が歩いていた光景が思い浮かぶようです。
 マンネングサの仲間ではないかと思うのですが、黄色の花が石碑の周囲に咲いており、とても癒される光景です。
 もう少し広い範囲を写したかったのですが、このすぐ右側にはコンクリート製の電柱が立っていたり、背後には建物があったりしたので、それらが入らないぎりぎりの範囲で写しました。早朝、霧が出ているときだと広い範囲が写せるかもしれません。

赤い鳥居

 中沢川の川沿いの道路を走っているときに偶然見つけた鳥居です。民家の入口のところにある小さな神社ですが、やはり遠野ではこのような神社も随所で見ることができます。遠野物語には氏神様にまつわる話がたくさんありますが、この神社も代々祀られてきた氏神様かもしれません。

 この写真は川を挟んだ対岸から撮影しています。
 背後に竹林があり、その緑と鳥居の赤のコントラストがとても綺麗だと思い、撮った1枚です。手前には枯れたススキが残っていて、今年、新たに伸びてきた緑の葉っぱとのコラボもいい感じです。
 太陽がほぼ真上にある順光の状態なので日陰の部分ができにくいのですが、竹林に明暗差があったので単調にならずにすみました。
 右の方から誰か歩いてきてくれないかなぁ、と思いながら30分ほど粘ってみましたが、ちょうどお昼の時間帯ということもあり、誰も来てくれませんでした。

猿ヶ石川堤防の庚申塚

 早池峰神社のさらに奥、遠野市と花巻市の境界あたりに源を発し、遠野の街中を通って北上川に合流する猿ヶ石川という比較的大きな川があります。ヤマメやアユ、サクラマスなどが釣れるらしく、釣り人には人気の川のようですが、台風や集中豪雨などで度重なる被害が起きた川でもあるようです。
 遠野での撮影もそろそろ引き上げようかと思っていたころ、猿ヶ石川の堤防沿いの道路を走っているとき、堤防脇に石碑群を見つけました。水神塔や庚申塔など、5基の石碑が並んでいます。

 堤防の上は桜並木になっていて、花の時期には美しい景色がみられるのだろうと思います。
 今は花ら見られないので、石碑群のすぐ上にある桜の木の根元部分だけを入れて撮ってみました。太陽はだいぶ西に傾きつつあり、この画の左方向から日が差しているのですが、部分的に日が当たる状態を待って撮りました。石碑の先端あたりに陽が差し込んでくれないかと期待したのですが、なかなか思い通りにはいかないものです。

アジサイ

 ちょうどアジサイが咲き始めており、あちこちで見ることができました。圧倒的に青紫や赤紫のアジサイが多いのですが、白いアジサイを見つけたので撮ってみました。アジサイは遠野でなくても撮れるのですが、近接撮影の事例ということで。

 白い花色を際立たせようと思い、大きな樹の下にあり、直射日光が当たっていない状態のアジサイを探しました。白い花を包み込むようなフレアがとても綺麗だと思います。まるで、地球を包む大気圏のようです。

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 遠野は花巻から東北横断自動車道(釜石秋田線)を使うと40分ほどで行くことができます。この道路ができる前、遠野を訪れたときはとても遠い印象を持ったものですが、いまは驚くほど近くなった感じがします。市内の道路も整備され、それなりに変貌を遂げていますが、遠野の一帯は独特の雰囲気を持った景色が広がっているように思います。
 私は撮影に行くときに最低でも4~5本のレンズを携行するのですが、今回のように1本だけを持って出かけるということは極めてまれです。しかも単焦点レンズなので、フレーミングなどには苦労することもありますが、制約のある中で工夫しながら撮るというのも写真の面白さかも知れません。

 今回、すべてカラーリバーサルフィルム(PROVIA 100F)で撮影を行ないました。条件によっては色収差が出ているところもありましたが、気になるほどではありませんでした。今のレンズと比べると解像度は劣ると思いますが、十分に実用のレベルであると思います。
 新しいソフトフォーカスレンズはフォギーフィルターをかけて撮ったような描写になるものが目立ちますが、このレンズはしっかりと芯が残っていて、そこにフワッとしたフレアが出る美しい描写をするレンズだと思います。

(2024.6.29)

#ソフトフォーカス #バレルレンズ #遠野 #ベリート #VERITO #PROVIA #プロビア

第176話 リコーイメージングの新しいフィルムカメラ、「PENTAX 17」の発売について思うこと

               リコーイメージングHPより転載

#PENTAX #カメラ業界 #ペンタックス

第175話 EPSON エプソンのフラットベッドスキャナ GT-X970 の原稿台ガラス清掃

 私は撮影した写真(フィルム)をWebページに掲載したり自分でプリントする際に、EPSON エプソンのフラットベッドスキャナ GT-X970 を使用しています。このスキャナの発売は2007年なので、すでに発売から17年も経過しており、私が購入してからも15年近くは経っていると思われます。すでに現行機種ではありませんが今のところ順調に稼働してくれています。
 しかし、長年使っていると原稿台のガラスの内側が徐々に曇ってきます。だいぶ以前(たぶん、6~7年前)に一度、清掃をしているのですが、最近、クモリが気になりだしていました。ガラスのクモリがスキャンにどの程度の悪影響を及ぼしているのかわかりませんが、それよりも白っぽくなったガラスが気になって精神衛生上もよろしくありません。
 ということで、原稿台ガラスの内側の清掃(クモリ除去)を行ないました。

原稿台(ガラス)の取外し

 このスキャナは本体の上に原稿カバーが乗っている構造ですが、原稿台のガラスを清掃するためには、本体の上面についている原稿台を取り外す必要があります。

 まず、スキャナにつながっているすべてのケーブル(電源ケーブル、USBケーブル、原稿カバーとの接続ケーブル)を外し、原稿カバーを90度開いた状態で上に引っ張り上げると、原稿カバーのヒンジごと取り外すことができます。ヒンジは本体の穴に差し込んであるだけで、何ら固定はされていません。

 次に、原稿台を固定している4本のネジを外します。ネジは原稿台の四隅にあります。

 上の写真で赤い矢印のところにあるのが原稿台を固定しているネジの場所ですが、キャップのようなものがはめ込まれていて、ネジはこの下に隠れています。

 このキャップは押し込まれているだけなので、先の細いドライバーのようなものを差し込んでこじれば取れますが、そうすると原稿台にもキャップにも、もれなく傷がついてしまいます。傷がついても機能や性能には影響ありませんが、見てくれが良くありません。
 そこで、グルーガンを使ってこのキャップを取り外します。

 まず、キャップの上にグルーガンでグルースティックを盛ります。

 キャップの直径は1cmほどなので、ここからはみ出さないようにグルースティックを盛り、固まるまで1~2分待ちます。
 そして、グルースティックが固まったらこれをペンチなどでつかんで、上に引っ張り上げます。すると、スポッとキャップがとれます。

 キャップがとれた中には原稿台を固定しているネジの頭が見えるので、このネジを外します。
 なお、キャップに盛ったグルースティックはペンチなどでこじれば跡も残ることなく、きれいに取ることができます。

 4本のネジをすべて外せば原稿台を取り外すことができますが、原稿台の裏側の本体前側には爪のようなものがあり、これが本体に引っかかっているので、本体後ろ側から持ち上げると簡単に外すことができます。
 取り外した原稿台はこんな感じです(裏側)。

原稿台ガラス内側の清掃(クモリ除去)

 上の写真ではよくわかりませんが、ガラスの内側がまんべんなく薄っすらと曇っています。
 わかりやすいように、ガラスの背後からLEDライトをあててみました。ガラス全面が曇っている様子がよくわかります。

 LEDライトの光がガラス面で乱反射して青白くなっています。光が照射されている中央部付近が黒く見えるのはクモリを拭き取った場所です。
 また、白い点々は付着しているホコリです。
 余談ですが、このようにガラスの内側が曇るのは、クモリの原因となる物質がスキャナ内部から放出されているのではないかと思っています。もちろん何の確証もありませんが、ガラスの外側の面はそれほど曇らないのでそんな気がしています。

 このガラスを綺麗に清掃するだけの簡単な作業ですが、面積が広いので結構時間がかかります。今回はレンズクリーナーを使ってクモリの除去を行ないました。
 クモリを取り除くのはすぐにできるのですが、拭き跡が残らないようにするのが大変で、LEDライトをあてて確認しながらせっせと拭いていきます。あまりゴシゴシと拭きすぎると静電気が生じるのか、空気中を漂っている微細なホコリがガラスに付着してしまい、これを拭き取ろうとするとさらにホコリが付着するという悪循環です。ブロアでシュッとやっても取れません。

 そこで、拭き跡がなくなったところで、刷毛でホコリを取り除きます。
 使用したのはHAKUBA製の刷毛です。

 これは髪の毛よりも細いと思われるポリエチレン製の毛がびっしりと束ねられていて、静電気の力でホコリを刷毛の中に吸い取ってくれるという優れものです。
 これを使って清掃を完了した原稿台がこちらです。

 ホコリを完全に取り除くことはできませんが、LEDライトをあてても以前のようにガラス面で乱反射することなく、光が透過しているのがわかります。やはりガラスはこうでなくっちゃという感じになりました。

 あとは、きれいになったガラスを指で触ったりしないように気をつけながら、外した時と逆の要領で原稿台を本体に取り付ければ清掃は完了です。
 なお、ネジにかぶせるキャップのようなものは嵌合する位置があるので、それに合わせて押し込めばパチッと嵌まります。

清掃前と清掃後のスキャン画像の比較

 さて、多少の微細なホコリはあるものの、すっかりきれいになった原稿台でスキャン画像の違い(効果)があるものなのか、気になるので清掃前と清掃後でスキャン画像を比較してみました。
 過去に撮影したポジ原版の中から色調が濃いめで、コントラストも比較的高いと思われるものを選び、同じ条件でスキャンしてみました。
 1枚目が清掃前、2枚目が清掃後です。掲載写真は解像度を落としてありますが、いずれも6,400dpiでスキャンしました。

▲清掃前のスキャン画像
▲清掃後のスキャン画像

 はっきり言って、清掃前と清掃後の違いはほとんどわからないのですが、並べてみてみると、清掃後の画像の方がわずかにコントラストが高いように感じます。黒とか青などの濃い色の締まりがある感じです。
 しかし、別々に見るとどちらが清掃前でどちらが清掃後なのか、全くわかりません。

 そこで、画像のヒストグラムを比較してみました。
 下の画像の左側が清掃前のヒストグラム、右側が清掃後のヒストグラムです。

▲左:清掃前 右:清掃後

 波形は非常に似通っていますが、波形の左から1/4の辺り、清掃前の波形は角のような形状がありますが、清掃後の波形にはこれがありません。
 実は、清掃後にスキャンしようとした際にフィルムホルダーを落としてしまい、フィルムの一部がフィルムホルダーから外れて、長さ2mmほどの折れ跡のようなものがついてしまいました。どうやらこれが原因ではないかと思われます。

 それとは別に、ヒストグラムの左側の立ち上がりの位置が微妙に違っています。清掃前に比べて清掃後のヒストグラムの方が、左側の立ち上がりの位置がわずかに左に寄っています。
 これはごくわずかですが、全体的に色調が濃くなっていることを示していて、2枚の画像を並べて目視した際に、清掃後の方がコントラストが高めに感じるということと一致しているように思えます。これが、原稿台ガラス面のクモリがなくなったことによる結果であるならば、ごくわずかではあってもこの清掃の効果があったと言えるかも知れません。
 しかしながら、スキャン自体の条件も寸分違わずにというような厳密なものではないので、本当に因果関係があるのかどうかは怪しさがつきまとっています。

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 原稿台のガラスに多少のクモリがあっても、それによってスキャン画像の画質が劇的に悪くなるというものではなさそうですが、ガラス面に余計なものが付着していないに越したことはないわけで、画質に与える影響もさることながら、気になっていたモヤモヤ感が払しょくされたことの効果の方が大きいかも知れません。
 ガラスが曇ったり汚れたりするのは仕方がないことですし、使用環境や使用頻度などによってその度合いも異なってくると思いますが、いずれ、何年か経つとまた曇ってくることは明らかです。それまでこのスキャナが順調に稼働してくれるかどうかわかりませんが、故障さえしなければ数年間はクモリを気にすることなく気持ちよく使うことができそうです。

(2024.5.28)

#EPSON #GT_X970 #エプソン #スキャナ

第174話 最近、姿を消しつつある撮影機材などのあれこれ ~手に入らなくなる日も近いかも...~

 デジタルカメラが普及するとともにフィルム写真のシェアはどんどん小さくなっていき、フィルムカメラやフィルムが次々と市場から姿を消していったのは言うまでもありませんが、相変わらずフィルムで写真を撮っている私のような立場からすると、カメラやフィルム以外にも姿を消していっているものがたくさんあって、何とも言えない寂寥感のようなものがあります。
 デジタルカメラではほとんど使うことはないけれど、大判カメラや中判カメラではないと困ってしまうものがたくさんあり、そんな中で、特に数を減らしつつある撮影機材などについて触れてみたいと思います。

スポット単体露出計

 今のカメラには露出計が内蔵されているため単体露出計の必要性はほとんどありませんが、大判カメラには露出計が内蔵されていないので、単体露出計は必須アイテムの一つです。単体露出計はニーズが激減しているので市場から姿を消していくのは自明の理ですが、私が主な被写体としている風景撮影に必要な反射光式単体露出計、しかもスポット単体露出計の現行品は、私が知る限り1~2機種しかありません。

 現在、私が使っている露出計はPENTAXのデジタルスポットメーターという機種で、もちろん現行品ではありません。今のところは正常に機能しているので問題ありませんが、万が一、壊れでもしたら一大事です。
 入射光式の単体露出計は反射光式に比べると現行品も多くありますが、入射光式で反射光式露出計の代替をするというのはやはり無理があります。広範囲を測光するのであれば入射光式でも良いのですが、ここの露出は外したくないというようなピンポイントでの測光にはスポット露出計がどうしても必要になります。

 機械ものなのでいつかは壊れるだろうし、その時のために今から予備を用意しておこうとも思いますが、上でも書いたように現行品は極々限られた機種のみで、しかも、購入しようとするとかなりの高額を覚悟しなければなりません。かといって、中古品も潤沢に出回っているわけではなく、大手ネットオークションサイトを見てもスポット式露出計の出品はとても少ないです。また、中古品の場合は測光精度が不明なため、手を出しずらいというのが正直なところです。
 スポット測光のついているデジタルカメラを代用にと考えないこともありませんが、機材が大きくて重くなるので使い勝手としてはイマイチどころかイマニ、イマサンといった感じです。
 中古カメラ店やネットオークションサイトで根気よく探すしかないのかも知れません。

ケーブルレリーズ

 露出計のように高額でもなく、小物アクセサリーの代表格のようなケーブルレリーズですが、これも店頭からは姿を消しつつあります。それでも大手のカメラ店に行けば手に入りますが、やはり2~3種類しかありません。
 ケールレリーズなどどれでも同じだろうと思われるかも知れませんが、実はそんなことはなく、長さであったり操作部の形状であったり、自分の撮影スタイルにあったものとなると限られてしまいます。
 ちなみに、私にとって使いやすいのは、長さが60~70cmで、操作部が比較的小さなものです。

 ケーブルレリーズはまさに過去の遺物のような存在になってしまっているため、中古市場には多く出回っていますが、私の使用条件に合うものとなるとほとんどありません。
 普通に使っていれば壊れることはまずありませんが、撮影に行った際にどこかで落としてしまったなんてことは十分にありうるので、やはり予備は持っておきたい小物です。ケーブルレリーズがなければ指でシャッターを押すことも可能ではありますが、カメラブレが心配ですし、何よりも撮影時の意気込みに影響を与えます。
 また、構造はいたってシンプルなのですが、この代替となるようなものが見当たりません。
 新品で購入してもたかだか数千円の小物ですが、撮影において果たす役割はとても大きな小物でもあります。

冠布

 大判カメラでの撮影時に、外光を遮断するために頭からすっぽりとかぶる風呂敷のようなものです。
 大判カメラの後部についているフォーカシングスクリーンに光が当たると、ここの結像がほとんど見えなくなってしまいます。そのため、外部からの光、特に後部からの光を遮断して結像が良く見えるようにします。フィールドカメラにはフォーカシングスクリーンにフードがついているものもありますが、後方に太陽があるとほとんど役に立ちません。
 この冠布、扱っているお店がとても減ってしまいました。というよりは、冠布の製造をやめてしまった会社(メーカー)が多いというのが正しいと思います。

 冠布が手に入らなければ遮光性の高いカーテンなどを適当な大きさに切って代用することも可能なので、もし市場から姿を消してしまってもそれほど深刻ではありませんが、やはり、専用に作られているものの方が優れているのは言うまでもありません。
 私もかつては数枚持っていましたが、汚れたり、あちこち破れたりしたので捨ててしまい、今は1枚だけになってしまいました。この1枚がボロボロになったら、「お値段以上」のお店に行って遮光カーテンを買って自作してみようと思います。

ライトボックス

 私が使うフィルムはリバーサルがほとんどなので、撮影後のポジを確認するためにライトボックスが必要になります。フィルム用のライトボックスは光の色によってポジの色調が変わらないよう、色温度5,000Kが標準とされています。
 ライトボックスはフィルムチェック以外にもトレースなどで使用する人もいるのでなくなることはないだろうと思っていたのですが、なんと、最近になって急激に姿を消しつつあるように思います。

 私が使っているライトボックスはかなり昔のもので、光源に蛍光管を使っています。今では様々な照明機器がLEDになりつつあり、蛍光管自体が非常に珍しい存在になってしまいました。しかも、色温度が5,000Kという蛍光管はもはや手に入らないのではないかと思っています。数年前に蛍光管を交換しているので、あと数年は光量も落ちることなく使えると思いますが、その先のことはわかりません。
 LEDタイプのライトボックスにしようと思っていろいろ探してみたところ、以前は結構たくさんの機種があったのにすっかり減ってしまい、5,000Kのライトボックスはごくわずかしかありませんでした。研究用とかの非常に高額なものはあるのですが、手ごろな価格のいわゆる民生用は姿を消しつつあるという感じです。

 今使っているライトボックスの蛍光管がヘタってきたら、5,000KのLEDライトを購入して蛍光管と交換しようと思っています。
 ただし、LEDの光は蛍光管のように拡散しにくいので、乳白色板を入れるなどして、色温度が変わらないようにしながら光を拡散させなければならず、若干の工夫が必要そうです。

ポジフィルム用スリーブ、ポジフィルム袋

 ポジ原版はそのままで観賞できるように透明の袋に入れて保管しなければなりません。一般に「OP袋」と呼ばることが多く、フィルムの大きさに合うように何種類もの製品が用意されていました。
 多くの製品はフィルムがちょうど収まるような大きさですが、私が愛用しているのは、撮影データなどを書き込んだメモを差し込めるポケットがついているタイプのものです。

 かつてはいくつものメーカーから出ていたのですが、今ではほとんど見かけなくなってしまいました。店頭からすっかり姿を消してしまったのでメーカーに直接問い合わせをしたことがありますが、製造を終了してしまい、今後も製造する予定はないとの回答でした。
 また、一口にOP袋といっても様々で、非常に薄いタイプのものや腰のしっかりしたもの、透明度が高いものや何年か経つと白っぽくなってしまうものなど、いろいろです。素材の違いなのかもしれません。
 今は買い置きしたものを使っていますが、これが底をついたときに代替となるポジ袋が今のところ見つかっていません。幸いにも、メモをいれるポケットがついていないタイプのポジ袋であれば何種類も販売されているので保管に困ることはなさそうですが、メモ書きを入れて置けるという便利さは損なわれてしまいます。
 何らかの工夫をしてメモ書きを添付できるようにするか、割り切ってメモ書きはあきらめるか、手持ちのポジ袋を使い切るころに検討することとします。

四切サイズの額縁

 このサイトを始めた頃に、四切サイズの額縁が減ったというページを書きましたが、ここ最近はさらに拍車がかかった感じです。特にワイドマットタイプの四切は数えるほどしかありません。しかも、ここにきて額縁全体がかなり値上がりしています。値上がりしているのは額縁に限ったことではありませんが、額縁の値上げ幅は半端ない感じです。
 すべての額縁が減ってしまっているわけではなく、A4とかA3、ワイド四切といったサイズのものはむしろ増えている感じがします。たぶん、35㎜判フィルムの縦横比に近いことが理由だと思われます。
 そして、額縁だけでなく、一般に市販されている四切サイズのプリンタ用紙も次々と姿を消してしまいました。数年前までは各社から紙質が異なる複数の四切の製品が出ていましたが、今では数えるほどに減ってしまいました。この現象を見ても、四切のニーズがいかに少ないかということが良くわかります。

 私が使うフィルムは大判の4×5判と中判の67判がほとんどなので、縦横比が比較的近い四切はほとんどトリミングせずに額装できます。
 フィルムにしてもデジタルにしても35㎜判を使う方が圧倒的に多いでしょうから、四切が減るのは致し方ないとも思えますが、気に入ったデザインの額縁のラインナップに四切が入っていないのを目の当たりにすると、思わずため息が出てしまいます。
 個展でも開かない限り、額縁というのはそんなに大量に使うものではないので、気に入った額縁をオーダーで何枚か作ってもらい、それを使い続けることを考えています。当然、市販品に比べて割高になりますが、何年も使えるものですし、何よりも気に入った写真を気に入った額に入れる方がはるかに心が和みます。
 そして、プリンタ用紙はというと、A3サイズを購入して四切サイズにカットして使う日がくるのではないかと思っています。

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 フィルムカメラやフィルム写真に関する機材やアクセサリーなどがどんどん減ってしまうのは仕方のないことです。それでも、途絶えてしまわないように、細々ながらでも製品を供給し続けてくださるメーカーがあることはとてもありがたいことです。製造数が減れば価格が上がるのも当然のことかもしれませんが、たとえ種類が減っても販売が続いている実態を見ると、フィルム写真もまだ大丈夫かと淡い期待を抱いてしまいます。
 とはいえ、いずれは姿を消してしまうものもあるでしょうから、予備を用意しておくとか、代替の方法を考えておくとか、そういう対策も必要になると思っています。ないものは工夫して作る、というのも楽しみの一つかも知れません。

(2024.5.10)

#カメラ業界 #ライトボックス #レリーズ #額装